アルコール依存性の女 別人

父を放って家を出てから3ヶ月が過ぎた。
実家に自分の荷物を取りに行ったのだが、
父には会わないでおこうと思っていた。

家に入ると大音量でテレビが流れているだけで人気はない。
恐る恐るリビングを覗くと、父は床に転がって寝ていた。糞尿を垂らしながら。

その姿を見た私はパニックになり、思わず叫んだ。が、どうすればいいのかも分からなかった。

とりあえず母の友人に来てもらい、床にこびり付いた糞を片付けた。
父はもう父の顔をしていなかった。
目の焦点は定まらず、痩せ細っているのに足だけ浮腫んでいるという異様な体型をしていた。
起き上がると見たことのない銘柄のタバコを吸いはじめた。
会話もまともに成り立たず、
それはまるで西成あいりん地区の路上に座り込んでいるおっさんの姿だった。

父は私の知らない人になってしまったのだ。

私の怒りとか悲しみが混じった感情が頂点に達し、父に怒声を上げた。

「私はまたお父さんと一緒に甲子園に野球観に行きたいのに、それでもお酒やめてくれへんのか!お母さんだってお父さんのこと本当に嫌いで出て行ったわけじゃないで!
お父さんは私よりお酒の方が大事なんや!」

父は項垂れていた。
そして暫くして言葉を発した。

「…おまえにもいつか、今までありがとうって言ってもらいたい」


その夜私は1人でずっと泣いた。

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