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名前のない月でも

肌を撫でる風の冷たさに、季節の移り変わりを感じる10月初旬。

仕事終わり、ふと見上げた夜空に、半月と満月の間くらい、満月になりきれない半月みたいな形の月が浮かんでいた。

私はそれを見て、なんとなく

「私もたぶん、ああいう月みたいな人間なんだろうな」

と思った。

世間一般的に知られている「満月」にも、「半月」にも、「三日月」にもなりきれない「名前のない月」と、世間一般的な「大学生」にも、「社会人」にもなりきれない、「何者でもない自分」。

今はそれがどうしようもなく苦しい。

でも、そんなことを思っていても、無情にも時間は進んで、社会は回って、油断すると置いていかれそうになる。

だから、今は苦しくても、生きていくしかない。

たとえ私が名前のない月みたいな存在でも。

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