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ワレモノ注意。

一心不乱にスクランブルエッグを作っていた今朝のこと。
次男が言った。

次男「ちんちんに毛が生えてきた」

そんな馬鹿な。
7歳の君に?

私「え?見間違いじゃない?」

私が7歳のときなんかその辺で放尿していた記憶がある。毛の生えたお股を公衆の面前に晒した覚えはない。
よって、7歳で陰毛はありえない。

私「生えてないと思うよ」

次男「本当だってば!!」

3往復くらい同じやりとりをしたが、主張を変えない次男。
そんな次男の鬼気迫る様子を見ていると、私の信念が揺らぐ。
この世の中に絶対はない。
私の身体は一応女だし、男性としての成長は経験していないもの。
確認してみよう。

私「ちょっと見せて」

ほらよ、と眼の前に放り出されたちんちん。

私「え?ないじゃん!ツルツルだよ?」

次男「生えてるって!!」

怒った口調で言い切った。嘘を言っている顔ではない。
もしかして傷だろうか?それとも虫?それは嫌だな。

私「ちょっと、長男!虫眼鏡持ってきて!」

次男のちんちんの先端を指先でつまみ、360度回転させながら、周辺をくまなく観察。もちろん玉袋も念入りに。

チンと袋を何度回転しても、おかしなものは見当たらない。

私「ないよ」

次男「生えてるって!!」

わざわざ虫眼鏡まで使って確認したのに、毛が生えていると訴え続ける次男。
どうしたものか。
こう言う時は夫に丸投げしよう。

私「パパに相談しよう」

すると次男がニヤリと笑った。
もの凄くいやらしい笑い方だった。

そう、私は騙されたのだ。

家族でおちょくられるのは、私か次男の役割だった。
同レベルだと思っていた次男が向こう側の人間になってしまった。

成長したな。次男。

そんなことを思っていたら、長男が天井に向けた虫眼鏡を覗き込みながら言った。
「肛門のシワって何本あるんだろう」

長男は数が大好きだ。
それにしたって肛門のシワの数にまで興味を持つなんて…

成長したな。長男。

でも、だからって、肛門のシワを数えるってどうなんだろうか。
できれば背中を押したくないが、子どもの興味関心を抑え込むのは親としては避けたい。親として私ができることは1つ。
そう、私の肛門が長男の未来を切り開くなら。

私「仕方ない、ママの肛門を…」

ズボンのウエスト部分に手をかけ、スクワット体制になった時だ。

娘「どんな茶番だよ!!!あーーもーーー卵焦げちゃうよ!!」
長女のお出ましだ。

それにしても「茶番」なんてどこで知ったんだろうか。

私「よく知ってるね、茶番なんて!!」思わず褒めた。

娘「本で読んだの。いつかママに言ってやろうと思ってたんだよ」

言葉をインプットするだけでなく、をアウトプットまでする長女…
成長したな!!

そんなこんなで、朝から子ども達の成長を感じるも、家を出るのがギリギリになってしまった。
何とか始業ベルがなる前に学校に到着し、3人が肛門、いや校門の中に入ったことを確認して私は帰宅した。

時は流れ、夕方。

夫が帰宅し、子どもたちとの朝のやりとりを話すと、いつも通り大笑いしてくれた。そんな夫の顔に浮かぶ笑いジワを見ていたら脳裏にジワジワ迫ってくるものがあった。
そう、「肛門のシワ」だ。
こうなると、夕飯を作っている時も食事中もそれが頭から離れない。

食後のお茶を飲んでいた時、我慢できずに言った。

私「肛門のシ…」

私の顔に「肛門のシワ」の話をするとでも書いてあったんだろうか、ものすごいスピードで、娘が言葉を被せてきた。

娘「ママは、脳にシワを増やした方がいいね!!」

娘は私が何かおかしなことを言おうとすると、こんな風に言葉を被せてくることがよくある。
そう言えば、動物園に行った時も似たようなことがあった。ライオン檻の前で飼育員の説明を聞いていた時だ。

飼育係「あそこのたてがみのあるライオンは、オスではなくメスなんです。歳をとって女性ホルモンが減って、たてがみが生えてきたんですよ」

衝撃的な事実。
驚いた私の思考はいつも通り活発になった。
私「ねえ、ママもさ、もう少ししたらライオンみたいにちん・・」

娘「ぜええええったい、ないね」

絶妙なタイミングでのツッコミ。
「ちんちん生えてきたりして!」そういう必要もなく、私の言葉を予測し、かき消した。娘はいつだって私の思考を先読みできる。
これが親子の絆、だろうか。
お互い「こころ」と「こころ」を通わせて理解し合うことで結ばれるという、あの絆。
子どもたちの成長と共に、親子の絆も深まってきているんだろうか。

喜びに震え、現実世界に意識がなかった私を娘の一言が呼び戻した。

娘「そう言えばママに言おうと思ってた言葉、もう一つあるんだ」

私「茶番の他に?何て言葉?」

知らない日本語と出会い、私を感じた。
忘れまいとしてメモし、今ここで私に披露してくれる。
本当に成長したね、ありがとう。ママ嬉しい。

娘が口を開いた。
虫唾むしず が走る」

さよなら、私達の絆。

それを聞いた夫が吹き出す。

さよなら、夫婦の絆。

これで、誰にも遠慮せず長男と肛門のシワを数えられるよ。











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