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ルリマツリ

昼食を終えて午後の授業の教室に移動すると、すでにクラスのコたちが半数ほど集まっていた。
もっぱらの話題は、見学したサークルの情報交換と、どのサークルにするか。ルリも聞かれたので、非公式のサッカーサークルを見学したことを口にする。
すかさず、最初のオリエンテーリングの自己紹介の時に「サッカーが好きです♪」と言っていた優理子ちゃんが「えっ、どうだった?」と、目を輝かせて興味津々な様子で尋ねてきた。そこへ、出身校のサッカー部が全国大会にも出場している桐ちゃんも「わたしも聞きた~い!」と加わる。こんな感じのふたりに、ゆるゆるサッカーサークルはどうなんだろう……と思いつつ、見学で聞いた内容や対応してくれた先輩たちの雰囲気など、ルリが知った限りのことを話した。

「それで、ルリちゃんは入るの?」
「うーん……こちらの事情で週一しか出席できないんだけど、それでもいいって言ってくれているし、先輩たちも接しやすそうだから、入ってもいいかなぁ……とは考えてるけど」
「そうなんだ。ルリちゃんが入るのなら、わたしも一緒に入ろうかな?」
「え、そんな、見学もしないで決めちゃダメだよ!どうだったかは言ったけど、わたしの感じ方と優理子ちゃんの感じ方は違うかもしれないじゃない……」
「じゃあ、ルリちゃんが行く時に一緒に行って、見学してからどうするか決めるから、次行く時に誘って」
「わたしも一緒に行っていい?興味はあるけど、ひとりではちょっと行きにくいから」
桐ちゃんも便乗する。
「わたし、土曜日しか出られないけど、それでいいなら……」
「いい、いい!」
ふたりは嬉しそうに合唱した。

そうか、興味があってもひとりでは行きにくいという人もいるんだなぁ……

ルリにもそういう時が全くないわけではなかったが、どちらかと言えば、自分の関心がある所には、人と示し合わせることなく足を運ぶこともよくあるので、ふたりの反応は思いがけなかった。
かといって、この場合、ひそかに行きたい場所というわけでもなかったので、ふたりがルリと一緒に来たいというのは、ぜんぜんかまわなかった。
それに、授業や休み時間以外に共に過ごすことで、彼女たちについてもより知れて、より友だちとして仲良くできるような可能性も秘めているし。
ゆるゆるサッカーサークルでの活動はまだ未知の世界だったが、同級生のコたちがそれに興味を示したということで、ルリの関心は彼女たちの方へも向いていく。

あ、そう言えば、入るかどうかはまだ伝えていなかったから、練習参加時の服装などの詳細については確認してなかったな……やっぱり、汚れても問題ない服装がいいのかな?そうだよね、球拾いもするし、マネージャーでも、通学の時の服装そのままじゃないよね。スカートの日だったら、あり得ないし。

大学の体育の授業用には、それまでのように学校指定の体操服があるわけではない。学校側からは、「動きやすい服装」と言われているだけで、選択は各学生に委ねられている。高校の時のジャージなどでもよいし、そうしているコたちもいる。ただ、ルリは気分を一新するために、普通の体操服のようなものではないものにしたかった。そこで、選んだのが、白と水色のポロシャツ2枚に、ボトムスはベージュのキュロット。ショートパンツよりは長めで膝上だが、裾がやや広がっているのがいいと。店頭で見ていて、ゴルフウェアのコーディネートからヒントを得たのだ。授業の内容によっては、キュロットをロングパンツに変えればいいか、ということで。

ただ、それをそのままサッカー練習時の(マネージャーはプレイはしないけれど)服装にするのはどうなのかと思ったので、結局、サークルの時は、ルリはジャージを着ることにした。


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