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ルリマツリ

「そう言えば、『"カワイイ"って、"カッコいい"と似たような意味でしょ?だから、言われてもぜんぜん嫌じゃない』って、澤坂くんが言ってた~」

高2になってから同じクラスになって親しくなったアカツキが、ふいに思い出して言う。
お昼休みに購買で買ってきたパンとミルクティーでランチをしている時のこと。
ルリが「"カワイイ"って言われて、嫌がらない男子ってなんかいいよね」と数日前に話していたのを受けてのことだ。でも、誰かに聞いてみてとは頼んでいない。

澤坂くんは、1年の時にアカツキの同級生だったコで、男女あまり隔てなくフレンドリーに話しかけるアカツキとは、別のクラスになっても選択美術の授業の時などに話すコのひとりだと言う。だから、そういう機会に尋ねたのかもしれない。
彼はルリとは直接の接点は全くないが、休み時間や教室移動の際に廊下で見かける以外には、自転車通学をしていて、朝の登校時に時々、駐輪場で居合わせるぐらい。
「"カワイイ"って言われてもぜんぜん嫌じゃない」と言っても嫌みにも嘘にも聞こえず、そうかと言って自信満々という雰囲気にも映らないタイプ。実際にその場にいて耳にしたわけではなくても、ごく自然に応えただろう様子が目に浮かぶ。さすがだ。

思春期の色々と気にするお年頃の男子に、“カワイイ "なんて形容詞を浴びせたら気を悪くしそうだからこそ、それを嫌がらないヒトは稀有でいいのだ。

ルリからすると、澤坂くんの見た目は、"カワイイ"と"カッコいい"の狭間のように思われる。可愛い過ぎず、カッコ良過ぎず。中庸。調和がとれているということはよいことだ。











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