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自分で気に入っている選

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自分でもくだらなくて笑っちゃう・なんか好きな記事選デス
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記事一覧

お腹の音デザイナー

皆さんは、「自分のお腹の音デザイナー」に会ったことがあるだろうか。 私は何度か、会ったことがある。 お腹の音デザイナーの職業は大変特殊なもので、人間一人が生まれた時から死んで星になるまで、人の一生分のお腹の音を作曲・演奏してデザインするというものである。その仕事の報酬として、彼らは担当した人間が一生で聞く音の全てを集めて記録している。 昨日聞いた素敵なJAZZだとか、電車の発車音だとか、赤ん坊の泣き声とか、そんなものを全て自分の「音の引き出し」にしまっておくのである。 --

豆苗のはなし

つい先日まで、豆苗を育てていた。 育てたと言っても、パックに入って売られているものを、ちょっぴり水につけて伸ばしてみただけだ。 料理に入れる時に、芽の先の方を切って、そのあと必ず、根に水をやる。これを何とはなしに続けてみた。 しかしこれが、数日してくるとなんとも愛しい。 新しく伸びた芽は、スーパーに売られていた時の整然とした感じとは段々違ってきて、大体はへにょんと曲がっていく。 一本はあちらへ、一本はそちらへ、思い思いの方向に、へにょん。 毎日、へにょん が増えていくの

ちぎれ雲と雲ちぎり仙人

秋風が吹く頃になると、雲ちぎり仙人は向こうの山からやってくる。 ものすごく歳をとっていて、頬の少しこけた、しかし背筋はシャッキリ伸びていて、いかにも職人ぜんとした風貌である。 雲ちぎり仙人はその名の通り仙人なのだが、あまりにも長生きなので、収めるべき修行はほとんど全てなくなってしまった。 なので仙人と言っても、毎日山をひょいひょい飛び回りながら、花を咲かせ、動物とおしゃべりをし、川のせせらぎに耳を傾けるような生活である。 ただ秋口は何か風流な遊びでもしたくなるようで、それ

夏屋の店じまい

夕方の風が、少し軽くなった。夏特有のずっしりと湿った風のあいだに、軽く爽やかな風がまじっている。今年の夏も、そろそろ終わりかな、と思いはじめる。 思いたって、夏屋に連絡をとってみた。夏屋というのは夏のあいだにだけ営業している店なのだが、その店もそろそろ片付けはじめるだろうか。その前にいちど顔でもだそうか。などと考えていたのだ。 --- 夏屋からの返信(透明な便箋に入っていた。どうやら夏らしさの演出らしい。)によると、やはり今年はそろそろ店じまいらしく、さらに気の早いこと

夏屋

毎年、梅雨が明ける頃から、ススキが出てくるまで、夏の間にだけ営業をしている店がある。 その店の名前は「夏屋」。 夏屋は夏を過ごす全ての人に、それぞれの夏を販売している。 夏屋は若い店長が一人で切り盛りしている。 噂によると、なのだが、店長は世界中からたくさんの夏を集めてお店の棚に保管しているのだそうだ。   あるときは遠い国で夏を買い付けし、あるときは湖に浮かぶ夏を優しくすくいとり、あるときには時間をかけて自分でこねて見たりもする。 --- 夏屋の店長について、詳しいこと

モスキートハンターもえこ、夏の夜をゆく。

気づけば夏も本番。夏が一番好きな私だが、毎度夏にはあることに悩ませられている。それは、蚊が部屋に入ってしまった夜のこと。 窓を開けて網戸のまま寝るのが夏の至福、なのだけれど、時々風に紛れて蚊も入ってきてしまう。 なんとな〜く違和感を感じた時にはもう、「プチプチッ」と刺されてしまっていて、痒くて眠れず凹むのだ。 --- ...しかし、そこで凹んだままではいないのが私である!すぐさま、モスキートハンターもえこに変身する! モスキートハンターは、どんな些細なモスキート音も