もぬです

時々文章を載せます。デザイナ〜だけどサ〜

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  • 自分で気に入っている選

    自分でもくだらなくて笑っちゃう・なんか好きな記事選デス

最近の記事

Tシャツの話

道ゆく人のTシャツを見るのが好きだ。その人が今日、その一枚を選んで着ているということに、その人の個性や価値観・人生が自然と反映されているような気がするからである。 今回は、数年かけて温めてきた秘密のメモ(!)を元に、これまで私の心に刺さったTシャツとそのシチュエーションをご紹介しよう。今の季節はTシャツチャンスがまだまだ少ないが、来たるべき春に備えてTシャツ眼をともに鍛えよう。 —- 着ている人のことが知りたくなってしまうTシャツというのがある。 数年前の春。井の頭線で

    • ちぎれ雲と雲ちぎり仙人

      秋風が吹く頃になると、雲ちぎり仙人は向こうの山からやってくる。 ものすごく歳をとっていて、頬の少しこけた、しかし背筋はシャッキリ伸びていて、いかにも職人ぜんとした風貌である。 雲ちぎり仙人はその名の通り仙人なのだが、あまりにも長生きなので、収めるべき修行はほとんど全てなくなってしまった。 なので仙人と言っても、毎日山をひょいひょい飛び回りながら、花を咲かせ、動物とおしゃべりをし、川のせせらぎに耳を傾けるような生活である。 ただ秋口は何か風流な遊びでもしたくなるようで、それ

      • 夏屋の店じまい

        夕方の風が、少し軽くなった。夏特有のずっしりと湿った風のあいだに、軽く爽やかな風がまじっている。今年の夏も、そろそろ終わりかな、と思いはじめる。 思いたって、夏屋に連絡をとってみた。夏屋というのは夏のあいだにだけ営業している店なのだが、その店もそろそろ片付けはじめるだろうか。その前にいちど顔でもだそうか。などと考えていたのだ。 --- 夏屋からの返信(透明な便箋に入っていた。どうやら夏らしさの演出らしい。)によると、やはり今年はそろそろ店じまいらしく、さらに気の早いこと

        • おばけと魔法の粉

          コンプレックスおばけというのがいる。 おばけは月に一度くらい、たいてい眠る前にやってくる。あるときは美人の友達の顔で、あるときは岩のように大きく重い、壁のような形で。 もしも夜におばけがきてしまったら、頭の上まで布団を引っ張ってガードを作る。布団の中はあったかいから、おばけは布団が嫌いなのだ。 するとおばけは、考えると悲しくなるような事柄をたくさん、たくさんちぎって投げ込んでくるのだ。 気をつけなくちゃと思いつつ、攻撃をいくつかくらってしまいじんわり涙が浮かぶ。 「おばけ

        Tシャツの話

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        • 自分で気に入っている選
          6本

        記事

          観葉植物よ、君の名は?

          観葉植物の名前がわからないまま、四年が過ぎた 大学一年生の時、100円ショップで買ったもので、今でも長く寄り添う相棒のような子である。 でも、名前がわからない。なんということか! --- 正確には、初めは名前がわかっていた。買った時には鉢に名札がついており、そこには植物の名前と、「明るいところを好みます」と書いてあったのだ。後者だけはしっかりと覚えている。 そうそう、この子を買ったころ、私は確か大学一年生だった。植物のある部屋に憧れていたのだが いかんせん貧乏学生なので、

          観葉植物よ、君の名は?

          02 ダイオウイカは知らないでしょう 西加奈子 せきしろ

          電車の中で、思わずワハハと笑いそうになった。いや、実際かなり笑ってしまったのだった。 作家の二人が詠む短歌は、どれも物語がぎゅぎゅっと詰まっていて面白い。歌を互いに披露したあとのトーク部分で、「この歌にそんな背景が?!」と驚くこともこともしばしば。しかも後半になるにつれて短歌技術もどんどん上達して行くようである。 そう、これは西加奈子とせきしろ(短歌初心者)が短歌に挑戦した連載がまとまって書籍化したものである。 時にシュールだったり、切ない、はたまたゲスな(?)作風のせき

          02 ダイオウイカは知らないでしょう 西加奈子 せきしろ

          01「彼女たちの場合は」江國香織

          江國香織の「彼女たちの場合は」。 先日下北沢であった刊行イベント行きたさに、江國香織の新刊を買ってみた。ハードカバー、金の箔押し、ページ数は500近く。 本を入れると、会社帰りのトートバッグがずっしり重くなったのを覚えている。 刊行イベントで初めて、江國香織本人を見た。著者近影で見ていたのと同じウェーブの髪や、時々考えながら話す姿が妙にしっくりきた。 サインをもらえる時間があったので、一番好きな(東京タワー・文庫)本にサインをもらったのだが、ドキドキして何も話せなかった。

          01「彼女たちの場合は」江國香織

          真夏の昼夜逆転を考える

          真夏の夜は寝苦しい。 夏を愛し、一年が3月から8月の繰り返しならいいのに、と思う私だけれど、夏の寝苦しさだけはまだ慣れないものだ。 真夏の夜は、なんだか蒸し蒸し、風も吹かないむっつりとした夜がなかなか多く、そんな夜にはどうにも眠りにつけない。 更に夏の休日はお昼寝がいつにも増して最高で、ついつい寝すぎてしまって余計に眠れないなんてこともある。 ーーー ちょっとお昼寝の話をすると、夏生まれの私・休日の昼にレースカーテンを引いた窓際でうとうとまどろむのが、とっても好きである

          真夏の昼夜逆転を考える

          豆苗のはなし

          つい先日まで、豆苗を育てていた。 育てたと言っても、パックに入って売られているものを、ちょっぴり水につけて伸ばしてみただけだ。 料理に入れる時に、芽の先の方を切って、そのあと必ず、根に水をやる。これを何とはなしに続けてみた。 しかしこれが、数日してくるとなんとも愛しい。 新しく伸びた芽は、スーパーに売られていた時の整然とした感じとは段々違ってきて、大体はへにょんと曲がっていく。 一本はあちらへ、一本はそちらへ、思い思いの方向に、へにょん。 毎日、へにょん が増えていくの

          豆苗のはなし

          お腹の音デザイナー

          皆さんは、「自分のお腹の音デザイナー」に会ったことがあるだろうか。 私は何度か、会ったことがある。 お腹の音デザイナーの職業は大変特殊なもので、人間一人が生まれた時から死んで星になるまで、人の一生分のお腹の音を作曲・演奏してデザインするというものである。その仕事の報酬として、彼らは担当した人間が一生で聞く音の全てを集めて記録している。 昨日聞いた素敵なJAZZだとか、電車の発車音だとか、赤ん坊の泣き声とか、そんなものを全て自分の「音の引き出し」にしまっておくのである。 --

          お腹の音デザイナー

          おにぎりの話

          また、食べ物の話である。 またか!とは言わずに、短くまとめて見たので許してほしい。 --- 東京駅八重洲南口のあたりに、おにぎり屋さんがあるのをご存知だろうか。 私はそのお店のおにぎりが好きだ。 もう少し言うと、そのおにぎりを持ってつくば行きの高速バス(乗車時間1時間と少し)で家に帰るのが好きなのである。 高速バス乗り場は南口の目の前にあるので、そのお店はJRの改札から出てすぐにバス乗り場に向かう時でもふらっと立ち寄りやすいのだ。便利! --- 就活をしていた時期、うま

          おにぎりの話

          卵焼きの決意

          大学生になってから、卵焼きが好きになった。 もともと甘い卵焼きは好きだったのだが、食べるのとは違う楽しみを見つけてしまったのである。 そう、巻くのが好きなのだ。巻くのが。 私の理想は薄く、かつ焦げ目なく、一ミリの隙間もなく巻き上げた卵焼きである。 --- 卵焼きの「巻き」部分に注目するようになったのは、浪人時代、4年前のことだった。 夏期講習に通っていた予備校でお昼に友人が食べていた卵焼きが、完璧に巻かれた卵焼きだったのだ。 薄く綺麗に巻き上がれた卵、しかも真ん中にウイン

          卵焼きの決意

          夏屋

          毎年、梅雨が明ける頃から、ススキが出てくるまで、夏の間にだけ営業をしている店がある。 その店の名前は「夏屋」。 夏屋は夏を過ごす全ての人に、それぞれの夏を販売している。 夏屋は若い店長が一人で切り盛りしている。 噂によると、なのだが、店長は世界中からたくさんの夏を集めてお店の棚に保管しているのだそうだ。   あるときは遠い国で夏を買い付けし、あるときは湖に浮かぶ夏を優しくすくいとり、あるときには時間をかけて自分でこねて見たりもする。 --- 夏屋の店長について、詳しいこと

          母の(ダメ出しに近い)アドバイス

          先日、母が東京に来ていたので訪ねて行った。 母は自宅で英語教室を営んでいて、研修などで時々東京まで来ているのだが、その日もそうだった。 運よく私の都合も合ったので、銀座で待ち合わせることにした。 三連休の関東は猛暑で、その日の銀座はとっても暑かった。三連休だからか、猛暑にも関わらず、買い物客も観光客もいつもよりずっと多かったように思う。 銀座駅から母から待ち合わせ場所に指定された鳩居堂までは短い距離だったのだが、それでも汗が吹き出て止まらないくらいだった。 --- 母と

          母の(ダメ出しに近い)アドバイス

          モスキートハンターもえこ、夏の夜をゆく。

          気づけば夏も本番。夏が一番好きな私だが、毎度夏にはあることに悩ませられている。それは、蚊が部屋に入ってしまった夜のこと。 窓を開けて網戸のまま寝るのが夏の至福、なのだけれど、時々風に紛れて蚊も入ってきてしまう。 なんとな〜く違和感を感じた時にはもう、「プチプチッ」と刺されてしまっていて、痒くて眠れず凹むのだ。 --- ...しかし、そこで凹んだままではいないのが私である!すぐさま、モスキートハンターもえこに変身する! モスキートハンターは、どんな些細なモスキート音も

          モスキートハンターもえこ、夏の夜をゆく。

          つれづれに憧れ

          6/18深夜 小学校か、中学校か。おそらくそのくらいの、ちょっと背伸びをしたい時期、「つれづれなるまゝに」という文章にいたく憧れたものだった。 当時、大人の書く偉そうな文章や、変に子供騙しな教科書とはどこか違う、どこかふんわりとした空気感を「つれづれなるまゝに」は発していた。 そのふんわりの正体は、おおよそ序段の印象なのでは?と今振り返ると思う。 序段といえば、 つれづれなるまゝに、日暮らし、硯に向ひて、心に移り行くよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、怪しうこそ物

          つれづれに憧れ