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上海常設店スタートとコロナ、そして、香港でのまさかの出会い

前回、書かせていただきましたように、2019年12月16日より上海久光百貨での常設店舗がスタートした。スタートしたと言っても、吹き抜けのエスカレーターを挟んで、ポップアップエリアの斜め向かいの広いスペースに移動しただけで、スタッフも全員そのままなので、ほぼポップアップの延長のような感じであった。想定通りにポップアップで商談がまとまりきらずにズレ込んだお客様もおり、オープンと同時に数件の見込みがあり、ある意味とても良いスタートであった。

上海久光百貨内常設店舗

常設店舗と言う事もあり、おしりがなくなったので商談スピードは遅くなったが、一方で、こちらとしても会期を気にして、必要以上の値引きをする必要もなくなったので商談の質は確実にUPしていた。その結果、単価アップにもつながるのでは、と密かに期待をしていたが、実際に、ポップアップからズレ込んでいたお客様が1月前半に成約したが、お客様的にも締め切りをネタに値引きができなくなり観念したのか、想定よりも高めの金額で成約した。色々なことが、良い方向に進んでいるかと思った矢先に、まさかのコロナが中国で発生している事実を知った。
当初は、結構ハードな新型肺炎で日本にも入ってきているらしい、そして、今後世界中で広がるかもしれないと言う事以外はよくわかっていなかったこともあり、何がどうなるのか全く想像すらつかないような状況であった。ただ、そうは言っても、百貨店自体も営業しているし、しばらくの間、気を付けていれば、自然に収まり、元の状態に戻るであろうと思っていた。ところが、1月末からの春節のタイミングで何と、中国政府からの要請により百貨店が1週間の休業をすることが決まった。更には、就労ビザ等のない外国人の中国への入国が禁じられた。この時点で、僕は中国本土への入国ができなくなってしまった。

かなり厳しかったようです

そして、ご存知のように、その後は世界中でネガティブなニュースが次から次へと報道され、2月は何と上海だけではなく香港の売上までゼロとなった。いよいよ、これはえらいことになったと思い早々の撤退を考え始めた矢先の3月中旬、どういうわけか、上海で高額商品が売れた。現場の話を聞く限りは、お客様はほとんど来ていないらしいが、逆にこんな状況下でもくるお客様の確度は高いとの事であった。と言う事で、やはりしばらくは様子を見ることとした(笑) 
それからの数ヶ月は、売れたり売れなかったりとなんとも判断に迷うような状況が続いていたが、9月に大型受注があり、上海の継続を決定した。ちなみに、その間、香港も実は結構売れていたのであった。なぜなら、両国とも日々感染者が増える日本とは違い、当時はゼロコロナ政策に成功していたからである。
上記の状況を踏まえ、やはり有事に強いのは日本ではなく海外であろう、そして今後伸びるのも少子高齢人口減少の続く日本ではなく、成長著しい中国や香港等をはじめとしたアジア諸国であろうと勢いで判断してしまい、日本国内の店舗をクローズし海外事業への集中を決めたのであった。ところが、こちらの勢いとは無関係に、当然のことながら、中国への入国制限に関しては継続しているため、いくらやる気があってもビザが取得できず、上海の売場を直接管理できない状況が続いた。つまりは、商品だけ送っても適切な説明や売場作りができていないのであった。そのためか、徐々にパッとしない状況となっていった。

2020年5月くらい、この時点ではまだキレイに展示されてます

一方で、香港に関しては、隔離はあるものの入国ができたので、日本のスタッフが数ヶ月おきに訪問できていたためか、それなりに売れていた。ただ、残念ながら、それなり以上には売れない事情があった。それは、香港と中国との往来が制限されており双方への入国に関して数週間単位の隔離が必要なのであった。そのため、以前は相当数来ていた中国本土のお客様がほとんど来なくなってしまったのであった。
そして、気が付けば、コロナ発生から1年以上が経過していた。国内店舗をクローズした影響もあり、売上はコロナ前の半分近くまで下がっており、会社の存続自体がかなり危機的な状況となっていた。もはや、なにがしかのウルトラC的な打ち手を講じなくては後がないところまで追いつめられていたが、残念ながら、妙案は浮かばなかった。
そんな折に、コロナで香港の家賃相場がかなり下がっていると言った情報が耳に入った。コロナ前にも、路面店を出したいと思い高級家具屋街として有名なHappy Valleyの賃料を調べたことがあったが、全くお話にならずに諦めたことがあったので、あまり期待せずにHappy Valleyの路面店舗の空き状況と賃料を現地スタッフに確認してもらった。

Happy Valleyの航空写真

ところが、何と、驚くことに、香港政府のコロナ施策もあり、決して安くはないが十分に勝負できる程度の家賃まで下がっていたのである。見つけてくれた物件が、やや古く、家具屋にしてはそこまで広いとは言えないサイズだったという事もあるが、半分アンティークのような箪笥を扱い、カスタムメイドを得意とする門間屋にとっては、逆にちょうど良いくらいであった。まさかの出会いに胸が高鳴り、すぐにでも現地に飛んで行きたかったが、その時点では、ビザのない日本人である僕は、隔離を経ても香港へは入国ができなかったのである。 
しかしながら、新規で店をオープンするためには、不動産の保証金や内装費用等、相当な初期投資が必要となる上に、コロナの状況もどうなるかわからない、そして、そもそも、その初期投資に耐えられるだけの財務的な余裕がその時の門間屋にはなかったのである。残念だけど、流石に無理なので諦めようと思っていたところ、まさかのドンピシャの補助金を見つけた。そう、何かと物議を醸している「事業再構築支援補助金」である。決して、取れる保証はないのだが自分の中では、完全に取れる気になっており、取れる前提で、いつもお世話になっている地銀に追加のコロナ融資を申し込んでしまった。そして、無事に融資ゲット。とは言え、流石に現地確認をせずに、進めるにはあまりにもリスクが高すぎるので、入国規制の緩和を期待し、少し様子を見ることにした。

近所にアストンマーティンがあるだけでもテンション上がる

その後の顛末に関しては、次回以降で書かせて頂きます。

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