見出し画像

「ジョジョの奇妙な冒険 第5部 黄金の風」覚悟とは! 未読の連中に! 勧めるべき漫画を押しつけることだ!

ジョジョの奇妙な冒険 第5部 「黄金の風」 あらすじ

 2001年イタリア。ジョジョ最大のかたき役・DIOの息子、ジョルノ・ジョバァーナは、ギャング・スターに憧れる青年となっていた。しかし、今のイタリア裏社会を牛耳るギャング組織「パッショーネ」は暴力や麻薬で生計を立てており、彼の理想とするクールなギャングの姿とはかけ離れていた。彼の夢はギャングのボスとなり、パッショーネを乗っ取って、街の平和を取り戻すこと。かくしてチームリーダー、ブローノ・ブチャラティの元に所属することとなったジョルノは、正体不明のボスに近づくために、ブチャラティ・チームの仲間たちと信頼関係を築いてゆく。

 本作品について、物語ジャンキーの私による「オススメ・ジャンクポイント」を紹介していきたい。

【ジャンクポイント①】

格好いい登場人物の数々! ファッションセンスもグンバツだ!

 主人公であるジョルノ・ジョバァーナ。正義感が強いが、決して正道のみをゆくのではなく、邪道には邪道をぶつけたりもするキレものだ。彼自身もファッショナブルでイケてる青年だが、彼の所属するブチャラティ・チームの面々が格好いい!
 チームリーダーのブローノ・ブチャラティはクールだが部下思いのアツい男。自身の正義から目を逸らすことが出来ない、ギャングでありながらも真っ直ぐな人物だ。着ているスーツも独特で、白を基調とし胸元が開いたスタイリッシュでセクシーなスタイル。イタリアの伊達男といった雰囲気だ。
 チームには彼以外にも、アバッキオミスタナランチャがいるが、個性的なスタイルといえばパンナコッタ・フーゴだ。一風変わった穴だらけのスーツを身に纏うキャラクタで、頭はいいが沸点が低い。スグに感情的になってしまう危険な人物だ。

 また、敵役にも格好いい人物が多い。特にいいのが「パッショーネ」の中でも一際危険な「暗殺チーム」のリーダー、リゾット・ネエロ。黒を基調としたソリッドでラグジュアリーなパリコレさながらのファションは、連載当時から今に至るまでいつ読んでもまったく色褪せず新しい
 同チームに所属するプロシュートも格好いい。金色の髪をキチッと七三分けにし、ダークトーンの柄物スーツを着こなすナイスガイ。ビジュアルだけでなく、敵ながら一本気のある男で、死の間際までスタンドを発動し続けるシーンは落涙なしでは見られない。誇り高きギャングのひとりだ。

 彼らをはじめ、登場人物のほとんどが個性的なファッションに身を包んでいることも特筆すべきポイント。無論、これまでの部でも個性は溢れていたが、本作の舞台はイタリア。ヴェルサーチ、アルマーニ、グッチなど、イタリア・メゾンの魂を受け継いだ彼らのファッション性も、第5部の大きな魅力と言えるだろう。

【ジャンクポイント②】

ひと際派手なバトル描写。これぞ、スタンド・バトルの真骨頂!

 イタリアの裏社会・ギャングをモチーフに描いている第5部。そのため、スタンド・バトルも「殺し合い」がベースであり、ひと際派手なものが多い。ジョジョの魅力は「頭脳戦」であると言い切った前回とは趣が異なるが、第5部のバトルシーンは「戦闘力」×「頭脳戦」の掛け合わせが相乗効果を産み出している。
「産まれろ……新しいスタンド・バトルよ……」

 主人公サイドにも、拳銃に取り憑く小人型スタンド「セックス・ピストルズ」を扱うグィード・ミスタや、戦闘機型のスタンド「エアロスミス」を持つナランチャ・ギルガ、細菌ウイルスを扱う「パープル・ヘイズ」を従えるパンナコッタ・フーゴなど、危険で攻撃的なスタンドが揃うが、敵は更に彩り豊か。
 攻撃性、残虐性が高く、殺傷能力に長けるスタンド能力が次々と登場する。

 まず、列車を丸ごと巻き込んだエピソードが面白い。老化させるスタンド「ザ・グレイトフル・デッド」のプロシュート&釣竿スタンド「ビーチ・ボーイ」のペッシによるツーマンセル。
 列車全体に老化現象を及ぼすほどのスタンドパワー。主人公チームは列車の中を探索、敵のスタンド使いを探すが、敵であるプロシュートは自身を老化させ乗客に溶け込んでいた。終盤のプロシュートvsブチャラティ戦ではことさら、ふたりの精神的な覚悟、気高さが光り、バトルに華を添えている。

 戦闘力では氷使い・ギアッチョの「ホワイト・アルバム」も見逃せない。極低温を操り、広範囲を氷漬けにしてスケーティングをしながら移動する。捕獲されれば最後、極低温により粉々にされてしまう危険なスタンド。絵的にも見応えのある、凍りついた湖面での戦闘は見応えバツグンだ。

 また、ローマ市街を巻き込む殺人カビを飛散させるスタンド「グリーン・デイ」のチョコラータと、自身の周りをどろどろに溶かすスタンド「オアシス」のセッコも印象深い。街中を巻き込む残虐なカビの能力にはジョルノとミスタが対峙し、セッコはブチャラティと肉弾戦を繰り広げる。見どころたっぷりのエピソードだ。

 それから、ギャングのボスのスタンド「キング・クリムゾン」の能力は一級品だ。時を飛ばすことが出来る、ジョジョではお馴染み、ボス=時を扱う能力者の構図だ。能力の使い方や狡猾さはさすがのひと言。無論、戦闘力も非常に高く、一瞬たりとも気を抜くことができないバトルが繰り広げられる。
 最終戦では「弓と矢」がもたらすスタンドのさらに先の能力が提示され、最後の最後まで目が離せない複雑なバトルが展開。ぜひ、その目で確かめて欲しい。

【ジャンクポイント③】

圧倒的な漫画表現力! 荒木先生はココで「高み」へ到達した!

 凝縮され洗練されたシナリオもさることながら、第5部は荒木飛呂彦先生の漫画表現におけるひとつの到達点であると私は捉えている。
 無論、このあとも物語は紡がれるため最終到達点とは言えないが、私は今でも第5部こそが「ジョジョの奇妙な冒険」におけるひとつの頂点、漫画表現、ことさらに視覚的表現におけるひとつの「高み」と考える。
 理由は幾つかある。まずは、荒木先生が一度、ジョジョという一大コンテンツを終えてひと息ついたこと。当時のジャンプ本誌、最終回におけるアオリとコメントがコチラ。

更に受け継がれし『黄金なる遺産』!!それは『勇気』『希望』『正義の心』!!荒木先生の次回作をお楽しみに!!

ジョジョの奇妙な冒険 第5部 最終話より引用

しばらく休暇を取ります。次回作はもう構想中です。またお会いできる事を祈って。

荒木飛呂彦先生 巻末コメントより引用

 ……な、何ィ――ッ?! スタンドも月までブッ飛ぶこの衝撃。まさか、ジョジョが終わるだなんて……! 私は泣いた(この次回作がジョジョと明示はされていない)(のちに第6部連載開始の一報が入ることをこのときの私たちは知らない)
 つまり、第5部が終了した時点では、第6部の連載はまだ本決まりではなかった(水面下の出来事は知らん)と思われる。第5部で完結する可能性も十分検討されたのだろう(本誌での掲載順位が低かったことも要因のひとつかもしれない)

 ゆえに(イコールじゃあないにせよ)荒木先生は、第5部をジョジョの集大成と位置付けていたのではないかと推察する。舞台は先生が大好きなヨーロッパはイタリア高級メゾンを彷彿とさせる衣装、映画俳優のような立ち振る舞いのキャラクタ、スタンド名は誰もが知っている有名アーティストが揃い踏み。極めつけはエピローグ「眠れる奴隷」の完成度たるや。第5部にはジョジョのすべてが詰まっていた。

 それらの要素は、漫画表現に明確に落とし込まれている
 スタイリッシュな街並み、人物、スタンドがバランスよく画面に配置され、少年誌らしい力強さも相まって、圧倒的に漫画としての存在感があって格好いい。ただ立っているだけで絵になるシーンも多く、類稀なるデッサン力を活かしつつあえて誇張したシルエットで人物を描く荒木先生独自のポージング「ジョジョ立ち」【発祥:文芸ジャンキーパラダイス様(のハズ)】としてクローズアップされ始めたのも、第5部終了後からである。
 無論、独自のポージング、カラーパレットに支配されない色使いなどはこれまでも大いに注目されては来た。しかしながら、世間のムーブメントと重なり、「ジョジョの奇妙な冒険」という作品のコンテンツ力そのもの、つまりは「漫画表現力」が高まり始めたのは、恐らく第5部連載時、連載終了後のこの時期からだろう。
 人気シリーズ「岸辺露伴は動かない」も同時期に読み切りが掲載されており、荒木先生の溢れ出るエネルギーは両作品ともにシッカリと反映されている。

 また、ジャンクポイント②に引き続き、バトルにおける漫画表現の進化も見逃せないポイント。高い画力で描かれるバトルシーンは書き込みが多いながらも見やすく、ミスタ、ナランチャらによる銃撃戦での銃弾の軌跡の表現(恐らくあまりにも使いやすかったために次の部以降銃キャラはメインの誰かしらが務めることとなる)や、ジョルノ、ブチャラティらの拳のラッシュの作画もひと際印象的に描かれている。能力バトルはしばしばバトル中に何が起きているのかわかりにくい。その欠点を、絵の力で説得力を持つシーンに昇華しているのだ。

 中でも白眉はブチャラティのスタンド「スティッキー・フィンガーズ」。あらゆるものにジッパーを付与出来るという奇妙奇天烈な能力だが、魅せ方がバツグン。紙面を立体的に魅せてくれる能力で、強さもさることながら絵的にも面白かった。
 さらには主人公・ジョルノのスタンド「ゴールド・エクスペリエンス」もこれまでのすべてを詰め合わせたようなゴージャスなスタンド。戦闘力もあるが成長度がバツグンで、生命を産み出すだけでなく、治す能力までもが付与された。「スタープラチナ」「クレイジーダイヤモンド」など過去の主人公らを彷彿とさせる能力で、戦闘のバリエーションも豊富。のちの部に繋がる重要なスタンドとなった。

【ジャンクポイント④】(noteだけのオマケ)

ジョジョならではのセリフ回しッ! 名言のオンパレードが炸裂するッ!

 第5部は名言のオンパレード。ここではその一部を紹介する。

「覚悟」とは!! 暗闇の荒野に!! 進むべき道を切り開く事だッ!

ジョルノ・ジョバァーナ

『任務は遂行する』『部下も守る』 「両方」やらなくちゃあならないってとこが「幹部」のつらいところだな 覚悟はいいか?オレはできてる

ブローノ・ブチャラティ

オレに「来るな」と命令しないでくれーッ! トリッシュはオレなんだッ! オレだ! トリッシュの腕のキズはオレのキズだ!!

ナランチャ・ギルガ

「ブッ殺す」と心の中で思ったならッ! その時スデに行動は終わっているんだッ!

プロシュート

『結果』だけだ!! この世には『結果』だけが残る!!

ディアボロ

そうだな…わたしは「結果」だけを求めてはいない(中略)大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている

アバッキオの先輩警察官

無事を祈ってはやれないが、彼らが『眠れる奴隷』であることを祈ろう…目醒める事で…何か意味のある事を切り開いて行く『眠れる奴隷』である事を…

スコリッピ

 まだまだ紹介をしたいところだが、このあたりで。いずれ別記事にて名言解説などをしていきたいので、気長にお待ち頂きたい。
 今ではネットミームになっている名言もいくつもあって、ジョジョの言語力の面白さは時代を問わないことの証明にもなっている。


 以上、今回もまだまだ語り尽くせてはいないが、ひとまず「ジョジョの奇妙な冒険」第5部「黄金の風」「オススメ・ジャンクポイント」を終わりとしたい。
 未読の方、読み返したいと思った方はぜひ手に取って欲しい。

【捕捉】

 現在のサブタイトルである「黄金の風」はのちにつけられたもの。
 本誌連載時には「第5部 ジョルノ・ジョバァーナ【黄金なる遺産】」であった。

【ジョジョの奇妙な冒険・関連記事】

【今回ご紹介した作品】

「ジョジョの奇妙な冒険」

【今回のラジオ】

YouTube

Spotify

Podcast

この記事が参加している募集

今こそ読みたい神マンガ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?