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唾の喉越しに祝杯を

日頃から「noteで書けるような面白ネタが降って来ないものか」と思っていたバチが当たったのかもしれない。人生で初めて入院を経験した。

10月の中頃から、首を動かしたり物を飲みこんだりする時に左首にズキッという痛みが走るようになった。首を触るとリンパが腫れているような感触もある。気になって耳鼻咽喉科で薬をもらったが効果なし。それどころか痛みは少しずつ強くなっていくようだった。

そうして誕生日を迎えた11月頭の朝、ついに総合病院での精密検査が決まった。ハッピーバースデイ。かくも大人になれば貰えるプレゼントは変わるものだ。

しかしその二日後――翌日に検査を控えた月曜日――に事態は急変した。この頃にはすでに、唾を飲みこむにも、いざ切腹せんとする侍のように痛みを堪える決心が必要なほどの苦痛になっていた。
その日の朝も、僕は職場の装置の前でその決意を固めてからグッと唾を飲みこんだ。俯き加減だったのがいけなかったのだろうか。唾が道路脇をリンパのしこりをグイと押しやって喉を通り抜けた瞬間、乾いた木板をスパイクが踏みぬくようなバキバキという音が頭に広がった。
ハッピーバースデイ。
左耳の奥深くにアイスピックを突き刺して激しく掻き回しているような痛みが僕の脊髄を駆け抜けた。立っていられない痛み。俺は死ぬのか……? 僕は呻いてその場にうずくまった。その日、僕は職場を早退し、痛み止めを飲んで15時間ほど眠った。

翌日、検査結果ではリンパの腫れは引いてきており、血液もほぼ問題ないとのことだったが、すでに痛みで口もまともに開けられなくなっており、食事も不可能と判断。点滴での栄養補給が必要となり入院となった。
医者のいうことには「茎状突起過長症(イーグル症候群)」というものではないかということだった。要は、耳の下にある骨が人より長くて、それと一時的なリンパの腫れがキッチュなコラボレーションを生んだ結末だということだ。

今現在は退院して、痛み止めを飲みながらではあるが普通に食事をしながら生活している。薬を飲まなくなった時を想像すると恐ろしい。痛みが再発するようであれば手術をして骨を短くすることになるだろう。
ただ、今はnoteのネタが出来た喜びを噛みしめ、存分に唾の喉越しを味わうばかりの僕だ。

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