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すべてが思い出になる前に

午後五時を過ぎていた。札幌の冬空はとうに暗く、テレビ塔を飾るイルミネーションの光が大通公園を歩く人々の姿を浮き彫りにしていた。

年も暮れのこの時期になると、来年のカレンダーと手帳を街まで買いに行くのが毎年の習慣になっている。今年は昨年までよりもずっと薄い手帳を選んでみた。ここ数年は1日1ページの分厚いタイプを使っていたが、実のところ全ページを使い切ったことがまるでなかったのだ。表紙が紺一色の薄くて可愛げのない手帳。身の丈を知るということはこういうことだ。

札幌の地下街には「小鳥のひろば」という、セキセイインコを十数匹ガラスの檻に入れて展示しているスペースがある。いつものように、地下駐車場に戻る前にそこに顔を出した。ひろばに立ち寄った時はいつも、インコ達の特徴や総数を確認しないように気をつけている。理由は単純。数が減っていることに気づきたくないからだ。おそらく、今ここにいるインコ達も一年前に訪れた時とまるきり同じではないだろう。だが強く認識しない限り、増えようが減ろうが気づくことはまずない。

今年俺は何を得て、何を失ったのか……帰り道、ザ・バンドを聴きながら車を走らせると、一年の思い出が頭の中を通り過ぎていった。と同時に、過去のどうにもならない記憶もノイズのようにちらつき始めたので、今夜は酒を飲もうと思った。実のところ昨日も思ったし、昨日も飲んだのだ。

毎年元旦には新しく買った手帳の最初のページに今年の目標を書き込むようにしている。家に戻り、昨年の目標を見返してみた。半分くらいは達成出来ただろうか。まあまあ……より少し上出来。そう思うことにして、僕は棚からボトルを取り出した。

僕のnoteを見に来てくれている皆さんにとって今年は良い年だったのでしょうか。年の最後までひねくれた表現ばかりしてしまい大変恐縮ですが、あなたの2017年が2018年よりも大した年ではないことを祈っています。

新しい年が性懲りもなく姿を見せたら、またお会いしましょう。
今年は大変お世話になりました。よいお年を!

#エッセイ #日記

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