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ビッグモーター社、社長会見に見る社長発言の重要性と広報が必要なわけ。

広報の専門家の目から見る、ビッグモーター社社長の記者会見。
不正は知らなかった、部下が勝手にやったこと。経営陣に忖度するいびつな企業風土であったという発言もあり、メディアトレーニングの材料としては、メッセージ性の重要性と社長発言の重さ、コンプライアンス、ガバナンスの面から非常に有益なケーススタディ(非常に悪い例)として、取り上げることのできるものだ。

本内容は、ニュースや記事に基づき分析をし、広報的な見地でコメントをしていますので、ご留意ください。

経営者として言ってはいけないこと。
部下が勝手にやったこと。これは、政治家でもいえることだが、秘書がやったこと。これに似ている。
企業経営をするうえで、利益を追求し、株主に還元することが目的であるが、このような不正請求などの温床に経営者が気が付かないことはあり得ない
問題なのは、その発言内容。
「不正を知らなかった」「部下が勝手にやったこと」
この発言は、謝罪会見で一番発言してはいけないこと。
企業のトップが会見を行い、その説明責任を果たすことが、謝罪会見であり、部下の責任は、トップの責任、経営判断や経営能力を自ら否定することになる。

経営者が辞任し、交代すれば良いという話ではなく、事実関係をつまびらかにすることが重要である。

100名を超える社員が不正請求に関わる
これを示しておきながら、企業の組織的なものではないというのは、非常に無理があるし、それを経営陣が知らないはずはないという印象が出てくる。
そもそも、保険会社から社員が出向してきており、報道によるとすでにこの事実を把握していたという。
当然、出向元の保険会社に対しては、その内容は通知されていると推察されるので、経営陣が知らないといは言えないのではないだろうか。

広報不在、広報がいないことのデメリット
ニュースや報道、記事によると、問い合わせても広報がいないという理由から、回答がないなどといった、ことが散見されているが、企業として非常に問題である。
記者会見のシナリオ、発言のチェックや対応方法から始まり、社外、社内に対して統一したメッセージが出せない体制であるのであれば、企業としての組織に問題がある以前、企業として成り立っていないと思われる。
特に社長発言内容の是非、発言によるニュースや記事へのインパクトなど、想定して発言させることができない状態で記者会見に臨むことは、非常にネガティブに作用します。

報道機関からの問い合わせや質問、過去の事例、同様の事案等、準備ができていないまま臨み、社長のポテンシャルや社長の感触のままで会見を行ったといか感じられないと広報的な視点では分析します。

これから噴出してくる他のネガティブ情報
人事の降格、過度なノルマによる不正請求、街路樹の伐採など、記者会見をしてもそれ以外の情報があふれ出てくる現状を考えると、会社が正確に把握していない情報がいくつも、出てくる可能性があります。
特に、元社員の証言やお客さんなど利害関係者(ステークホルダー)や元役員といった社内の事情をよく知る人物から、まだ表面化していない情報の提供などが出てくる可能性も否めません。
一番の問題なのは、経営陣が把握していないという、記者会見の発言が覆るような証言が出た場合です。
以下は、想定でしかありませんが、このような社長のワンマン記者会見でこれまでの事例から見ると間違いなく、経営陣の関与が示されるでしょう。
そうなった場合、様々な悪影響が出てくるのは必至であり、すでに不正請求の損害賠償をはじめ、その他訴訟に発展するリスクもあり、会社として成り立たない状況に陥る可能性があることも認識する必要があります。


記者会見における発言の重要性とその影響について、経営者は、考える必要があることは明確ですが、ニュースや取材には至らない小さな事案でも社長としての発言やコメントは取り消すことができない重要なものとして認識されるということを、中小企業やベンチャー企業の経営者にも理解してもらいたいと思います。





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