いつも心に小林信夫を

 グリーンマックス(以下GM)のキットの箱絵に、低空を飛行するロッキード・スーパーコンステレーション(軍用のEC-121)の描かれたものがある。場所はおそらく神奈川県であろう。神奈川中央交通のボンネットバスや相鉄5000系の姿も見える。
 いや、実はキットの中身は手前に描かれた公団住宅なのである。

 描いたのは小林信夫、おそらく技術者にしてイラストレーター。詳しい事は不明だが、ファンは多い。

 あるメーカーでNゲージの開発を行っていたようで、氏の先輩が伝説の動力「スプリングウォーム」を生み出したばかりの頃に実見しているという。また、自らKSK Cタンク(ワフ28000にぴったり)を生み出している。

 最もよく知られているのがGMに移ってからの商品の箱絵だ。
 公団住宅の例以外にも、「この商品でこの箱絵を描くか?」という例は結構ある。ただ、それは手に取った者にイマジネーションを起こす可能性があるとも言える。

 2階建ての木造商家とか、土蔵と店蔵とか、火の見やぐらとか、地方役場とか、バスターミナルとか、どこまで氏が関わっていたのだろう。「看板建築」などいかにもそれっぽい。「グリーンマックスみたいなビル」という呼ばれ方をする建物もある。

 カタログの改造記事においては「この部分自作した方が早い」「何らかの方法で埋める」の名言を残した。

 定山渓のゲロ電など、小林氏がいなければ私は知らなかった。

 レイアウトに空港を導入するアイディアを提案し、「テキサン練習機はゼロセンを黄色く塗ってごまかしておけば良い。(シロウトはだませる)」と語った。今やテキサン練習機が1/144で手に入るんだから隔世の感である。

 レイアウトの中の川の作り方の記事には治水工事のナローも描きこんだ。

 農家を作る際はトミックスの製品をそのまま置くんじゃなく、納屋や囲いを作る重要性を示した。

 鉄道車輛改造で小型船舶の作り方を示した事もあった。キハ04が漁船のキャブに、湘南電車が高速船になるのである。

 鉄道模型趣味誌にも連載を行い、蒸気動車の作り方なんて記事も書いた。過去に同誌の誌面を飾った蒸気動車が、一堂にイラストで並んでいた。

 ナローの単端をポケットライン動力で作る話もあった。日車形や丸山形ベースだが、自由型であった。「いかに自由型にするか」のヒントも解説されていた。

 昔(1960年代)のライトケースを独立させ、エンブレムを輝かせた(当時の自動車もそうなのだが)私鉄特急と、風の流れに乗るような「最近」の特急電車のデザイン上の「文法」の違いを紹介した事もあった。
 これも自由型の「やり方」のヒントで、編成の片方が流線型で、反対側が切り妻という例も出ている頃だった。

 ボンネットバスの時代による変遷を紹介し、後部が同じ時代のリアエンジン車のようなプレスになったあとのタイプの「使い方」について書いたり、キャブオーバーバスから広報車にするバリエーション展開の話とか、場合によってはかえってレイアウトで使いやすい「三輪バス」の話をしたりした。

 そこまで古いバスではなく、北村ボデーの四角いスケルトンバスの話もあったな。

 私が100円ショップでミニカーを探すようになったのも氏の影響だ。WIDEAの無国籍感のあるナッシュランブラーやメトロポリタンは、今でもヤフオクで見かけると買ってしまったりする。

 ターミナルを含めた小型フェリーの記事もあったし、店の上に城(プラモデル)を建てる珍建築の話もあった。東北の消防屯所の紹介や戦後の「小さなおみせ」も傑作だと思う。

「石の宝殿」のようなものをレイアウトに取り入れる面白さを書いた事もあった。おかげで、私も出先で「亀石」のミニチュアを入手してしまったりした。 

 救援車や配給車になっている「或る列車」が客レに連結されていた怪しい話も楽しかったし、スノープロウを取り付けた馬面電車のイラストもそれらしさがあって良かった。

 島を走るローカル私鉄が、子供達の為に新幹線のイミテーションを走らせる話も良かったなあ。とても100円ショップの中国製おもちゃ改造には見えなかった。

 もう読めないんだなあ。




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