【感想】創作講座 料理を作るように小説を書こう 山本弘

 私は娯楽作品の「作り手」の本を読むのが好きだ。昔は特に、好きな映画にしろテレビ番組にしろ、観ていて「どうやって作っているんだろう」と思う事が多かったってのもある。特撮人形劇「サンダーバード」の制作裏話が知りたいって言うと、共感してくれる人は多いと思う。

 一番好きな娯楽作品ジャンルというとお笑いという事になる。やっぱり世代的な事もあって「ザ・ドリフターズ」が(全部が全部じゃないが)好きで、作り手の本をいくつも読んだ。いかりや長介「だめだこりゃ」、志村けん「変なおじさん」、山田満郎・加藤義彦「8時だョ!全員集合の作り方」、田村隆「ゲバゲバ みごろ!たべごろ! 全員集合-ぼくの書いた笑テレビ」。

 特に放送作家の田村さんの本は面白く、自伝であるとともに「コントの作り方」の面も大きくて、好きな本だ。それ以前からワニの豆本で出ている田村さんのコント本が好きだったというのもある。

 舞台演劇だとちょっとマイナーだけど、とうじ魔とうじ「とうじ魔とうじ養成ギブス」が楽しかった。「地下生活者会議」という、とうじ魔さんの関わっている集まりが好きだったし、「こういう考えで作っているのか」と思わせる部分が大きかった。

 とうじ魔さんの奥さんである塔島ひろみさんの「楽しい『つづり方』教室」も楽しかった。一応「文章読本ではありません」と断り書きはあるものの、ちょっと変わった笑える文章を書いてみようと思った時に役に立つ場合がある。比喩の使い方や、使いすぎて文章の意味が変わってしまう所なんて傑作だ。

 さて、山本弘さんの本である。実は山本さんの名前は「トンデモ本の世界」で知って、その後自分のインターネット環境が整った所で「山本弘のSF秘密基地」を観に行った。自分の好きなUFOについて取り上げていたからだ。ブロードバンドの始まった頃のホームページであるけれど、今でも興味深いネタを扱っている。

 山本さんはSF作家である。SFだけじゃなく、ファンタジーやミステリ等もお書きになっている。

 個人的には「最初の山本弘」としては、この「ローラーコースター・ワールド」がおすすめだと思う。

 私が最初に読んだのは「神は沈黙せず」という長編だ。2003年、まだスマートフォンが登場する前の時代に書かれた近未来(に近い世界)を舞台にしたSF作品である。傑作だと思う。
 この作品には「ポケタミ」という携帯端末が登場する。そこを示して「スマートフォンの登場を予測している!」と言うつもりも無いけれど。

 私がジャック・ヴァレやジョン・A・キールといった、「宇宙人に正体を求めないUFOの話」が好きだというと「妖魔夜行 戦慄のミレニアム」を薦められた。何と、UFOが「妖怪」だったという設定が出てくる。登場人物が「幽霊飛行船」(19世紀末に現れた、UFOに似た存在)に乗り込む場面も出てくる。あとは実際に読んで欲しいが話の展開も最終決戦の切り札も興味深い。

 その山本弘さんによる小説の書き方の本なのだけれど、これがまた面白い。「一体どれだけの本を読んでいるんじゃ?」と思う人もいるかも知れない。そう、半端無い読書量なんだよ、山本さんの小説は参考資料の所まで読んで圧倒されて欲しい。

 ここで、自分自身も好きなジャンルに関しては一般の人よりは多くの本を読んでいるのに気付く人もいるかも知れない。

 山本さんの場合はそれが生かされているからすごいのだ。もし読んだ作品が駄作だったら? 何と、この本には「駄作から学ぼう」という章がある。転んでも只では起きないのだ。

 この本のポイントはいくつもある。その中の1つが、まず自分自身が楽しむ(苦しむ?)為に小説を書くという事。ひょっとしたら当てはまる人も多いんじゃないかと思う。あるいは自分がそうでなくても、友人が自分自身の為に書いていた話をこっそり見せてくれたとか。
 私も中学生時代、友人が書いたコメディを読ませてもらった事がある。展開が小松政夫と伊東四朗のコントに似ていたけど、自分が楽しむ為なら問題無いのだ。

 もちろんそれだけでない、「まず書いてみる」事のメリットについても書かれている。

 世にも恐ろしい病である「設定病」の事も、乗り越えて来たからこそ書けるんだと思う。

 何度も読み返す事になる本だと思う。

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