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【短編小説】妖艶

#短編小説 #現代小説 #妖艶 #ファンタジー #未来 #未来は変えられる #子供 #量子力学 #ルーン文字 #魔法 #ラノベ

毎月1日は小説の日という事で、
8月分も、
なんとかショートストーリーを描きました。
毎回何を書こうか、何を伝えたいのか?
考えているのですが、
片手に余るプロジェクトを抱えながら
新しいストーリーを考えるのは
ちょっと厳しく・・かといって、
今までの続編にも少し変化が欲しいと
思っていたところです。
何か新しい流れを作りたいと思って
いましたが、
なかなか新しい流れはつくれません。
それは、私が暴力的な内容が嫌いな事
人をだますことが嫌いなことも関係しています。
いろいろな物語には
ヒール役が必要なんですが・・その殻からは
抜け出たくないというのが心情ですかね。
そんなこんなで、
なかなかストーリーが浮かばず。
8月はあきらめていたんですが、
妖艶の魔女が少し力を貸してくれました。
感謝です。

今回のお話は3000文字です。
いつもより短くなっています。
お時間のある時にお読みください。

妖艶

リチャードは唖然としていた。
自分のベッドの上に、
知らない女性が居たからだ。

その女性は、黒髪のセミロングを
シーツの上に投げ出す形で寝ていた。
黒いミニスカートのワンピースから
胸がはじけ出しそうなくらいの、
ボリュームがあった。
白く細く伸びた足は、
リチャードを誘っているようだった。

リチャードは困惑したまま、
立ち尽くしていた。

やがて女性は目をさまし、
リチャードを見上げた。
黒い瞳をカラコンでむりくり
紫色にしているようにも見えた
しかしその瞳には、
強い芯のようなものを感じた。

「どうした突っ立ってて、
 また私とやりたくなった」


女性は横柄な口ぶりで少しだけ笑った。

リチャードはその妖艶な瞳に
飲み込まれそうになりなながら
<また私とやりたくなった>の言葉が
リフレインしていた。

「俺、お前の事知らねーし
 やってもいねーし
 なんでここにいるんだよ」

リチャードはやっとの言葉を
絞りだした。
女性はまた口元で少しだけ笑い

「つれないねー-
 夕べはあんなに激しかったのに」

女性はからかっているようでもあった。
けれど、リチャードは頭の中の
記憶をたどっていた。

昨日は居酒屋で仲間と飲んで
そのまま朝までカラオケして
朝6時に自分のアパートに辿りついた。
鍵はかかっていた。
合鍵は誰にも渡してない。
ただ、カラオケのすべての時間を、
覚えているかといえば、
覚えてはいない。
しかし、この女性はリチャードの
記憶の中には居なかった。
逆にこんな魅力的な
そしてワンピースからはみ出しそうな、
体の女性がいたら、
まず記憶に残るはずである。

リチャードは頭を切り替える。
新手の泥棒とか、新商法とか、
それにしても鍵がかかっている部屋に
どうやって入り込んだのか?
頭の中はくるぐる回っている。

「おまえ誰だ、どうやってここに入った」

リチャードはまた声を絞り出した。
カラオケのし過ぎで、少しかすれてはいたが
ちゃんと声には出ていたはずである。

女性はその妖艶な瞳をリチャードへ向けた

「私はイメルダ、そしてここの住人だから
 ここに居るのよ」

そういってほほ笑んだ。
笑うといっそう幼く見るイメルダは、
リチャードに向き直って

「リッチよろしく」


そういった。

リチャードは驚いていた。
ここは紛れもなく自分の部屋で、
しかもイメルダと名乗る女性は
どう見ても日本人で
そしてなにより、自分の事をリッチと呼ぶ
その女性に驚いていた。

「なぜ俺の名前を知っている」

イメルダは勝ち誇ったように、

「私はなんでも知っていますよ。
 現在日本で量子力学の研究をしてる
 髭もじゃのアメリカ人ってことも」

「ほー-悪いが俺はカナダ人だ、
 お前は誰だ・・」

今度は強い口調で言えた事に
リチャードの気分は高揚した。

イメルダはやっとベッドから起き上がると、
その紫の妖艶な瞳でリチャードを見つめながら
近づいていてきた。
リチャードは金縛りにでもあったように
動くことができなかった。

やがてイメルダはリチャードの髭もじゃの
顔に両手を伸ばして触れた。
段々と近づいてくるイメルダの瞳に
自分の顔が映っているのが見えた。

リチャードとイメルダの唇は重なり
イメルダはそのままリチャードを抱きしめた。

イメルダからキスをされる瞬間、
妖艶な瞳の中に、寂しさと悲しさが混じった、
そんな表情を、リチャードは感じていた。

2分後二人はベッドにこしかけていた。
リチャードにとっては狭い部屋だった。
椅子や机を置くスペースもない。
1Kの部屋には、ベッドがぽつんとあるだけだった。

イメルダは懐かしむように
リチャードを見ていた。

先程までの横柄な態度は一変していた。

やがて話をはじめた。

リチャードの研究は30年後花を咲かせ、
量子力学の世界では、有名になっていること。
そして時空をも超える技術が発明された事。
この技術の応用は幅広いが、
ある日、殺されてしまう事など。
リチャードにとってはちんぷんかんぷんの
話だった。

「イメルダ、君の話が正しければ
 君は未来から来たって事かい?」

イメルダはうなづいた

「ここで、あなたと私は暮らしていたの、
 さっきはあまりに懐かしくて、
 ちょっとからかっちゃったけど、
 私と出会う前のあなたに出会えてうれしかったの。
 でも、私がここに来たことで
 未来はすこしずつ変わっていくの。
 だから、あなたも未来に来て、
 あなたが死んだあとの、あなたを演じて、
 あなたの研究をさらに大きなものにして
 人類を救ってほしいの」

「ちょっとまってくれ、
 未来が変わっているなら、俺が行っても
 結果は変わらないのではないかな」

「リッチが死ぬ前に、過去の自分とつなぎ
 未来と過去に時空の穴をあけて
 行き来できるようになれば、この世界は
 変わっていけると言い残したの
 だから私はここに来たの」

リチャードは困惑していた。
しかし、未来の自分の言葉を信じたい気持ちもある。

イメルダもリチャードもじっと考えていた。
そしてイメルダがリチャードの顔をまっすぐに見つめた。

「今現実のあなたにあえて感じたの
 あなたが未来へ行くのは、危険があると。
 こうやって、若かったあなたにあえて
 すごくそう思ったの。
 だから、私に未来をください。
 30年後の未来じゃなく、50年後の未来を
 私にください。
 30年後の未来はもう確定しているの。
 多分ここで何かしても
 大きなひずみを生むだけ、
 でも31年後、40年後の未来は
 まだ間に合うはずだから」

イメルダはうるんだ瞳でリチャードを見た。

「どういうことか理解できない。
 もっと簡単に説明してくれないか?」

リチャードはイメルダに言った。

イメルダは少し顔を赤らめて
説明を始めた。
彼女は25歳 リチャードは52歳
二人は恋に落ちて、一緒に暮らしていた
けれど、彼女には子供ができなかった。
リチャードの年齢なのかはわからないが、
そうこうしているうちに、
リチャードは殺されてしまった。

彼女は、リチャードが開発した、
次元移動装置でここまで来た事。
リチャードを向こうの世界へ連れていこうと
おもったけど、それはあきらめて、
お腹に子供を宿した状態で自分だけが戻れば、
未来は変えられるかもしれないという事。

「だから、私たちが出会うのは
 本当は30年後なの、私は今生まれていない。
 この世界に居られる限界は3か月
 その間、私を・・私を抱いてほしいの
 リッチあなたの子供がほしいの
 お願い・・・」

切実な彼女の想い。
彼女の妖艶な瞳が、さらに切実さを増している。
女生とはこんなにも強い存在だったのか。
その意思の硬さ、決意と愛情をリチャードは
感じていた。

3か月後
彼女の体は胎児を宿していた。
リチャードは彼女が持ってきた、
未来の自分の研究を早く完成させるため、
研究をしながらも、毎晩彼女を抱いた。
妖艶な瞳は、裸になるとさらにその
妖術が増したかのように、
リチャードの体にまとわりついた。

産婦人科で胎児が確認できた。
妊娠3か月という診断だった。
イメルダはとても喜ぶと同時に
悲しい眼もしていた。

「リッチ、お別れの時が来たわ
 あっちで待ってる」

リチャードは何もできす茫然としていた。

「もう行ってしまうのかい」

「私がこの世界に居れる限界がきたみたい。
 この子はちゃんと育てるから。
 リッチありがとう。」

そういうとリチャードに軽いキスをした。

イメルダは、ルーン文字が刻まれた
黒水晶を出して呪文を唱えだした。
フェイヒュー/スリザリス/サガス
3つの水晶は輝きだし
やがてイメルダをつつみこんで
消えた。

リチャードは狐につままれた気分で、
狭い、ベッドしかない部屋で
茫然としていた。
3か月間、彼女を抱いたベッドには
かすかにイメルダの香りが残っていた。

あとがき

今回はすごく迷いました。
前書きでもかきましたけど・・
できるだけ2000字でと思いましたが、
構想がななかな決まらなかったのです。

年の差の愛、母は強し、未来は変えられる
愛する女性の信念は怖い等が
いつもの私のテーマでした。
本当はもっとエッチな感じにしようか、
迷っていたのですが、
官能小説ではないですし、エッチな描写は、
長編へチェンジするとき、
書き足せばよいので、
今回もラフスケッチのような小説です。
まぁ量子力学といいながら
最後は魔法かいと思った方もいるでしょうが
太古の昔、
魔法陣は究極の量子力学だったのでは、
とか思い始めています。
私は学者先生ではないので、
科学で証明はできませんけど、
まぁその辺は棚にあげて・・・

イメルダは、日本人なのになぜイメルダなのか?
その辺は、次回書けるかなとか思っていますので、
今回はその秘密はベールに包みました。
生まれた子供は未来でどうしているのか?
その辺も気になるところですが、
リチャードが死んでしまった後の世界に
イメルダが戻るわけですから、
リチャードは永遠に自分の子供には会えないという
理論になるのでしょうね。
そんな二人へ想いを巡らせればきりがないので、
次回の構想にしましょう。
次回があればですけどね(笑)
今回も、つたない物語に最後まで
付き合っていただきありがとうございます。
皆様に感謝いたします。


サポートいただいた方へ、いつもありがとうございます。あなたが幸せになるよう最大限の応援をさせていただきます。