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売上拡大と利便性向上の鍵は、深い顧客理解にあった。エンタープライズ向け事業のPdMが語る仕事の面白み-後編-

※本記事の内容は取材時のものであり、組織名や役職等は取材時点のものを掲載しております。

前編では、ケビンさんがこれまで経験してこられたお仕事やエンタープライズ プロダクトグループ立ち上げの経緯についてお伺いしました。
後半ではPdM(プロダクトマネージャー)としてのMonotaRO.comと大企業ビジネスとの違いや仕事上大切にされている考え方についてお伺いしていきます。

【プロフィール】
名前:ケビンさん
所属:エンタープライズビジネス部門 エンタープライズ プロダクトグループ グループ長
入社時期:2017年8月
職種:プロダクトマネージャー(PdM)

【MonotaRO.comと大企業向けビジネスでの違い】

MonotaRO.comと比べた時に、特に大企業ビジネスにおいて注意すべきことはありますか?
MonotaRO.comでは、事業者だけでなく個人事業主でもユーザー登録して、すぐに注文できる仕組みになっています。一方、大企業の場合は、会社の規模が大きくなります。そうなると、購買統制力を持つ部署が調達先を決めて、購買システムとの連携で商品を買う流れを作っているケースが多いです。モノタロウを使うのは個人の意思ではなく、会社側の方針に基づくことなので、個人単位ではなく企業単位での導入となるわけです。

顧客理解に戻ると、MonotaRO.comや他社2C向けのサイトだと「サイトを使っている個人」が対象ですが、大企業の場合は「お客様」と呼べる存在が「届いた商品を利用する人」「現場の発注担当」「現場の管理者」「購買管理者」「経理担当」というように、複数の役割とレイヤーに分かれているので、より高度というか、関わる人数が多くメタ的な視点でその企業にいる人たちを組織として理解しなければなりません。

大企業向けビジネス以外にもMonotaRO.comを担当するプロダクトマネージャーが複数人いるようですが、なにか具体的な違いがありますか?
目標、関係者、リソースをとりまとめて、企画から完成までに良い意思決定をするという基本的なところについてはみんな同じ役割を担っていますので、そのあたりのことならやっていることは一緒ですね。しかし、歴史的に見ればMonotaRO.comのビジネスが拡大・成長することによって、大企業ビジネスのベースができたという流れなので、それぞれの成長段階で必要となる対応は違ってきます。

具体的な例を言えば、MonotaRO.comは、機械学習や高度なデータサイエンスを用いたパーソナライゼーションが次の注力している優先領域の一つです。そのために、PdMにも非常に高い専門性を求める場合があり、その領域のスペシャリストとしてPdMを務めることになります。そうではない場合ももちろんありますが、MonotaRO.comの一つの特色として分かりやすいと思います。

大企業のビジネスにPdMが就くのはもっと最近で、今はパーソナライゼーションまで注力しなくても、顧客の利便性を大きく上げるポテンシャルが、違うテーマにおいて十分にあります。また、大企業特有の顧客構造やシステム連携がありますので、MonotaRO.com側から輸入しても結局当てはまらないケースも多いのが事実です。やっぱり少し違った軸の顧客理解で、UX向上施策を練って利便性を上げる必要があります。

やり方は色々ありますが、エンタープライズプロダクトグループでは「顧客ヒアリング」と「サイトの行動分析」の組み合わせが主流になります。顧客との商談からヒントを得て、データ分析で裏付けながら考えます。

その逆もあって、データ分析から見えた共通行動を確認するためにお客様にヒアリングさせていただくこともあります。しかも、最近から始まった取り組みですので、発掘できていないポテンシャルが当然、たくさん残っています。「自分の頭で考えて、深く理解する」努力をすれば、大きな利便性の向上と売上拡大につながる発案がまだまだ可能なのが、PdM視点でいえば大企業ビジネスのいちばんの特徴だと思っています。

実際に今はどのようなプロジェクトに取り組まれているのでしょうか?
時期によって担当するプロジェクトが変わりますが、今はONE SOURCE Lite(※)の明細管理について大きな機能追加を進めているので、UI/UXデザイナーとユーザビリティテストを行ったり、影響する箇所の仕様変更の検討をしたり、新しい仕組みへの移行計画について大企業カスタマーサポートの担当も入れて検討したりする仕事が最近多いですね。

その他に、サードパーティー連携の可能性を探るための市場調査を、営業担当と行っています。顧客にヒアリングをして、連携のニーズ有無や、解決したい課題を整理して、Design Docを書くための情報収集をしています。

あとは、決まったプロジェクトのためというよりも、継続的に取り組んでいるのが「データ分析による顧客理解」です。大企業のお客様が利用するサイトの計測を充実させて、そこから入ってくるデータを、アナリストが仮説を立てて分析してくれます。分かったことを踏まえてビジネス課題を一緒に探したり、改善のポテンシャルを特定したり、顧客の行動を分類したりしています。

※ONE SOURCE Lite:モノタロウが自社開発した、購買のコスト削減と見える化を実現するweb購買管理システム(導入費用無料)

https://procurement.monotaro.com/

プロダクトマネージャーとして大企業向けビジネスだからこそできる経験を教えてください。
先ほども言いましたが、少人数のチームという特徴があり、MonotaRO.comほど分業していません。そのため、とある分野に絞られることなく、改善のポテンシャルがある課題を広く扱うことができます。また、営業とカスタマーサポートが近い存在で、ユーザヒアリングや要望のピックアップなど、とても協力しやすい体制になっているのもPdMにとって追い風です。

PdMとして成果を出すために、顧客が求めている状態とのギャップが起きているところをまず、見つける必要があります。私はMonotaRO.comを担当していたときのノウハウを活かして、見つけようとしていますが、初めての取り組みが多くて正直に言えば毎日なんらかの新しい発見がずっと続いています。大企業ビジネスのPdM体制は立ち上がって間もない背景があるからですが、とにかく目の前に未開拓のポテンシャルを常に見つめているような心境です。

【組織で大切にしている考え方・今後の方向性について】

仕事を進める上で大切にしている考え方についても教えてください。
チームの優先順位を決めるときは、どのような情報を参考に、なにを優先して決めますか?
大きく分けると、社内から始まる案件と、顧客の要望がきっかけの案件に分かれると思います。社内で企画したものは、データ分析から分かったことが中心になる企画や、MonotaRO.comで実績がよかった改善をアレンジして大企業のユーザに展開するような案件があります。また、ユーザの行動分析からUXが不十分な課題があれば、実装案を考えてヒアリングで確認するようにしています。

要望の話になると、VoC(Voice of Customer)から分かったニーズが毎週共有される場があります。バックログにまとめて、定期的に整理して対応する案件を選ぶようにしていますが、情報が足りないと思ったときには複雑なことを考える必要があります。

よくある話だと思いますが、お客様が要望を出すのは、解決策の一案として検討できますが、本当に解決しようとしている課題や、その課題が生まれる背景まで理解していないと、短期目線になってしまいがちです。特にリソースをたくさん使うような案件候補の場合、背景をできるだけ確認するようにしていますが、それをするのに営業とカスタマーサポートがお客様から頂いた声やご意見を収集することもあります。当然ながら、それぞれのチームの観点が若干違いますので、違う意見が出てくることもよくあります。しかし、顧客理解という意味では欠かせない情報ですので、基本的に周囲からのインプットを歓迎するようにしています。

※VoC:営業やコンタクトセンターメンバーが実際のお客様から頂いた声をストックしておくもの

周囲から意見がたくさん出ると逆に決めにくいこともありませんか?
私の経験を振り返ってみると「だれが決めるか」明確じゃなかった状態では、たしかにそうなりがちでした。
ただ、本来PdMにモノタロウが期待しているのは「良い意思決定をすること」ですので、PdMのデフォルトとしては「明らかに他の人が決めることじゃなければ、私がすべて決める」という前提で考えた方がシンプルで、実は意見をくれる人からも理解されやすいです。

今はプロジェクトを始める際には、最初から役割と体制を明確にしますので、初めて関わった関係者であったとしても「このプロジェクトに関わる意思決定は、PdMとして私がしますので」というのを事前に伝えるようにしています。そうすれば、その後に出る疑問や意見がPdMの方に集まり、意思決定に必要な材料を集めやすくなります。

また、PdMの仕事をするにあたっては、意見を反映することを目的に据えてしまうことや、意見を言ってくれた人の機嫌を損ねないように意思決定をするようなものであってはならない、という点を大切にしています。たとえば、モノタロウ社員の行動規範には「傾聴」というのがあって、会社全体を見ても非常に傾聴に長けている組織です。一方、丁寧に相手のことばを聞くことと、本来の仕事である「良い意思決定をする」のは別物で、混同してはいけないことを常に意識するようにしたいです。

これを極論として捉えたら、すごく独りよがりなスタイルに思われるかもしれませんが、それもまた違うと思っています。ポイントはやっぱり「良い」意思決定の条件をどう考えるかです。大企業のチームでは、営業やエンジニア・データサイエンティストなど様々な部門のメンバーが参加しており情報収集や意見を共有して、深掘りできる場としての打合せが毎日のように行われています。議論のミーティングでは、PdMが風通しの良い「傾聴」を経て、その後の決める仕事を支える材料をもらおうとしているわけです。

エンタープライズ プロダクトグループの発足からまだ数カ月ですが、これから目指したい姿について教えてください。
大企業の顧客にはユニークなニーズがあるので、もっと独自の機能や仕組みを開発する必要があります。商品の探しやすさ、分かりやすさ、買いやすさを向上させる使命をもっていますので、深い顧客理解とセットにして、より解像度の高いプロダクト開発にしていくのがしばらく続くテーマだと思っています。

上記の為に、今後どんな方にご入社頂きたいですか?
顧客理解を踏まえて、新しい変更をサービスに導入して、結果を分析して改善策を練るというサイクルに注力したい人は向いているかもしれないし、仮説検証を繰り返して成果を出したいモチベーションの強い人にとっても手応えを感じれるのが大企業のPdMだと思っています。モノタロウの事業全体がデータを重視して、そのデータを駆使した改善事例がたくさんあるので、完全な手探り状態にはあまりならず、他チームの実績からなんらかのヒントをもらえることもよくあります。

PdMのやり方は人それぞれですが、共通点としては好奇心があり、周りの人と探索しながら売上拡大につながるプロジェクトを達成まで持っていくスキルがあれば、非常に相性の良い仕事だと思います。プロダクトづくりに必要なスキルは、エンタープライズプロダクトグループに揃っているので、一緒に挑戦したいという気持ちの強い人に入社していただき、新たな価値をエンタープライズ規模の顧客に届けられるようになることが私たちのチームがこれから目指したい方向です。

ケビンさんありがとうございました!