過疎

とある集落が滅びつつあるというホラーの話でもしようか。(※ノットあの世関係)

私の祖母の家は、超絶過疎化が進んでいる南の方にあります。
山の中にある集落なのですが、祖母と、あと数件の家に住人が住んでいるだけで、皆様かなりの高齢。
空き家が目立ってきているけど嫁に来てくれる若い女性がおらず、多分20年後くらいには消えてるんじゃないかなーって気がする、いわゆる限界集落です。

祖母の家は分家で、娘が嫁に出ているだけ。なので祖母の家を守るのは、多分祖母が最後になる(分家なので何も問題はない)、はず。あ、祖父は私が生まれる前に鬼籍に入っております。
分家っていうからには祖母の家の他に近所にはもちろん本家があり、本家が続けば墓と仏壇を守る一族はいるわけだから、分家は別に滅んだって問題ない…っていうのが九州の南の田舎の方の認識ではあるんですが。

本家が、先に、倒れました。

その理由っていうのを最近「あんたもおとなになったことだし、もういいでしょう」ってノリで母が教えてくれたんですが。

本家の姑の嫁いびりがね、そりゃーもうすさまじかったらしい。

どんくらいすさまじいかというと、嫁に一切金を渡さず、嫁が産んだ孫が病院にかかる金さえ支払わず、嫁さんは消費者金融で借金をする羽目になり、その辺が決定打となって、お嫁さんは色々病んで、子供を置いて出て行ったらしい。

分家の孫であるところの私らには普通にお年玉とかお菓子もくれる、ごくごく普通の明るいおばちゃんだったのですが。成人してから母が話してくれたあれやこれやのエピソードが、某匿名掲示板に書かれる数々の嫁いびりエピソードそのまんまで、マジでそんな世界があったんかいな、こんな身近に…ってのけぞりましたよね。ひえええええ。

で、今本家がどうなっているかというと、上記の通り。
倒れたといっても、一応嫁に逃げられた息子とさらにその息子は残っているのですが、なにしろこの男ども、家事が一切できない。田舎では割りと重要なご近所付き合いも、この姑が鬼籍に入っちゃったら、全然できなくなっちゃって、分家の皆様とも縁が切れちゃった。

家の手入れも全くされず、人間関係もぐっちゃぐちゃ。

若い女性?全員、その集落からは逃げちゃいました。まあ、自分の母親世代がそんな仕打ちをうける地域に、わざわざ残ろうと思う女の子は居ませんわな。
看護師系の手に職つけた女性の中には残ってる人もいるようですが、独身貫いてて結婚はしてません。

おばちゃんがいたころは綺麗だった本家は、今はもう見る影もなく荒れ放題。
本家っていっても小規模な農家の本家ですし、分家筋の人間もどうにかしなきゃとは思わないようで。
嫁に行った本家の娘がたまに帰ってきては、仏壇だけは手入れをしている、という状態なんだそうです。なお、本家の息子さんはうちの祖母も怒らせたので、孫である私らも本家の仏壇に手を合わせることはなくなりました。

その話を聞いて、祖母の田舎に行った時に、私は「うわあ…本人が死んでから、嫁いびりの因果が息子に帰ってきてるよ…」と思いながら、荒れ放題になってる本家を見上げたのでした。
家を守るつもりで気に入らない嫁を追い出した本家のおばちゃんは、今頃天国で何を思いながら、誰も寄り付かなくなって雑草ぼうぼうになったあの家を眺めてるんでしょうかねぇ…。

なお、母は「本家のおばちゃんの嫁いびり伝説」を娘に話した時に、「まあ、一番悪いのは、自分の嫁がいじめられてる時に、嫁を守りもしなかった本家跡取り息子だからね。彼の自業自得」と軽く肩をすくめただけで終わらせたので、我が母ながらこの人もこわいなーと思ったのでした。まる。


※2016年7月31日にショートノートに公開した記事です。

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