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CANYON Aeroad CF SLX 8 Di2 2023年版 Vol.2 走行・車体性能編

さて長い前置きがあったので、実際の車体のレビューとは言わなくても走行に関するアレコレについて忘れないうちに書いていこう。

走行フィーリング

私のホームコースというほどは走り込んではいないのだが、広島県広島市在住なので日本最長サイクリングコースである中央森林公園の健脚コースがド定番のコースである。

もちろん 12.3km もあるコースなので1日に5周も10週も走ったりはしない。(そんな元気はない)
そこで ANCHOR と走り比べてみたのだが、下りながらのカーブを3つも抜けると「なるほどこれがエアロ効果か」という差を嫌でも感じることになった。
とにかく腰から下の、前から受ける空気抵抗が薄まっているのだ。
ANCHOR のような、今ではトラディショナルと言っても良い一昔前のフレームだと早くは確かに走れるものの、空走中に感じる空気抵抗が無いとはいわない、というレベルだった。しかしそれも比べて初めて分かる。
ロードバイクに乗りたてで1本しかフレームにまたがったことがない、という人は軽さが生み出す速度に感動すると思うのだが、エアロフレームはそれを思い出させ、上書きする。
それ以上にタイヤの接地感やホイールの重量から生まれる慣性モーメントのほうがより体感としてはわかりやすい。
しかし Aeroad だと接地感はそのままに、むしろそれすら上がっている感じもあるなかで、またがっている機材が明らかに空気をいなしているフィーリングがある。切り裂いているとか押しのけているとかでは無い。空気を受け流している、という感じで抵抗を感じはするが抵抗感を薄めてくれているのだ。

エアロ効果、おそるべしと走り出して10分もしないうちに思った。
足元から勝手に下り坂で加速していくのである。
フレームとホイールの DT Swiss ARC 1400 Dicut 、さらに GP5000S のタイヤの組み合わせは CANYON の人間が色々な機材から選んで組み合わせたであろう、センスの良さのようなまとまり感があった。
とにかくエアロロードという機材の尖ったイメージに反して、乗り心地は堅すぎない(硬く無いとは言わない)し、踏んで脚にダメージが即来るわけでもないし、3時間以上の長時間乗車でも体への負担はレースジオメトリであること差し引いたら全然良い方なので驚いた。

なので STRAVA で2015年ごろに記録していた各所のセグメントのパーソナルベストをロードバイク復帰半年に満たぬ体であっても Aeroad でことごとく更新するに至り、これはこれは大したものであるな、と乗るたびに思っていった。

なにより山に登った後のダウンヒルがアホみたいに楽ちんなのである。
リムブレーキは握力=制動力みたいなところがあり、激坂を下る時は下ハンもってないと、とてもでは無いがおりるのがしんどい、というのが ANCHOR でのリムブレーキだったわけだが、ディスクブレーキになってからというもの上ハンのブラケットもってて全然鼻歌交じりで下りられる。
また制動力を生み出す位置が回転体(ホイール)の端から軸に近くになったからなのか、制動中の車体のブレみたいなものがほぼほぼ無い。
特に路面の荒れた斜度のきつい下り坂などではテキメンに効いてくる。

ではエアロロードとして他社の製品との比較はどうなのか、というと同型の金型を使う CFR の数値を参考にする限り、世界最高水準のエアロ性能のバイクではあるのだが、乗り心地はセカンドグレードゆえか、ガッチガチではなく思ったよりマイルドなレベルだった。エンデュランス性能は、おそらく万能型に近しい。そうでなければパリ〜ルーべでマチューが石畳に Aeroad で突っ込もうとは考えまい…。
(もっともエアロ系ロードバイクが乗り心地を犠牲にしているのは、少し前の話になっている可能性が高い)


コンポーネント

名前にあるとおり、Di2 である。
グレードはアルテグラ。CANYON のなかで 9 は最上位の Dura-Ace、7 は Shimano 105 になっているらしい。今回は 8 なのでわかりやすくて良い。
なお名前に AXS がついていると上から順番に RED, Force, Rival と SRAM の上の方から割り当てられているようだ。
ロードバイクは、なので MTB やシクロクロスの車体だとコンポは変わってくるが、9 から最上位を割り当てていくのは同じルールのようである。

2015年当時は Di2 など高値の華だなぁ、と鷹揚に考えていた憧れ機材であったが、2023年になって8年分の進化をいっぺんに飛んできた私は最初からとんでもないぞこれは、と乗りながら感じることになる。

第一にクリックで変速できるのが楽。これは電動コンポーネントに乗った人みなすべからく同じことを言うが、そりゃ言うわい、という感じ。
第二に変速のミスが起こらない。ワイヤーと違ってモーターが必ず決められた位置へビシッと動くので変速後にカチャカチャとズレによる音なども無い。なにより経年や気温の変化のコンディション変化にも強い。
第三にワイヤレスになっているのでハンドル周りが軽い。ワイヤーを無理やりルーティングしていないのでブレーキ二本分のケーブルしかないため抵抗感というか、ひっぱり感が薄い。

心配していたバッテリーあがりは、私自身は経験していない。
個人的に携帯電話は80%残量があっても充電してしまうほど、MAXに近い数字を保ちたいタイプなのだが、シフター側がボタン電池が最初は気にしていたものバッテリー残量をサイコンの表示で見る限り1年経っても交換は不要そうだ。
リアのバッテリーも1000kmくらいは大丈夫、と言われているのも確かにそうかもしれないという実感はあるが、一ヶ月に1回くらい 10000mAh のモバイルバッテリーを充電ケーブル繋いで給電していればあがりそうな気配すら0なので、非常に精神衛生的にも良い。

なお、ブレーキのみ 160mm から 140mm へリム側を変更している。
ローター径が小さいと絶対的な制動力が下がるかわりに、コントロール幅が広がるっぽい話を聞いたので試してみるか、とやってみたのだが不都合がないので 160mm に戻す理由も見つからないためそのままになっている。
140mm のリアブレーキは確かに制動力の立ち上がりが弱くなった気はするが、常にブレーキを当ててダウンヒルをするような時にはむしろちょうどいいかな、くらいの感じである。

ヒルクライム性能

重量は完成車として公称7.8kgくらいであった。
ディスクブレーキ搭載モデルのエアロロード、と考えれば納得感はあるというか、そんなもんでしょうねと言う感じ。ANCHORと実は大差がない。
では両者を比較してみてどうなのだ? というとこっちの方が早いことが多い。
ギアはセミコンパクトなのでフロントが 52-36、リアが 30-11 の12速で、ヒルクライムに特化しているわけではない。比較的満遍なく一般ユーザーが使うセッティングで、どっちかというと平坦基調に振ってあるかなという程度であろう。
じゃあ山登る時にエアロ効くんですか? と言われると14km/h以上の速度なら効果が出てくると聞いたことがあり、まあ確かに体感でも STRAVA のセグメントを見る限りはそんな雰囲気はある。
斜度がキツくなってきたりへばってくると 10-12km/h くらいの速度で走ることが多くなるので、そうなってきたら空気抵抗では差がつかないため、大差はなくなる。
私個人でいえば、平均斜度7-8%くらいの坂道が2kmくらいあるようなところで選択点が別れるような気はしている。
おそらく富士ヒルのような斜度と長さになってきたら、どっちかを選べと言われるとAeroadを選ぶかな、と言う気はする。出場したことはないけど。

パワーメーター

実は最近まで気づいていなかったが、初期不良の回路ショートが起こっていた可能性が高かったのがこのパワーメーター。
使えてないことは全然なく、普通に動いてはいた。
カナダの 4iiii 製、PRECISION 3+ である。

さてこの PRECISION 3+ であるが、元々はプラスのない PRECISION 3 がついていたのだが、無印がディスコンになり 3+ が現行製品のようだ。在庫品はまだ流通している可能性はあるが、新規入手はプラスがついた製品になるだろう。
差は何かというと、おそらく Apple の Find My 対応、つまり「探す」のアプリ上からバイクを探せる、ということで位置情報の共有に使ったり盗難時の追跡ができるということで、あったらあったで良い機能だと思う。
機能自体は Disable にできるので、そのほうが電池の持続時間は長い。

公称で800時間と書かれているわけだが、我が家に届いた時から妙だなと思っていたのがこの持続時間で、やたらと切れるのだ。1週間くらい時間が経って乗ろうとしたら電池切れを起こしていたことが数回あった。(毎回ではない)

あとで計算してみると、漏電(ショート)していたと仮定したら電池交換時から800時間くらい経った頃に、確かに電池切れを起こしていることが数度あり、先日校正に関して異常が発生するようになったため CANYON と 4iiii の両者に相談した結果、漏電の疑い強し、ということで交換対応となった。
CANYON Japan とのやり取りの結果、4iiii 側での対応で交換した場合も製品保証期間内であればサポートの範囲に含まれるとのこと。元々出荷時点で違う製品を取り付けたらサポート外と言われても仕方ないな、と思っていたのでこれは嬉しい驚きではあった。

さて肝心のパワーメーターとしてどうなのか、という話ではあるが、私自身は左クランクだけの片足クランク型から入ったので精度や左右差などは最初からあまり気にしたことがないのでガバガバの精神構築になっており、とりあえずサイコンにほぼ正しいであろうパワーが出ればいい、という程度でしか考えていない。

パワーメーター自体の運用については別稿に譲るので、ここではとりあえずシリアスなレーサーとかトレーニーでもない限り、フツーに有用なので5万円だろうがとりあえずつけれるパワメはなんでもつけとけ、と考えている派である。

一応、毎回のるときは最初に校正は入れるようにしているので、運用で困ったことは上記の初期不良にあたった時以外は起きてはいない。
まあ運が悪かった、くらいで考えている。

しまなみ海道にて

レース

いくつかレースに出てみたが、最大の距離を走ったのはつくばの9極の耐9、99kmチャレンジに出たときだろうか。

こちらの動画でいっぱい映してもらっている。
やはりエアロ効果だとおもうが、速度のわりにパワーを節約できている感じはすごくしていた。

また、9月にもしもふさクリテリウムの120分エンデューロにも出場したが、コース半ばにある下り坂での速度が集団の中で自分だけ伸びが違っていたのは、おそらく体重とフレームのエアロの相乗効果だったとは思う。

やはりパワーの最大値や出力時間をそう簡単に伸ばせない中で、己の性能を現状最大化してくれるのはこの自転車なんだろうな、と思っている。
やはりなんやかんや言っても、性能を使い切れないとしても早いものは早いのである。


総評

さて、買ってみて1年近くのってどうだったのか。
値段を忘れたら、もちろん買ってよかった。改造の余地が少ないので、そういうのが好きな人は触りにくいバランスにはなっているのは確かだが、私のように初期セッティングがベストバランス、と自転車でも車でも考えるタイプの人間には至れり尽くせりの高級車であった。
ドイツっぽさはやっぱりシンプルすぎるくらいのデザインとカラーリングでイタ車にありがちな華やかさはゼロと言っていいほどない。そこは期待するところではない。

はっきりと、ゆるポタには向いていない。とにかく早く走る、という自転車なのでストップ&ゴーは向かない。
ロングライドはできるが、元々レースバイクとして生まれてきた出自があるのでのんびり走ろうとはあまり考えない方がいい。なにせ早く走らせた方が気持ちがいいからだ。
バイクが乗り手の背中を押してくるのではなく、もっと早く走ろうよといってくるような自転車であると考えてもらえばいいと思う。
クリテリウムは向いていると思うが、初期装備のままだとバイクの方が補助してくれるレベルは水準が結構高いところにあると思うので、結構な脚力がインターバル毎に必要になるだろう。PWRでいえば10秒で8倍くらいは出せるといい。
私の脚力ではフレームをしならせながら使うようなレベルにない剛性になっている。

そしてハンドリングは見た目よりずっと素直ではあるものの、グネグネと低速で曲がろうとは思わない。これはおそらくタイヤ(GP5000S TLR)の性能によるところも大きいと思われる。妙なオーバーステアもアンダーステアも出ないので、いたってニュートラルに、狙ったラインを走ることができる。
なお、サドルについては個人差がはっきりと出るので唯一変えたほうがいい可能性が高い。

初心者向けロードバイクを卒業して2台目にエアロロードに乗りたい、という人には推奨できるが、早く走りたいとかレース嗜好が少しもないなら、乗り心地を重視する別のバイクにすることをお勧めしておく。

何にしてもレースは興味がある、という人には非常におススメ。ただし信頼できるショップが受け入れてくれるなら、という厳しい条件も付くこともお忘れなく。(もしくはセルフサービスで)

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