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18「詩」扉

その瞬間にだけ開いてくれる扉がある
扉はその瞬間にだけ見え普段は気づくこともない

時空に隙間ができる
目の前に扉があり
吸い込まれるように
扉の中にいる

今の私より若い母が
台所で菜葉を刻んでいる
味噌汁の匂いがしてくる
私は母の背中からそれを見ている
母の頸を触る
柔らかな頸から
貧しさのなかでふつうの生活を守ってきた
母の思いが伝わってくる

私は母の背中で眠りに落ちる

目覚めると
また先ほどの見慣れた景色の中に
私はいる


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