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東京で働くことに憧れなんてなくて、むしろ嫌だなと思っている

都内まで最寄り駅から一本
かつ1時間もかからないで着いてしまう。

それなのに私は東京というものを全くと言っていいほど知らない。

吹奏楽部時代、楽器のメンテナンスに渋谷や御茶ノ水に通っていた時期もあったし、高校生の時にはキラキラしたパンケーキに憧れて表参道に行ったりしたこともあるけれど、それ以上は無い。

その時から、東京に足を踏み入れる度に感じるのは空の狭さの息苦しさ。 “他人からの見え方”を意識している人々の忙しさ。狭くて苦しい、なんでも適当に詰め込まれたような、そんな景色に埋もれるのが嫌だった。



初めて彼の新しいお家に行って引越しを手伝った。今はその帰り道。

東京のドライブも、たくさんしてもらった。「あの時ここ行ったよね」「今度はここも行きたいな」と話しながら景色は通り過ぎる。


「俺の職場ここだよ。このビル」

そう、指さした。なかなか高いビル。いや私も高いビルに入っているから似たようなものだけど。
広島から、横浜に住んでみたい夢を叶えて、東京勤務の夢を叶えて。東京も大手企業でThe東京の場所に、すでにインターンをはじめて働いている。
そんな彼を遠くに感じた。

学生と社会人の恋愛は違うと聞く。
学生は時間はあってもお金はなく、社会人はお金はあるが時間がない。

私と彼は同じ都内勤務だけどエリアは違う。平日に会うのは難しいんだろうなって距離。今まで週2~3くらい会うこともあったけど、きっと春からは土日に会えるかどうか。彼はインターンに行っていて慣れていてもきっと私がダメ。小学校から中学校、中学校から高校と大きく変わる春は、学校に行くだけでいっぱいいっぱいだった。

だからきっと、今と比べたら全然会えなくなる。
今なら「会いたい」衝動に駆られれば会いに行ってしまうこともあったけど、その気力すら無くなってしまうような気がする。

それから今日見た新居。明らかに一人暮らしには大きい。いや、一人暮らしサイズかもしれないけれど2人で暮らせるような大きさ。元々ソファベッドだったけれど、今回新しく購入していた布団はセミダブルだった。言わなくても感じる「一緒に暮らしたい」ってこと。まあ言われているが。本当に、なんで一緒に暮らさないんだろうね。私の不安が大きすぎるからなんだけど。


私も東京で働くの、か。

卒論も終わって、そしてもう3月を迎えた。
会社からの連絡もくる。

そうやって少しずつ実感を持っていく。
でも、そこまでして東京で働きたいわけじゃ無いんだよなと思う。わずか1ヶ月半の就活だったから、余計に不安が大きいのかもしれない。これで良かったのかなと、ふとしたときに何度も思う。

未だイルミネーションされている道路横の木。そこに沿うようにたくさんの車やバスが交差点に並ぶ。横断歩道を渡る人々。信号が変わって車が動き出す。



「綺麗」

なんとなく外を眺めて思わず口にした。
東京の夜景はきれいだよ。でも、心から、初めて思ったかもしれない。人もものも、何もかもがある東京で働いて、生きている人がこんなにたくさんいるんだと思った。なにを求めて、みんな東京に集まるのだろうか。

そんな何もかもがある東京で私は春から働くんだ。「とりあえず働いてみる」と就職した会社で私はなにかを見つけられるのだろうか。キャリアでも人物像でも、なんでもいい。今の私に足りないもの、必要なものが手に入るのだろうか。


桜が咲いて、春になったら、桜がすぐに散るように私の不安も無くなって、思い出せないほど忙しくなるのかな。それとも肥大化してしまうのだろうか。

何も始まってないのに不安が多い。
いや、はじまってないから不安なのかな。





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