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学習

僕の名前は小林茶々丸。
おじいちゃんとおばあちゃんに飼われている。
2人は凄く優しくて、僕がいたずらをしても全く怒らず、いつもニコニコしている。

僕は人が大好きで、人に会うと嬉しくて、沢山お話ししてしまう。
でも、皆、僕がお話しすると嫌な顔をするんだ。
何でだろう。

ゴールデンレトリバー君やコーギー君、チワワちゃんやトイプードルちゃんは、皆から好かれ、可愛がられているのに。
寂しいな。

僕がポメラニアンだから、いけないのかな。
そう言えば、田中さん家のポメラニアンちゃんも、(僕程ではないが)皆から避けられている。

ポメラニアンは皆から嫌われる運命なのかな。
家族以外の人から嫌われたままで、一生を終えるなんて、寂し過ぎる。

よし!
他のワンちゃんの真似をしてみよう。
そうすれば、ポメラニアンの僕も皆に可愛がられるかもしれない。

他のワンちゃんをじっくり観察して、分かった事が有る。
人に会った時は
・自分からは話しかけず、つぶらな瞳でじっと見つめる
・どんなに嬉しくても、はしゃぎ回らず、大人しく控え目に佇む
・いたずらはしない

明日から、早速実行しよう。
田中さん家のポメラニアンちゃんにも、教えてあげなくちゃ!

*****

「ってな感じに学習しないのかね、小林さん家の茶々丸は。」
「しないだろ。
 そんなポメラニアンがいたら、驚くよ。
 そもそも、ポメラニアンは吠える犬種だし。」

「だってさー、毎日毎日、朝から晩までずーっと吠えているよ!
 疲れないのかね。」
「吠える事が仕事みたいなもんだからね。」

「小林さん達、茶々丸を溺愛しているよね。
 茶々丸がどんなに吠えても、飛び跳ねても、走り回っても、ニコニコしているし。
 家でも全く叱らず、甘やかしているんだろうな…。」
「まぁ、ポメラニアンも最初にきちんと躾をすれば、吠えなくなるらしいからね。
 でもさ、茶々丸の鳴き声が聞こえなくなったら、寂しくない?
 もし、茶々丸がいなくなったりしたら、鳴き声が恋しくなるよ、きっと。

「そんなもんかねー。」
「そうだよ。
 俺、茶々丸の事、好きになっちゃったもん。
 本能のままに生きています感、半端無いじゃん?
 最初はウザかったけれど、可愛く見えて来た。」

小林さん家の茶々丸は、今日も元気に吠えている。


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