見出し画像

【IDと教員研修20】ジャスパーって何?教材設計7原則②

前回の記事からの続き,ジャスパー教材をもとに提案された「教材設計7原則」について考えていきましょう.

原則1 ビデオ提示(Video-based format)

複雑な内容を映像化することで伝わりやすくする工夫です.
状況説明,進行を文字や表で表すより,映像として示すことで理解を促します.ジャスパー教材に出てくる問題には,数字がたくさん登場します.
文章提示だと最初から数字に固執してしまいがちになる」ということが指摘されています.

原則2 物語形式(Narrative with realistic problems)

解説型の講義形式ではなく,起承転結をもとにした物語で設計する.
ジャスパー物語の第1話でも,「時間に間に合うのか」という大きな問題が文脈となり,どうやったら間に合う要素が確かめられるのかを考え続ける仕組みができます.知識や技能の,文脈性や有用性の実感が高くなると考えられます.

原則3 生成的学習(Generative format)

ビデオは,問題編と解決編に分かれており,問題解決を自分なりに行ってから解決編を視聴することとなります.
学習の文脈に能動的な参加を促したり,学習者自身で結末をみるタイミングを決めさせたりすることつながります.

原則4 情報埋め込み設計(Embedded data design)

物語の中に,問題解決に関するデータが散りばめられていることで,まるで推理小説を解いていくように学習を進めていくことができるでしょう.
有用な情報も,不要な情報も混じっているため,論理的な判断力を働かせる必要性を高めることが考えられます.

問題解決に必要な情報を読み解いていくといえば,小学生の大好きなある本を思い浮かべます.原ゆたかさん作の,「かいけつゾロリ」シリーズです.
物語を進めるためには,本の中にある様々な情報をつなぎ合わせて解決する必要があります.子供たちが名探偵になりきって読む姿が印象的な本です.

原則5 複雑な問題(Problem complexity)

ジャスパー教材では,1話の中に最低14つの段階をクリアする必然性を入れています.1問1答では進めないということは,現実世界での問題解決に近づけるための工夫といえそうです.

原則6 類似冒険のペア化(Pairs of related adventures)

例えば,ジャスパー教材は,「旅行計画」を題材にした物語が6話中2話あります.「あ,このお話でも解決方法を使えそうだ」という気づきが自信を高めます.
似た場面で取り組むことで,「この方法は応用が可能だ」「この方法は場面固有だから使えなさそうだ」という判断力を付けることができそうです.

原則7 教科間の連結(Links across the curriculum)

ジャスパーの冒険物語の中には,数学的な問題と関連して,自然な文脈で他教科の内容が扱われます.「たとえば第2話『ブーン草地でのレスキュー』では、救助連絡に使った無線機から電話と無線機の違いを学習したり、助けられた鷹から、絶滅動物や保護運動などに展開している」というように,より現実的で,発展的な問題が設定されます.

7つの原則で,教材設計を考えてみたり,あるいは既存の教材の改善につなげたりすることが考えられます.
ビデオ教材を作成することはかなりコストも掛かるかもしれませんが,例えば,教員がこのような教材を作成すること自体を研修にすることが可能かもしれません.

GIGAスクール時代に,教員にも1人1台の情報端末が配付されている自治体が当たり前になっています.ジャスパー教材であれば,1話は大体15分程度です.1話だけでも,プロジェクト型の学習として動画作成を研修に取り入れていくと,各教科等の指導の幅を広げる機会になりそうです.

これまで複数回,教材設計に関する内容について教員研修とのつながりを考えてきました.
次回からは,教材をどのように指導していくのかについて,4回に分けて,学習目標についての指導法略を考えていきましょう.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?