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Alphaって知ってた?

先日、"Everything Everywhere All At Once"という映画を見てきた。彼がスウェーデンで見て大絶賛の作品。アカデミー賞も受賞した作品だけど日本ではそこまでヒットしなかったのかな?

個人的な感想としては、とっっっっっっってもよかった。私はすごく好きだし今の社会でのトピックをよく取り込んでいる作品。アジア人女性が主演でアカデミー賞を取るという初の快挙。素晴らしい。

ただ、映画を見た後に何となくレビューを見ていたらびっくり。星1の人と星5の人がくっきり二分。こんなに評価が分かれるものなのかと衝撃を受けた。その後映画について考察している人の動画を見たときに腑に落ちたので忘れないように書いておこうと思う。

まずざっくりとしたストーリー。主人公のエブリンは夫ウェイモンドと駆け落ちをし、アメリカでコインランドリーを経営している。娘のジョイは年頃の女の子で、少しぽっちゃりしており彼女がいる。ある日旧正月の準備と税金の処理で大忙しの中、税務署へ行く。そのエレベータの中で別次元にいるウェイモンドと出会い世界を救うためのマルチバースの物語が始まる。
ジョイは別次元では脅威となる存在でいわば敵のようなもの。エブリンは別次元の自分の能力を獲得しながらさまざまな次元で戦いをする。ウェイモンドは別次元ではアルファ・ウェイモンドとしてカンフーなどの戦闘能力が非常に高い。

さて、最後までは書かないが、私が注目したのはウェイモンドだった。彼はとても温厚ないわば優しい男性として描かれている。他人に嫌な思いをさせないように、怒らせないように気を配れる人。悪い言い方をすればなよっちい、といったところかな。しかし、アルファ・ウェイモンドとなるとジャッキーチェンみたいな戦いに最強の男になる。戦いだけではなく、性格もかなりステレオタイプな男らしさをもった人物になるのだ。

私がこの映画を見たときにはあまり気にしていなかった、「アルファ」という言葉。これ、英語だと

Alpha
4. (modifier)denoting the dominant person or animal in a group
"the alpha male"

https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/alpha

動物の群れなどの中で一番力がある者、リーダーや群れを率いる者のことを指す。多分スーパーヒーローとかはAlphaでビッグバンセオリーの男の子たちは自分のことをAlphaじゃないと皮肉っている。

となると、Alphaウェイモンドはマスキュリニティ、つまり社会でよく出てくる男性性の強さみたいなものの特徴で、普通のウェイモンドはやはり弱い頼りにならない男の人、みたいなキャラクターをよく示していることになる。

しかしストーリーが進んでいくと、Alphaウェイモンドは負けて死んでしまう。あれだけ強くて戦いで大活躍だったAlphaウェイモンドが、だ。普通の王道ストーリーだと、彼が大活躍して全ての悪を倒し平和が訪れる、というようなものだろう。

普通のウェイモンドは戦うことなど全くできず、エブリンと共に逃げているだけだ。でも死ぬことはない。
局面では、彼はエブリンを助けるため、このようなことを言う。(セリフをしっかり覚えていないのでざっくりとした要約だが)
「Be kindー優しくなろうよ。何が起こっているかわからない、混乱してわけがわからなくなっている時ほど優しくなろう。これが僕の戦い方だ」

私はこの言葉にとても胸を打たれた。多分そこまでのストーリーを見てきて色々なことが起こり、みんなが戦いまくっているのを見てからのこのセリフ。そしてこの言葉が現代を生きる私たちにも突き刺さるなと思ったのだ。

現代社会、本当に色々なことが起きている。ウクライナ・ロシアの戦争、イランでの革命、格差の拡大、環境問題からジェンダー平等、LGBTQの理解などなど、日々の生活で色々な問題にぶち当たり、私たちの頭は混乱し何が正しいのかわからず不安になることもしばしばある。少なくとも私はそうだし、生きづらさを感じている。
けれどもそこで、いわゆる「マスキュリニティ」をかかげた人が力でねじ伏せて全てを解決したり、どこかの国、もしくは特定の誰かが決めた方法に従うことによって解決する、というのはありえないと思っている。必ずどこかに歪みができたり犠牲になる人が出てきたりするだろう。
しかし今のこの社会、特に競争社会ではやはりどこかの誰かが「リーダーシップ」という言葉を使ったりしながら物事をガツガツ進めていったりリードしていくことが求められる。そしてしばしば衝突がありそれに勝たなければならない、というような変なプレッシャーがあったりもする。

しかし、結局のところは『Be kindー優しくなろう』がキーになると思う。みんなが優しく相手のことを思いやることで、相手に対してではなく問題に対して打ち勝ったり解決することができるのではないか?色々なトラブルや問題があるけれども。他人のことを思いやって、優しくなってそれらに向き合っていく、それも一つの「戦い方」なのではないか、と感じた。日常の中で些細なことでも「戦い」がたくさんある中で私たちは自分たちの力を育むことにより打ち勝っていこうとする姿勢が割と普通になってきている中で、「優しくなろう」というのは頭ではわかっていて当たり前だと思いながらも難しいんじゃないかなと感じる。

私個人は1人の人間としてのあり方としてウェイモンドみたいになりたいと思ったし、何かが起こっても「優しくなる」ということをできる限り忘れないようにしたいと思った。誰にでも優しく思いやりを持って接していく、小学校でも習うようなことだけれど忘れずに心に留めて生活していきたいなと思った。

「Alpha」がマスキュリニティを示す言葉と知ってより2つのバージョンのウェイモンドを比較しやすくなり、自分が抱いた感想の整理もつきやすくなったので備忘録として。



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