見出し画像

【木のこと】杉(スギ)

こんにちは!
私は、木に関する仕事をしています。
木をそのまま販売したり、家具にしたりしています。
木というのは、日本においてはとてもとても大切な役割を担ってきた素材です。
特に、建築において、杉は欠かせないものです。
近年は外材が多く使われるようになってしまいましたが、改めて杉の良さを確かめたい。
そう常々思っていまして、自分の勉強のためにも、これから不定期で木についてまとめていきたいと思います。
よろしくお願いします!

情報


日本での呼び名  杉(スギ)
学名       Cryptomeria japonica
英語での呼び名  Japanese cedar

実は、杉は日本の固有種なんです。

歴史


日本において、杉は古くからその美しい木肌や耐久性から愛されてきました。 なんと、歴史の授業で習う『日本書紀』にも、杉は登場します。

奈良時代につくられた日本書紀において「スギ・クスノキは舟に、ヒノキは宮殿に、マキは棺に使いなさい」と記述されていることをご存じでしょうか。
これらの樹種は、形質に優れ加工しやすいことなどから、私たちの生活において古くより利用されてきました。
日本では、戦時中や戦後の過度な伐採により荒廃した山地の復旧や高度経済成長期における木材需要の増大など、各時代の社会・経済的要請に応えるため、木材として好まれ、成長が早く、日本の自然環境に広く適応できるスギ・ヒノキの造林を推進してきました。
これらの人工林は木材資源であると同時に、国土の保全や地球温暖化の防止、水源のかん養等の多様な公益的機能を発揮しています。

https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/data.html 

上記の理由から、杉は日本に広く分布しています。

現在、日本の国土面積(3,779万ヘクタール)の約7割を森林面積(2,505万ヘクタール)が占めており、そのうち、人工林面積は1,020万ヘクタールで、森林面積全体の約4割です。
日本の人工林面積のうち、スギ・ヒノキ林が約7割を占めています。

https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/data.html  林野庁

これだけたくさんある杉ですが、高度成長期において、安価で安定的に手に入る輸入材に頼るようになり、国産材はあまり使われなくなってしまいました。
『つかいどき』の杉がたくさんあるにも関わらず使われず、放置されている森が非常に多くあります。

現在、戦後に植えられたスギ・ヒノキが成長し、木材として利用に適した時期を迎えています。
これらの人工林の伐採を進め、伐採後の再造林では花粉の少ない苗木などに植え替える取組を積極的に進めています。

https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/data.html  林野庁

特徴


杉の木材としての特徴をご紹介します。

  1. 美しい木目: 木目が美しく、模様は緻密で均一。美術工芸品や建築材料として価値があります。

  2. 軽量で、加工しやすい: 杉は比較的軽く、柔らかいため、加工が容易。家具や細工物などの製作に向いています。

  3. 耐久性: 耐久性があり、腐朽しにくい性質があります。このため、屋外や建築構造などにも広く使用されます。

  4. 抗菌・防虫効果: 抗菌・防虫効果があるとされています。この特性から、食器や床材、建築材料として使われ、特に伝統的な建物や寺社仏閣で重宝されています。

  5. 湿気に強い: 杉は湿気に対しても強く、むらなく乾燥しやすい性質があります。建材として優れています。

用途


杉の主な用途には、建築材料としてのほか、仏像や神社仏閣の彫刻、家具などがあります。
また、杉の抗菌・防虫効果も評価され、古来から文化財や伝統建築に利用されています。

  1. 建築材料: 杉は木目が美しく、加工しやすく、かつ耐久性があるため、建築材料として広く利用されています。家屋の構造材、床材、天井材などに使われます。

  2. 仏像・神社仏閣の建材: 杉の木肌が美しく、伝統的な彫刻に向いているため、仏像や神社仏閣の建築材として頻繁に使用されています。

  3. 家具: 杉は軽くて加工しやすいため、家具の製作にも適しています。特に、和風の家具や庭園の家具として利用されます。

  4. 細工物・工芸品: 杉は細かい加工にも適しており、伝統的な細工物や工芸品、漆器などにも利用されています。

  5. 抗菌・防虫材料: 杉には抗菌・防虫の効果があるとされ、これを活かして食器や箸、床材などにも使用されます。

これらの特性から、杉は日本の伝統文化や建築において重要な素材となっています。

産地


日本にはいくつか有名な杉の産地があります。
その中でも代表的な産地を紹介します。
下に挙げた以外にも、日本にはたくさんの杉の産地があります。

  1. 秋田県 秋田杉(東北):秋田は杉(スギ)の一大産地として有名であり、「秋田杉」の名称でも親しまれています。
    植林によって育てられた「秋田杉」と、自然環境のなかで育った「天然秋田杉」があり、特に天然秋田杉は木目が細かく美しいことから高値で取引されています。

  2. 東京都 多摩杉 (関東):意外なことに東京都も杉の産地として知られており、多摩地域で生産されたものは「多摩杉」とよばれています。
    古くは江戸のまちづくりにも使われた歴史があり、現在においても公共施設や商業施設、交通機関、住宅まで幅広く活用されています。

  3. 静岡県 天竜杉(東海):静岡県浜松市の天竜区とよばれる地域で生産された杉(スギ)材を「天竜杉」とよびます。
    傾斜があり日当たりが良好で、温暖な気候でもあることから成長が早く、曲がりの少ない真っ直ぐに伸びたスギ材ができます。

  4. 奈良県 吉野杉(近畿):奈良県にある吉野林業地帯とよばれる地域で生産された杉(スギ)材を「吉野杉」とよびます。
    室町時代から長年にわたって受け継がれてきた造林技術によって、ゆっくりとした成長をさせるのが吉野杉の特徴。木目がきめ細かく、まっすぐに伸びた耐久性の高いスギ(杉)材が完成します。

  5. 宮崎県 飫肥杉(九州):宮崎県日南市一帯で生産された杉(スギ)材を「飫肥杉(おびすぎ)」とよびます。
    飫肥杉には油分の含有量が多いことから耐水性が高く、木造船の原料として使用されてきた歴史があります。
    その後、1900年代半ばになると造船の需要が低下したことから、現在に至るまで建材用に多く用いられるようになりました。

花粉症


杉が抱える課題の一つとして、『花粉症』があります。
もはや国民病ともいえる花粉症。
花粉症の主な原因となるのは杉、桧の花粉です。
かといって、杉や桧をすべて伐採するわけにはいかない、ということで、花粉の少ない苗木の開発が進んでいます。

国立研究開発法人 森林研究・整備機構(以下、「森林研究・整備機構」といいます。)では、都道府県と連携を図りながら、精英樹(成長や通直性、病虫害に対する抵抗性などの形質に優れた木として選ばれたもの)について、雄花の着生の有無や多少の調査・選定等を行い、花粉の少ない品種の開発に取り組んでいます。平成8年度から令和3年度末までに、少花粉スギ147品種、少花粉ヒノキ品種55品種を開発しました。

https://shizq.jp/forestswitch/about_cedar/123/

おわりに

日本は7割が森で、その多くは杉と桧です。
木を切る人、運び出す人、加工する人、使う人。
それぞれが工夫して、豊かな森を活かしていくことで、日本の未来に森を残していくことにつながります。
少しでも多くの人が森に興味を持ってくれるように。
ありがとうございました!

参考

林野庁(https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/data.html)
forest switch(https://shizq.jp/forestswitch/about_cedar/123/)

こちらもよろしければご覧ください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?