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ピアニストは暗譜で演奏しなければならないのか

再来月にソロコンサートの機会を頂いた。

のだけれど…

子ども3人がいてしかも3ヶ月後に新たなプログラムで70分ってちょっと胸騒ぎがしたので(話があった月曜は嬉しい反面、間に合わない悪夢をみた)、
今日はピアニストはソロのとき暗譜で演奏しなければならないかということについてお話ししたいと思います。
(練習しろ)

試験やコンクールでは暗譜がほぼスタンダードだし、コンサートでもソロのピアニストは暗譜で弾くのが自然の流れのようになってますよね。

そもそもピアニストが暗譜し始めたのはロマン派以降のことだと言われています。ただし、暗譜を演奏様式として定着させたクララ・シューマンも晩年には暗譜忘れの恐怖から緊張を覚えるようになり「暗譜は若い人の方が向いている」などと言っていたり、同じく暗譜演奏を広めたとされるリストが
晩年演奏活動から遠のいているのは暗譜が怖くなったからもあるのではないか、と言う説もあるそう。

さて、そんな「ピアニストは暗譜で演奏しなければならないのか問題」ですが、そもそも暗譜で演奏することには、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

以下に私に思いつくものを挙げてみます。

まず、暗譜で演奏することで存在するかもしれないメリットには

・目の前に楽譜が置いていない分、視界がクリアになり音楽に集中しやすい
・暗譜で弾いてる〜といった一種の感銘や尊敬の眼差しを得られる(かもしれない)
・パフォーマンスとしてのインパクトが上がる(可能性もある)
・暗譜する過程の中で音楽を深められる

などがあります。

私が重要視しているのは特に最初と最後で、実際、私も生徒さんや学校教育課程の学生さんにも、上記の理由から可能であるならば一度は暗譜してみることをおすすめしています。

逆に暗譜で演奏することで存在するかもしれないデメリットとしては、

・準備にとにかく時間がかかる
・忘れてしまうのではないかという不安がつきまとう
・その不安によって音楽に集中できなくなる恐れもある

などがあります。
あがり症の原因のひとつが暗譜演奏にあることも多いです。

では、コンサートなどで暗譜しない!と決めた場合、どんなメリットデメリットがあるのでしょうか。
まず、「楽譜を置いて」演奏することで存在するかもしれないデメリットとしては

・楽譜を見るという動作が増えることで気が散ってしまうことも
・楽譜は持っていないけど、急に弾きたくなったとき(旅行中、ストピを見つけたときなど)にさっと弾くことが難しい
・プロなら暗譜で演奏しないと、みたいな固定観念が存在する(と考える人もいる)

こんなところでしょうか。

実際、私も先日日本でピアノを見かけたときに、何か弾きたいけど今は暗譜で弾けるレパートリーがないし…ということが度々起こりました。
これは少しもどかしかったりする。

それでも、楽譜を置いて演奏していいとなると、

・楽譜を覚えなくてはいけないというひとつの大きな課題が減る分、別のことに時間を有効に使うことができる
・演奏中に忘れるのではないかという不安がなくなる
・そのことによって、別の部分に注意を払いやすい
・暗譜する、という負担が減ることで(一曲を仕上げるのにかける時間が減ることで)レパートリーが増やしやすい

など、私のように小さな子どもが3人いて練習時間がほとんど取れない場合などに、楽譜ありを選択するメリットは多そうです。

ソロコンサートでも基本的に楽譜ありで演奏するようになったピアニストの友人は、「暗譜で弾けてすごいね」といった記憶への賞賛ではなく、響きや音楽性への賞賛が増えたとのこと。

音の多さだとか記憶力だとか指の動きの速さを褒められるよりも音楽的な深さを感じていただける方が嬉しいと思う人はきっと多いはず。

コンサートのコンセプトが何なのか、そして会場の雰囲気がどうなのかも関係してくるかもしれない。

そして自分は何を伝えたいのか

先日別のピアニストの友人ともこのことを話していて、結局音楽の表現や解釈に説得力があって素晴らしければ、楽譜があっても問題はないのではという話にもなりました。

大事なのは、このオケーションでは何を問われているのか、そして今なぜ自分が暗譜で弾きたいのかもしくは楽譜を置いて弾くことを選択するか、をはっきりと持つことなのかな(決めたらそれを想定した練習、イメージをすることはもちろん大事!)。

私も引き続き自分に問うていきたいです(再来月急遽決まったドイツでのソロコンサート、初めて出す曲や現代曲ばかりで、子どもとの時間を犠牲にしたくもなく、暗譜どうしよう…(心の声))。

暗譜で弾けるレパートリーは温めつつ。

でも結局、使える時間は「暗譜すること」そのものよりも、音楽性や曲への解釈を深めていきたい。特に今は。

そう思うのでした。

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