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マスコミ取材を受ける際の危険性。

 どこの放送局とは敢えて言わないが、その昔(1999)、わたしが某公共放送のある番組から取材を受けたことについては、拙著『自閉女(ジヘジョ)の冒険』のpp.167-170に書いた。

 で、当時、取材を受けた際に思ったのは、
 取材というのは8時間やって、そのうち使われるビデオは数分足らずで、さらに本人のコメントはほんの数秒程度のカタコト。
 つまり、発言また発信の手段としては、極めて非効率なものだということ。

 しかも、本の著者として出演しているにも関わらず、できあがった番組のなかで拙著の本の表紙は映さず、もっぱら、他の外国の自閉症の著者の本の引用ばかりに番組の大半が割かれていた。

 というのもどうやら、番組制作者側の意図では、
“外国では自閉症の人が手記を書いているが、その流れで日本でも手記を書いた自閉症の人がいる”
ということにしたかったらしい。

 でもわたしは外国の手記が日本で紹介される以前から、出版の機会などを伺って、発言の場や書いたものを発表できる場をずっと探していたし、そこら辺については取材を受ける間もかなり時間を割いて説明したはずなのに、なぜか全く番組作りには反映されなかった。
 つまり、番組での説明はハナから間違っている。つまり、虚偽報道。捏造報道。

 取材の方法も欺瞞と嘘と騙しでいっぱいで、私はコミュニケーションがとても苦手だから、質問は事前に教えて欲しいとお願いしたが、それはハナから無視されたし(前掲書参照)、しかもディレクターが耳元で激しく怒鳴る、というオマケつき。

 自閉症の感覚過敏については番組でも取り上げられていたから、Dが無知でやったとは到底思えない。だから明らかに狙ってやったとしか。
 つまり彼らは、自閉症者のパニックシーンを撮りたかったのかも。

 そういう訳で、取材を受けることは危険である。あの人達は素材を取るため(“盗る”と書いたほうがいいかも)なら何でもするから。
 だから、障害当事者(とくに自閉症当事者)はくれぐれも気をつけたほうがいいと思う。

 いちばん良くないのは、私と友達と一緒に写っている写真を勝手に選んだうえで(前掲書参照)、何の画像処理もしないまま番組で放映してしまったことだ。
 これではプライバシーもあったものではない。人権侵害である。

 で、仕上がってきた番組では、送信側がどんどん音声の出力を絞り、聞き取り難くし、番組の最後で通常出力に戻したうえで、
「次回は、ちゃんと自立している人の紹介です」
と司会が言った。
 つまり私が自立していないことをディスっているとしか。

 出演者がディスられる。
 出演するということ、取材を受けるということは、つまり、そゆこと。

 ちなみに当時にあって彼らはひきこもりのことについては、何にも知らなかった
(比較的最近も、その放送局は、ひきこもりではない人を“ひきこもり”として紹介した番組を放映したことは記憶に新しい(下記記事参照))。

 そもそも、拙著の上梓の時点で、番組で紹介でもしてくれたなら、本も売れ、多少は自立に近づいたのではないかと思う。
 実際、私の手記とほぼ同じ時期に書かれたスウェーデンの自閉症の女性の手記は、発表直後から現地のマスコミが積極的に報道したお陰で、現地でベストセラーになって、それが日本にも入ってきた(そしてそれを番組でも取り上げた)のではないか。

 でもそういう訳で彼らは外国の著者は持ち上げる一方、日本の著者は貶める。

 あと、これは補足になるのだけれど、私が出演した番組の後続では、顔も出せない、本名も出せない、声も出せない自閉症当事者が出演していたが、であれば、わざわざその人物を撮影しなくても、その方のコメントというかメッセージのテロップを出せば済んだことだと思う。
 それを、“変装”状態でその人を番組に登場させるので、それを見て誤解した人から、その方はその後しばらくネットストーカーに遭い、執拗な攻撃を受けることになった。
 が、そうなるのも、誤解を誘うような演出というか、その放送局スタッフの思慮の欠いた番組制作が発端だったと言わざるを得ない。

 以上のような訳で、取材を受ける際、番組主演の際には、とくに障害当事者は、くれぐれも気をつけるように。これは警告である。◆

(2024.1.8)

■他の方の取材被害の実例(↓これらのほうが取材被害としては深刻だと思うので)

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