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『今、何かを表そうとしている10人の日本と韓国の若手対談』を読んで

 西川美和とムン・ソリ/寄藤文平とキム・ジュンヒョク/光嶋裕介とアン・ギヒョン/朝井リョウとチョン・セラン/岡田利規とキ・スルギ の対談

 映画監督、建築家、小説家、美術家など、お互いに興味を抱いている人たちがこのことについてどう思う、みたいな話をしている対談集。

 この本で対談している日本人の人たちはだいたい知っていたが、特に、寄藤文平という人がおもしろかった。出てる言葉がなかなか含蓄ある言葉だった。「感性とは守って大事にするものじゃなくて、どんな状況であっても、力として自分を支えてくれるものだというふうに考えていいじゃないかな、と思います。」など、さりげない言葉だが、柔らかくて人柄が出ているように思った。こういう感じの人が、韓国の現代社会に問題意識がある人と対談するのはとても意味のあることなんじゃないかと思った。

 どの対談もおもしろかった。韓国の方はあまり知らない人が多かったが。岡田利規は意外と面白かった。チェルフィッシュの人だと途中まで気が付かなかったが、やはり、言語に敏感な人なのかな、と思った。岡田利規さんの「僕が大事にしているのはコンセプトだけです。だからその作品がどういう見栄えを持つかについては、僕は最初からほとんどイメージを持っていないし、面白ければどうなってもいいと思います。コンセプトがはっきりあると判断できるかが大事」といった発言は、とても岡田さんのすべてを表しているように感じた。「大事にしてるのはコンセプトだけ」というのはちょっと反感を抱いたが、その中身のなさは、彼がやってることすべてに感じる。これは誉め言葉になるんだか、嫌みになるんだか分からないが、私は、彼のやってるチェルフィッシュとか何の思想も感じない。だからなのか、彼の作品に接しても、なんの感動もわかないし、時間が無駄になったとさえ思える。これをすごいと言ってる人は、バカなんじゃないかとさえ思うが、この本を読んだ印象だけで語ると、まあ、面白い人だった。

 芸術分野に作者のコンセプトってそんなに大事かな、と私も思う。作者の「こう読まれたい、こう理解してほしい、こういう気持ちで作ったからそれをしっかりと受け取ってほしい」という考えは私はあんまり好きじゃない。観客や受け手の自由な解釈を促すべきと思っている。だからといって、大事なのはコンセプトだけとは、全く思わない。そう言い切っちゃうところが、彼の作品がとても稚拙なものに感じるのかもしれないと思った。

 韓国と日本の若者がもっとこういう対談集、出版すればいいのにね。


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