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読書メモ:大型商談を成約に導く「SPIN」営業術

営業を科学しようと試みた超良書です。『チャレンジャー・セールス・モデル』と二個一で読むと理解が深まります。また、考え自体もコンサル界隈の課題本であり古典である『考える技術・書く技術』のフレームワークとも似ており、非常に論理的かつ実証的な本です。特に、調査段階、示唆質問、解決質問、顕在ニーズあたりがキーワードになります!

ただし、ただし、ただし、なんですが、質問ばっかりしていて提案しないのは、商談、ひいては人間関係の大きなリスクです。コーチングの失敗事例でよくありますよね。示唆質問はリスクの塊だと思います。どのフレームワークも現場で使うときにはフレームワークに縛られずに、いまそこにいるお客様と向かい会うことが一番重要だと考えています。それでも
” In preparing for battle I have always found that plans are useless, but planning is indispensable. " (アイゼンハワー第34代米国大統領)ということで、良き準備をするためにこの本を有効活用したいです。

商談の4段階(第3章)

ほぼすべての商談には4段階がある

  1. 予備段階

    1. 商談のはじめのウォーミングアップ

  2. 調査段階

    1. 事実や情報、ニーズを見つけ出す

  3. 解決能力を示す段階

    1. あなたの商品の価値を見つけ出す

  4. 約束をとりつける段階

    1. 商談を前にすすめるための同意を得る

① 予備段階(第9章)

  • 予備段階は軽視されがち(だが、ここも商談の舞台に昇るために重要である) p.198

  • プライベートな話は効果的な場合もあるが、そこそこに

  • 大型商談では、冒頭で「利点」を口にしない

    • 利点とは、商品またはその特徴が、どう見込み客の役に立つかを示す

  • 成否を決める重要な点は、見込み客が喜んで次の段階に進み、質問に答えてくれるかどうかにある p.212

  • 商品について語りだすのが早すぎないように注意する p.212

  • 以下の点についてはっきりさせる

    • あなたは何者か

    • なぜ会いに来ているのか(ただし、このとき商品の詳細を語ってはいけない)

    • 質問してもいいかどうか

      • 断られても、ムダであることを確認してもいいか?と質問に移行する p.211

② 調査段階(第3章〜6章)

  • SPINフレームワークを駆使して、質問を行う(SPINについては後述)

  • 質問が重要であるのは、買い手を巻き込むこと。潜在ニーズを顕在ニーズに転換させる。 p.58

    • 理由1:質問は買い手をしゃべらせる

    • 理由2:質問によって相手の注意を惹きつける。質問は反応を要求させる

    • 理由3:質問すると相手は納得するが、説明では納得しない。「説明」ではすでに自分の側にある人しか説得できない。

    • 理由4:質問はニーズを明らかにする。質問の「数」ではなく、「種類」を多くし、幅広い観点から買い手のニーズを明らかにする

  • オープンか、クローズかは本質的には関係がない。「商談で質問する目的は、顧客のニーズを見つけ出し、育てること」 p.69

  • ニーズは認識されないと意味がない p.74

    • 買い手の口によって言語化され、一緒にストーリーとならないと真に有効なニーズには変化しない

  • ニーズについては3段階存在する p.75

    • 段階1:はじめはちょっとした欠陥でしかない

    • 段階2:それがはっきりとした問題や不満へと発展する

    • 段階3:ついに欲求や欲望、行動を起こそうという意志に変わる

  • 潜在ニーズは、ただの問題や不満。自覚していない。p.75

  • 顕在ニーズは、強い欲求や欲望。自覚している。p.75

    • 大型商談では、いかに潜在ニーズを育て、どのような質問の仕方をすることで潜在ニーズを顕在ニーズに変えていけるか

  • 潜在ニーズより、買い手の口から顕在ニーズを話してもらうことが重要=これがバイイングシグナルの1つである p.83

  • そして、本当の(営業マンの)スキルは潜在ニーズをより重大なものにし、見込み客にアクションを起こさせるか、それが本当のバイイング・シグナル p.86

  • 質問には2つのタイプがある

    • 見込み客から問題点、つまり潜在ニーズを聞き出す「発見のための質問」

    • 潜在ニーズを顕在ニーズへ発展させる「発展のための質問」

  • この質問のフレームワークがSPINであるが、ここは後述

  • この調査段階が大型商談で最も重要なフェーズである

③ 解決能力を示す段階(第7章)

  • 「利点」ではなく利益を語れ

    • 商品がどのように使え、どのように見込み客の役に立つかを示す=利点、はさほど重要ではない

    • 最も効果的なのは、「顧客がそれまでに口にした顕在ニーズに承認やサービスがどのように応えられるか」=「利益」である

  • 特徴

    • 事実やデータ、商品の特徴を説明する

    • 小型商談では効果があるが、大型商談では説得力をもたない

    • 新商品の売り込み時には特徴に終始しがちなので、注意を払う必要がある

  • 利点

    • 商品またはその特徴が、どう見込み客の役に立つかを示す → 潜在ニーズ

    • 小型商談では効果的だが、大型商談ではほとんど効果がない

    • セールス・サイクルの終盤になると効果が低くなる

  • 利益

    • 見込み客の口にした顕在ニーズに商品がどう応えられるかを示す → 顕在ニーズ

    • セールスの規模に関わらず、非常に高い効果がある

    • 大型商談では、もっとも威力のある言葉のひとつである

    • 利益とはValue Sellingである

    • 長期の商談において、利益は商談プロセスの最終盤まで強い見込み客への影響を維持する

  • 売上げアップにつながるテクニック

    1. 商品の早い段階で、商品の「利点」について語らないこと

      1. 示唆質問と解決質問でしっかりと顕在ニーズを育てる必要がある、そこから初めて解決策を提示すること

    2. 「利点」の内容にきをつけること

      1. 「利点」ではなく、「利益」にフォーカスすること

    3. 新商品には注意すること

      1. 新商品の際は「特徴」や「利点」に終止しがち

④ 約束をとりつける段階(第10章)

大型商品の4つの効果的な行動=「調査段階」と「解決能力を示す段階」に注目する

  1. 調査段階における顕在ニーズの創出が非常に重要

  2. 主な懸念事項に対応したかチェックする

  3. 「利益」をまとめる

  4. 次の約束を提案する ※進展させないと商談は成功ではない

補足: 商談結果の分類

第3章 p.45 アクションの有無が成功と失敗の分水嶺である

SPIN(第5章〜第6章)

SPINとはニーズを見つけ出し発展させる4種類の質問
このフレームワークはバーバラ・ミント『考える技術・書く技術』とかなり親しい考え方。

① 状況質問 Situation p.92

  • 見込み客の現状に関する事実を見つけ出すこと

  • 「状況質問」を連発すると、見込み客は商談に飽きてイライラし始める

② 問題質問 Problem p.95

  • 見込み客の抱える問題や支障、不満に関する質問のこと

  • 「問題質問」は「状況質問」よりも商談成功との関連性が強い

  • 大型商談では、小型商談と比べて、商談成功との関連性はそれほど強くない(が、大事)

  • テクニック

    • 商談の前に、見込み客が抱えているかもしれない、かつあなたの製品やサービスで解決可能な潜在的な問題を考えて、少なくとも3つ考え出してみる

    • あなたが仮定したその潜在的な問題を浮き彫りにするために、商談で使う「問題質問」をいくつか書き出してみる

  • つまり、成功した商談では、潜在ニーズを顕在ニーズへ発展させる際に複数のタイプの質問が使われていた

    • 例えば、問題の深刻さをはっきりさせるためのもの

    • 例えば、問題を解決することによる効用や魅力に関するもの

③ 示唆質問 Implication p.107

  • 示唆質問とは、見込客が抱える問題の与える影響や結果などについての質問のこと

  • 見込み客が価値を(新たに or より強く)認識できるようにする

  • 「状況質問」や「問題質問」よりも質問しにくい

  • つまりは、「見えていないもの、見えづらいものを言語化させる」質問

  • ただし、「示唆質問」を多用すると見込み客をネガティブな気分にさせたり、落ち込まさせたりする危険性が高まる。したがって、解決質問も非常に重要

  • 示唆質問には準備が必要。例えば…

    • 見込み客が抱えていると思われる問題点を書き出す

    • その問題に関連した他の問題がないかを考える

      • ヒト(離職やスキル)、カネ、モノ(品質)

④ 解決質問 Need Payoff p.107

  • 解決質問とは、見込み客から提案された解決策の価値や効用に関する質問のこと

    • 「Need Payoff」とニーズに注目することに注意、和訳が若干原文意図と一致していない

  • 見込み客が問題点ではなく、解決策に目を向けさせる効用がある。問題を解決しようとするポジティブな雰囲気が生まれ、解決策に向けての行動に意識が向く

  • 見込み客から利点を語らせることができる効用

  • 解決質問は反論を減らす

    • 営業側がすすめる解決策がどう役立つかを見込み客本人に語ってもらえれば、反論を招いてしまうリスクが軽減する

  • また大型商談で必要な、社内のインフルエンサーに社内で説明してもらうときの準備にもなる

    • 大型商談においては営業側は主役ではない、裏方である

  • 商談の初期では使わないこと、しっかり問題質問と示唆質問を踏んでから、解決質問をすること

SPINとは?まとめると…

  • Situation:一流のセールスパーソンはまず「状況質問」をして見込み客の背景情報を得る。ただし、この質問は相手を退屈させたりいらつかせたりする危険性があるので、多様を避ける

  • Problem:「問題質問」に素早く移行し、見込み客が抱える問題点や支障、不満を探る。この段階で潜在ニーズを見つけ出す

  • Implication:大型商談では、ここで「示唆質問」をして、潜在ニーズをより差し迫ったものにしていく

  • Need Payoff:行動を起こさなければならないと、買い手みずからに自覚してもらう

最後に…

中身が濃すぎるので、敢えて私からはまとめませんが、冒頭に書いたとおりです。特に、特調査段階、示唆質問、解決質問、顕在ニーズあたりがキーワードでした!

(繰り返します)
ただし、ただし、ただし、なんですが、質問ばっかりしていて提案しないのは、商談、ひいては人間関係の大きなリスクです。コーチングの失敗事例でよくありますよね。示唆質問はリスクの塊だと思います。どのフレームワークも現場で使うときにはフレームワークに縛られずに、いまそこにいるお客様と向かい会うことが一番重要だと考えています。

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