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もり塾の歩き方(7)私にしか書けない。だから何度でも書き直す

60歳目前。でも人生100年ならは、まだ折り返し地点。
これが最後の挑戦と、「もり塾ブックライター・編集ライター養成コース」に挑んだ野村紀美子の受講体験記、第7回。

卒業制作であるブックレット。
小冊子とはいえ、その過程は一冊の書籍を作り上げることとほとんど同じです。
原稿執筆のほかに写真の選定、冊子のタイトルや表紙の考案と決定、宣伝予告原稿なども作成していきます。

メインイベントと思っていた取材は通過点に過ぎず、その先に多くの試練とタスクが待ち受けていていました。

ブックライターも目指したい。自分たちで提案した一人称

少し話は前後しますが、卒業制作の内容が明らかになったころのことです。

講義のときにしか顔を合わせたことがなかった仲間たちと、オンライン茶話会をすることになりました。

今までの講義の振り返りや悩み、ちょっとしたプライベートなことまで、楽しいおしゃべりがつきません。

仲間の一人から
「もり塾は『ブックライター・編集ライター養成コース』。せっかくだから一人称で書くブックライターとしてのスキルをもっと学びたい!」
という意見が出ました。

ライターの中でも著者に一冊の本に仕上げていく「ブックライター」は、取材対象者を「彼」「彼女」という三人称ではなく、「私」という一人称で書き上げます。

客観的な視点を持って書く記事とは違ったスキルが必要になるのです。

当初先生からは、卒業制作の取材内容を三人称で書くよう指示が出ていました。

課題だけでなく一般の記事作成では一人称で書くことは多くはありません。

このチャンスを活かそうということで、みんなの意見は一致しました。

次の講義でさっそく提案すると、先生は驚きながらも私たちの積極性に喜びを隠せない様子。

もちろんOKをしていただきました。

私には難しすぎる! でも仲間たちも苦労しながら頑張っていた

初稿提出後の講義では私たちの原稿について、全体構成、文体、細かな言い回しなど先生からフィードバックを受けます。

私の初稿は、まだまだお粗末。

一人称で書くというのも私にとっては初めてのこと。

自由な発想のもと自分の言葉と文で表現できるブログや個人の日記、あるいは自分が著者となる小説やエッセイを書く場合とは全く違います。

自分のことではないのに「私は……」と、まるで本人が語っているかのように表現することに違和感がありました。

さらに本人のイメージや語り口調を生かし、かつ聞いた内容を読んでいる人にわかりやすく伝えるということが、とても難しかったのです。

仲間たちの初稿、私には良い出来上がりに思えても、まだまだ改善点があると先生は指導します。

取材内容を知らないので、文字起こしからどのように記事文章が出来上がっているのかわかりません。

私の数倍に及ぶ量の「文字起こし」からまとめている人もいて、嘆いている場合ではないと反省。

その後は、それぞれ進捗に合わせて個別に先生に提出し、進めていくことになりました。

多くのタスクで一冊の本は出来上がる

一冊の本が出来上がるには、原稿執筆のほかに多くのタスクがあります。

記事に添える写真を選定し、どこにどんな大きさで配置するかを考えて図面を作成します。

この図面をラフコンテと言います。

その写真に添える説明文やプロフィール文の執筆、これはキャプションと呼ぶそうです。

専門用語がたびたび登場して困惑気味の私でしたが、わからない言葉は潔く検索をかけて知識を自分で得るようにしました。

ほかにもブックレットの表紙を考えて画像やイラストを探して講義でプレゼンし、先生も含めて意見交換ののち決定。

タスクは次々と課題として出されます。

ブックレットが次第に形になっていくタスクに心が躍るものの、全てが未経験。

原稿執筆に追われながらの作業は時間との戦いでした。

何度も書き直し。でも私にしか書けないはず

原稿は、提出すると修正指示が戻って来るので、書き直してまた提出という作業を繰り返していきます。

途中、先生と直接お話できる「個別相談」も利用しながら進めます。

おもに取材に同行してくださった先生が担当してくださいました。

「ドラマチックに、その人が素敵に輝くような内容に仕上げたい!」と思っても、なかなか文章に流れができません。

「やっぱり最初の表現が良かった」
「この部分と後半をうまく繋げたらわかりやすいかも」

など迷いながらやっと書き上げた原稿も、加筆修正の指示が入って戻ってきます。

再び推敲を重ねますが「先生は削除と言ったけど、ここはなんとか残したい」などと葛藤。

修正して再提出しても
「バッサリ削る勇気も大切。それによってほかの部分が生きてくる」
と、先生から決断を促されます。

せっかくたくさん話していただいたのだから、より多くの情報を詳しく記したい!と思うとまとまりのない文章になってしまうのです。

何度も書き直しているうちに、自分の書いた文章を暗唱できるようになってしまい、ほかの表現もなかなか思い浮かびません。

それでも書き直していきます。

未経験の表現方法と文字量。

さらに私は、書く、読み直す、考える、加筆修正、全てのスピードが遅いので、次の提出までに数時間からまる1日かける日が何日も必要でした。

「やっぱり私には荷が重すぎた。これ以上いいものなんて書けない」
と、投げ出したい衝動に何度も襲われます。

「でも取材したのは私。せっかく話していただいた貴重な内容を文章にできるのは私しかいないはず
と、そのたびに自分を奮い立たせました。

4回ほど書き直したころ、ゲラ印刷の締め切りも迫り、迷っている猶予はありません。

思い切った削除をし、入念に工夫を加えた原稿がやっとOKに。

およそ2ヶ月に及ぶ原稿執筆との闘いから、ようやく解放されたのでした。
(次回に続く)

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