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『中部空港で実証実験、バスの座席が振動したりミストを噴射…デジタルコンテンツバスが惜しい!』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.11.22


■バスの座席が振動したりミストを噴射…客を楽しませるバスが登場 中部空港で実証実験

 デジタル技術を使った乗客を楽しませるコンテンツが装備されたバスの実証実験が中部空港で行われました。
 実証実験は2030年に普及が見込まれるサービスを中部空港周辺で、先行して実用化することを目指すプロジェクトの一環で行われました。

 今回は車内に11面のディスプレイを搭載したバスの実証実験が行われました。

ガラス面や天井に液晶パネルを11面設置した観光バスの実証実験が行われました。その様子の報道映像はこちら↓

ニュースのタイトルでは「バスの座席が振動したりミストを噴射」と映画館の4DXやMX4Dのような演出部分のほうに着目していますが、注目するべきは11面の液晶パネルのほう。

今回の中部空港で行われた実験では「デジタルコンテンツバス」と名付けられていますが、もう一歩踏み込めば「AR観光バス」に進化できる可能性がありそうです。

むしろ、AR観光バスにしないと液晶で車内を覆っている価値がありません。今回の実証実験は、面白いけれど惜しい!

もう一歩行ければ「聖地巡り」のリッチ化などで地方活性化に大きく貢献するインフラになる可能性を秘めていると感じるだけに、ぜひ見直しをしてほしいと思います。

本日は、このデジタルコンテンツバスの良いところ、改善すべきところを考察してみます。


バスガイドもアバター化・名所案内も液晶表示

アバターがバスガイドを務める

デジタル技術を駆使した観光バスを謳うからには、バスガイドもアバターが務めます。

名所めぐりをする時にバスガイドさんが「右手をご覧ください」と解説をつけてくれるアレのデジタル版です。

名所や名産も車内ディスプレイで解説

名所名産も映像や写真を車内のディスプレイに表示して魅力を伝えます。

バスの内側をぐるっと液晶で囲むことで、観光スポットに通りがかるタイミングに合わせた観光情報を伝えることができ、乗客全員に共通の体験を提供することで一体感を演出することができます


アニメの聖地巡りと相性が良い

バスガイドが話術で伝える観光案内と比べて液晶パネルが使えるメリットを活かすなら、アニメの聖地巡りとは相性がよさそうです。

アニメでの「聖地」のシーンを現場その場で見せるのは、スマホ片手に聖地巡りをするよりずっとリッチな体験になります。

聖地巡りでガイドを入れるならバスガイドじゃありません。アニメの登場キャラクター自身とその声優さんがガイドするのが最上級、次いでハライチの岩井勇気さん中川翔子さんなど、アニメを熱量高く伝えてくれるインフルエンサーではないでしょうか。

また、アニメの聖地巡り観光ツアーで運行されるバスに乗っている人は当然、そのアニメのファンです。全員が同じ興味と知識を持っている人が、バスという狭い空間の中でデジタル観光という共通体験をすれば、そのアニメ作品とご当地聖地への愛が一層増すことでしょう。


歴史の流れを見せるお城ARにも

昔の様子をAR表示

お城など歴史モノとも相性がよさそうです。

お城や史跡があった当時の様子を液晶パネルに再現して見せるのが観光ARの技術です。それを今回のデジタルコンテンツバスに応用できれば最高です。

窓越しに見る現在の様子にお城があった当時の風景を重ねることで、歴史の時間の移り変わりを体験として提供できます。

特定の場所に駐車して、片側の液晶を全面使って見せるようなかたちになるでしょうから、お城など駐車場が備わった場所に適したコンテンツになります。

お城ARは近年コンテンツが充実してきていますから、わりとすぐに実現できそうです。


透過ディスプレイが欲しい

AR観光バスはとても面白そうなのですが、今の仕様だとひとつ大きな欠点があります。

11面の液晶パネルでバスの内側を覆っている都合、外が見えません

AR観光バスとして提供したい体験は「今の観光地の様子に情報を重ねて見せること」です。

これを実現するには、向こう側が素通しで見える「透過ディスプレイ」である必要があります。

観光地に行ったのに液晶の映像だけを見るのだと、家にいてテレビで観光地の映像を見ているのと変わらないとも言えます。肉眼で現地の様子を見てこそ観光だと考える人も多いと思いますので、ぜひ透過ディスプレイでのAR体験に進化してほしいと思います。


小田急「XRロマンスカー」の例も

 小田急(小田急電鉄)は、特急ロマンスカー・VSE(50000形)とXR技術を掛け合わせた観光コンテンツ“XRロマンスカー”を開発した。
(中略)
 新宿駅から伊勢原駅まで走行する“XRロマンスカー”で行なわれる企画は、移動中にパススルー機能(現実世界の様子をVRゴーグル上に投影する機能)を搭載したVRゴーグルを装着すると、前面の大きな一面のガラス越しに見える現実世界とXR作品を楽しめるといった内容。

しかし、透過ディスプレイを使っても、座席によって見える風景がずれることから、窓の向こう側の風景に対してキレイに情報を重ねることができません。

また、窓際の席の人は液晶が近すぎて何も見えないという問題があります。

これらを解消する方法として、小田急電鉄はVRゴーグルを使った「XRロマンスカー」の実証実験を今年の2月に行っていました。

VRゴーグルに内蔵したカメラを使ってゴーグルの外が見えるパススルー機能を使って、観光地の実際の様子とARコンテンツをきれいに重ねて表示し、どの座席でも同じ体験を提供できるようにしています。

ただ、やはりVRゴーグルをかぶることは観光と相性が良くないと直感します。下の写真はやっぱり異様です。

ロマンスカーでのVRゴーグル観光体験

VRゴーグルは大きくて重く顔を覆うこと自体に抵抗を感じます。VRゴーグルがもっとコンパクトにならないと普及は難しいのではないかと思います。


液晶で車内を囲う意味のある体験を

デジタルコンテンツバス

中部空港のデジタルコンテンツバスの実験車両では、VRゴーグルで顔を覆うことなくデジタルコンテンツを車内で楽しめます。しかしVRゴーグルほどではないにしろ、この写真からは閉塞感を感じます。

そして上記の写真をよく見てみてください。どの画面にも同じ映像が表示されていることがわかります。これは非常に残念です。

同じ映像を表示するだけならコレでいい

これなら飛行機でおなじみの各座席に設置されたモニターに観光情報を表示するのと体験は変わりません。

この飛行機型のやり方なら、座席数を減らさずにデジタルコンテンツを提供できますし、観光コンテンツがない場所でも映画などで埋めることができ、同じ車両でいろんなところを運行できます。

走行中の場所に関係なく観光情報を表示するだけなら自宅でよいですし、車内にいる乗客全員で共通体験をさせるだけなら映画館のように大型スクリーン1枚で構いません。それを各座席で見やすくするなら飛行機と同じ各座席用小型モニターで実現できます。

せっかくバスの車内を液晶で覆うなら、やはり外の風景に情報を重ねるAR体験を提供した方がいいと感じます。

名古屋めし「みそカツ」の映像に合わせて、湯気を表したミストが吹き出てきました。車窓の景色と連動した演出も行われ、楽しみながら移動することができます。

「みそカツ」の映像に合わせて湯気ミストが出る、じゃあ観光客誘致には弱い。2030年向けてデジタルコンテンツバスを本気で普及させるつもりなら、4DX的な部分は封印して、AR観光バスの実現に振った方がよいのではないかと思います。

液晶で車内を囲う意味のある体験へと昇華し、AR観光バス×アニメの聖地巡りが実現されれば、予約は殺到するんじゃないでしょうか。

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