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祝ノーベル物理学賞! 『天体物理学』のすすめ

2019年のノーベル物理学賞は、ピーブルス(James Peebles)氏、マイヨール(Michel Mayor)氏、ケロー(Didier Queloz)氏の3名に贈られることが決まりました。

その業績については、『日経サイエンス』誌の速報ページにて、詳しく解説されています:「2019年ノーベル物理学賞:私たちの宇宙観に大転換をもたらした米欧の3氏に」http://www.nikkei-science.com/?p=59822

2019年5月に発行された、『天体物理学』(Arnab Rai Choudhuri著・森正樹訳、原題“Astrophysics for Physicists”)では、3氏の業績にも一部触れられています。

「宇宙初期の元素合成の実際的な計算は数値的に行う必要がある。宇宙が本当に熱いビッグ・バンから始まったことを証拠付けたCMBR〔宇宙マイクロ波背景放射〕の発見後間もなく、ピーブルス、またワゴナーとファウラーとホイルは、最初の計算コードを開発した(Peebles, 1966; Wagoner, Fowler and Hoyle 1967)。」
『天体物理学』「11章:宇宙の熱史、11.3節:原始元素合成」より)
「系外惑星を発見したとする報告はいくつかあったが、天文学者たちに間違いないと受け入れられた最初の発見者は、マイヨールとクェロッツ〔ケロー〕であり、これ以降この分野が開拓され、速いペースで発見が続くこととなった(Mayor and Queloz, 1995)。」
『天体物理学』「4章:恒星天体物理学Ⅱ、4.9節:系外惑星」より)

物理学者たちは、理論と観測を駆使して、この宇宙についてどれくらいのことを明らかにしてきたのでしょうか。『天体物理学』は、「物理と数学の知識を駆使して、天体物理学について本格的に学ぶような、学部生・大学院生向けの」、「自学自習の可能な優れた教科書」(森正樹先生「訳者まえがき」より)です。

今年のノーベル物理学賞をきっかけに、「天体物理学(astrophysics)」の扉を開いてみてはいかがでしょうか。

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『天体物理学』

著:Arnab Rai Choudhuri
訳:森正樹

ヘッダ

天体物理学(宇宙物理学)は、電磁気学、熱力学、光学、相対論、流体力学、核物理学、プラズマなど、様々な専門分野の学問が応用されて成り立っており、また、ここで得られる知見は、各分野へ戻り、役立てられている。

本書では、本格的な内容を扱いながらも、天体・宇宙・天文系以外の読者でも読み進められるように、物理の基礎知識だけに基づいて、体系的かつ丁寧に論じている。

星、銀河、銀河系外、宇宙論など、天体物理学のあらゆる分野について、基礎から最近の話題までを扱い、また、物理的概念と数学的導出と観測データを組み合わせてバランスよく解説することで、統一的かつ総合的な理解を目指す。


【目次】
1章 はじめに
2章 輻射と物質の相互作用
3章 恒星天体物理学Ⅰ:基本的な考え方と観測データ
4章 恒星天体物理学Ⅱ:原子核合成とその他の話題
5章 星の崩壊の終状態
6章 天の川銀河と星間物質
7章 恒星系力学の基礎
8章 プラズマ天体物理学の基礎
9章 銀河系外天文学
10章 宇宙の時空の力学
11章 宇宙の熱史
12章 テンソルと一般相対性理論の基礎
13章 一般相対性理論の応用例
14章 相対論的宇宙論

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