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私のトツキトオカ日記

(2023/3/6執筆、その後沈黙し今やっと公開に至る)
明日、出産する予定。

人生初めての体験なので、結婚のときと同じくメモ的に気持ちを残しておこうと思う。妊娠がわかってから出産を迎えるまで、たくさんのことを考えた。

妊娠がわかった日

「妊娠したよ」と夫に言ったのは平日朝10時くらいだったと思う。2022年7月、いつもAppleのヘルスケアの通知ぴったりに来る生理が来ず検査をしたら、陽性だった。当時の私は仕事で心身の調子を崩しており「わぁ、どうなるんだろう」とぼんやりしていたのを覚えている。
夫は「あとで…」と仕事部屋に閉じこもり、しばらく経ってから開口一番「カジキマグロは食べない方がいいらしい」とググった情報を披露してくれた。妊娠がわかったときの夫の反応を生涯忘れない…みたいなことを聞くけど、カジキマグロを見るたびに思い出しそうではある。

つわり

もともと体が丈夫な人生をおくってきたこともあり"ずっと具合が悪い"に慣れていない自分につわりはハードだった。
毎朝、目が覚めて「今日も気持ち悪かったら嫌だなぁスッキリしてますように!」と祈るように起き上がり、やっぱり気持ち悪い。小さな絶望を繰り返しながら「今日は具合がいい気がする」と毎日夫に言っていた。どう見ても状況は変わっていなかったが何も言わずにつきあってくれてサンキュ。ドリカムはあまり聴いたことがない。今までの人生、自分の体の強さゆえ慢性的に体調が悪い人への積極的な理解ができていなかったのではないか、と反省もしていた時期。

いわゆる「食べづわり」で空腹が気持ち悪かったので、人と会うときはなるべく胃に何かを入れていった。電車に乗る前におにぎり(梅)を食べ、ランチの予定の前におにぎり(梅)を食べ、出張で飛行機にのった時はフライトが怖くて怖くて納豆ご飯定食の後に一蘭のラーメンを食べて機内におにぎり(おかか・昆布)を2つお守りとして持って乗った。満腹すぎてすぐに眠ってしまったのでおにぎりは食べなかった。
街を歩けばすぐにおにぎりが手に入る、コンビニエンスストアはすごい。つわりは悪阻(おそ)とも言うらしいが、個人的にオソは北海道東部の最強のヒグマしか浮かばない。
出産後追記:つわりはしんどすぎる。これは少子化につながっていると当時は思っていて「#つわりを忘れるな」とハッシュタグを頭に浮かべて過ごしていた。出産後の今となっては本当に思い出せない。出産後にすべては忘却されるようにプログラムされているのか。

妊娠が怖い

突然ワッと泣く時期があった。妊娠出産に対する不安もそうだけど、夫とふたりで暮らすこの平穏な毎日の終わりが怖くて・夫との関係性が変わってしまうんじゃないかって・そんな怖さが大きかったんだと思う。妊娠発覚直前に行った八景島シーパラダイスのデートが楽しすぎて、戻れないことが寂しくて悲しかった。産後クライシスなんて言葉も知って、今こんなに大切に思っている夫への愛情がなくなってしまうなんて、ありえるんだろうか?コントロールできないのだろうか?わからない。大好きな気持ちと引き換えにしてまで子どもが欲しいか?無知が悪さをして、怖さに拍車をかけていた。

34歳まで生きてきて、仕事もパートナーも住む場所も自分で決められるようになってきてたのに、どんな人がどんな状態で産まれてくるのかは分からない。色々な確率とにらめっこ。確率の話ばかりよ本当に。
妊娠出産は仕事や勉強と比べて"努力"で良い方向に導けることが少ない気がする。健康でいるために適度な運動、リラックス、食事…。
何かもっとこう、攻める感じのことないのかな、と最初は思ってたけど出産前の今となっては、こうやって確率とか、ある意味「何もできない部分」を受け入れるとか、いろんな不安を10ヶ月くらいかけて乗り越えて肝っ玉みたいなのが出来ていくんだろうか、と着地している。人生の他のことも、最初から全部決まってて、そこに向かっていくだけなのだろうか。ちなみに母親の心を救うようなスピリチュアル話は多い。

マタニティマーク

付けていると意地悪される・付けていても席は譲られない・不妊治療中の人は見たくもないマーク!などSNSでネガティブな話ばかりを見かけていたので付けるのを躊躇していたが、夫にすすめられて初期から付けた。付けてわかったけれど、人生で初めて「人の行動に影響を与えるかもしれないマーク」を身に付けたわけで、めちゃくちゃ自意識過剰になった。マタニティマークを付けています!って顔に書かれているレベルで皆にも見られていると思っていた。でも実際はそもそも人のキーホルダーなんて見てない人も多い。変に自意識過剰になって傷つく人もいるのかもしれないなぁ〜なんて、今となってはのんきに思う。でも体感としてはめちゃくちゃ譲って頂いて、特につわりの時期は本当にありがたかったな…

武蔵小杉駅 アメカジの男の子
武蔵小杉駅 顔の赤いお兄さん
上大岡駅 マタニティマークなかったのに譲ってくれたご婦人
日の出町駅 ストリートな女の子
よみうりランド駅 髪つやつやな彼女と黒パーカーの彼氏
大船駅 カップルの男の子、譲ってくれたのに座れずごめん
中目黒駅 コーヒー片手に通勤っぽいお姉さん
武蔵小杉駅 スタッズまみれのおじさん、cool
横浜駅 ロングコートで六花亭の袋持ったお兄さん
目黒駅 お子さん連れた心強いお母さん
目黒駅 キッとしたおじいさん

席を譲ってもらうたびに心のそこから「サチアレ!!!!!」を送ったんだけど、皆さんに幸はありましたでしょうか…。譲られた後は、スマホや本を取り出して悠々と座るのは微妙かな…と思って真顔でただ座る。ちょっとこぢんまりとする。私の中で「弱者こうあるべき」みたいな像を演じてしまったのだろうか。であればそれは良くない。

暇との付き合い

2022年5月に無職になり、のんびりしていたら妊娠がわかり、就職のタイミングを逃していたので、つわりが終わってからは「暇だな!」が増えた。
せっかく時間がある…ということで横浜地裁に裁判傍聴に通った。つわりの時に邦ドラマが一番カロリー使わず流し見できる、と思って観ていたのだけど、実際の裁判ってどんな感じなんだろう?と思っての行動だった。
色々な裁判を見て思ったのは"ひとりぼっちを感じていて、お腹がすいている"人をなくしたいということ。アンパンマンと同じ気持ちかもしれない。
旅行がてら大阪地裁にも行き傍聴したら地域差を感じて興奮。ちなみに横浜地裁で同時期に通っていた妊婦は私を含めて3人いた。みんなもう産まれたかな。

仕事をはじめた

フリーランスとしてお仕事は頂きつつ、ほぼ働いていなかったので裁判の傍聴以外にやることがなかった。そんなときたまたま友達に声をかけてもらい外資のデジタルマーケティング会社で働かせてもらった。半日くらいの時短勤務だったけど、メリハリが出たしお題に応えるのが楽しい。母子手帳に「仕事を休み始めた日」を書く欄はあったけど「仕事を新しく始めた日」はなかったが…許して我が子よ…。
せっかく外資の環境だし、時間もあるので英語を少し頑張るか、とネイティブキャンプも始めた。自分の興味関心あるテーマなら話しやすいだろうと思いフリートークで色々な国の人の子育て事情についてセッション。フィリピンでは妊娠中に頭の下に本をおいて眠ると頭の良い子が産まれるらしい。

妊娠しているよ話

「妊娠してたなんて知らなかった」と連絡をもらった。妊娠の連絡は誰にいつどこまで話すか難しい話題である。言わなくてごめん。でも産まれるまで何があるか分からないし、人によって考え方や状況が色々あって無配慮だと思われるのが怖かった。このnoteも気づかないところで誰かを傷つけているのかもしれない。自意識過剰な時代に生きている。

いつ妊娠出産するか?したいのか?仕事はどうする?私は今まで考えたくなかった。
妊娠出産で退職や休職する人には漠然と狩猟民族から農耕民族になる感じのイメージを抱いて、仕事を離れる自分が想像できなかったししたくなかった。今まで必死にしがみついていたから。今回はたまたま仕事と離れていた時期に妊娠できて良かったと思う。そうでもなきゃ仕事と離れるのが怖くて決められなかったんじゃないかな。いろんなことをどう考えたらいいか分からなくて、子どもが欲しいとは思うけどSomeday…って感じだったから。めちゃくちゃ考えたか?と言われるとそこまで自信を持って言えなくて、色々なタイミングが合って今回、SomedayがMarch 2023になった。
否定も肯定もアドバイスもされることなく、ただ妊娠や出産について考えやもやもやを話せる場所が私の周りにはあまりなかったような気がする。

おまけ:Me Me She

高校時代に流行っていたRADWIMPSの歌詞で、何か君の遺伝子が的な歌があった気がするなと探したらMe Me Sheだった。

僕が例えば他の人と結ばれたとして
二人の間に命が宿ったとして
その中にもきっと 君の遺伝子もそっと
まぎれこんでいるだろう

このつわりと苦しみに夫や私の元恋人たちがいるのか!?ふたり分で精一杯すぎるのですがふざけんなよ!!と妊娠中のメンタルは狂っている。

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ここまで書いて寝ていたら陣痛がはじまり、出産へと進み満身創痍で3週間ほど経ってしまった。
子どもはかわいくてすごい。毎日、真っ赤になって何かを訴えかけてきて「赤ちゃん」の「赤」ってこういうことだったのかと知った。

臨月に「やり残したことはないか?」「最後にやりたいことは?」夫は週末になるといつも聞いてくれて色々と二人で出かけた。感謝。最後の二人の外食はおでん屋さんだったね。

何も最後なんかじゃないよ、と言っていたけど出産後は物理的に・体力的に・状況的に色々できないことが実際にあるなとしみじみ。でも、たくさんの「最後」のあとには「はじめて」がたくさんある。産まれて3週間のかわいい人と、毎日「はじめて」を楽しんでいる。

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