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ドラマ「かしましめし」〜仲間と囲むご飯は、あったかくて美味しくて沁みる

最初にドラマ「かしましめし」の設定を見た時は、また深夜枠で、またご飯食べる話で、また美大仲間の話かぁ…と正直思った。

それでも試しに第1話を観てみると、冒頭から美大の同級生のお葬式で、千春、ナカムラ、英治の3人が再会するシーンから始まったので、ちょっと面食らう。
しかも亡くなったのは、主人公・千春(前田敦子さん)の元カレで、さらに英治(塩野瑛久さん)の元カレでもあったことが、英治のゲイであるというカミングアウト付きで明かされる。英治いわく付き合ってた時期は被ってないとのことだけど。

千春は有名デザイン事務所で働いていたが、上司からパワハラを受け心を病み退職し引き篭もり気味。美大予備校時代の講師・蓮井(渡部篤郎さん)と再会し片思い中。
英治は、会社でデザイン職から営業に異動になるが、持ち前の人懐っこさと関西弁を武器に卒なく仕事をこなすものの、私生活では同棲中の奔放な彼氏(吉村海人さん)に振り回され、苦しんでいる。
ナカムラ(成瀬璃子さん)は、社内結婚するはずが婚約破棄となり、勝ち気でハッキリ物言う言動が元で仕事でも左遷されてしまう。
30歳を目前に控え、三者三様ちょっと停滞気味の3人は、美味しいご飯と気のおけない仲間に惹かれて、千春の家で同居することになる。

ドラマ内のご飯は文句なしにとっても美味しそう。
1話の包まない餃子、3話の手巻き寿司、チュクミのレタス乗せなどは、オープンで閉じてないってところがポイントで、手軽に出来て良い。それは三人の関係性をも暗示しているような気がする。

ナカムラが、千春は誰もが羨む才能がある人なのに何よりスゴイのは普通にしてるところ、普通の感覚を持ったままセンスがいいってなかなかないことだ、と語る場面は印象的で、ナカムラも学生時代、真っピンクの坊主頭にしてたことがあり(!?)美大生って外見とか目立つ行動を取りがちというようなことを言ってたが、たしかにそれって美大生あるあるかもなぁと思った。
私の学生時代も、奇抜な格好だったり行動だったり、作品よりもそういう事で自己主張してる人は(自分も含め)少なからずいて、金髪ロン毛やモヒカン頭のパンクスタイル、ゴスロリなどなど個性的な出で立ちの子は結構いた。

当時のファッションについて以前書いた記事はこちら↓

そしてクラスにはゲイの男の子もいた。当時としても珍しく彼はその事をオープンにしていたけど、何しろ人体デッサンの授業で女性ヌードモデルが居ようが、常に好きな男子の似顔絵(なぜかいつもサーフボードを抱えた半裸の美青年)しか描かなかったので、他の男子たちは異星人でも見るかのように遠巻きにしていた。
むしろ女子の方が彼と仲良くしたい子は多くて、だから彼はいつもクラスの女子数人とつるんでいた。
その様子は、千春、英治、ナカムラの三人を彷彿とさせる。

同じ釜の飯を食う、とも言う通り、鍋物だって一人より三人の方が色々な具材をいれて量的にも楽しめるし、何よりも、今日一日の中で嬉しかったこと、腹が立ったこと、たわいもないことや、時には悩みごとを話しながら、皆んなで一緒に作って食べるというのは、ほっと気が休まる一時になる。

外で何があっても、安全地帯のように帰れる場所があって、そこにはありのままの自分を受け入れてくれる仲間がいる。
それは最高に幸せなことなのだと思う。



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