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森へゆく

夏休みはサマーハウスで過ごす、というのがこの国では一般的な過ごし方だ。
春馬くんの一周忌を街中の自宅ではなく、森の中で静かに偲ぶという事に、少し安堵していた。
様々な情報や記事に少し疲れていたので、ネットから距離のとれる環境に身を置くのもいいと思った。

サマーハウスといっても簡素な作りの家も多く、電気や水道が通っていなくて、湖から水を汲んできたり焚き火で煮炊きしたり、あえて不便を楽しむという人も多い。
毎年我が家は、夫家族の所有する北極圏にあるサマーハウスで過ごすが、そこも夫の父や祖父が自分たちで建てたログハウスで、小さいけれど電気水道は通っており暖炉もあるので、かなり整備されている方だ。

サマーハウスは人里離れたところにあり、周りには他の家などもなく森に囲まれていて、目の前に湖がある。ここではとくに何かする訳ではなく、ただのんびりする。
ゆっくりと自然の中で休む事が、日頃の暮らしから離れた癒しになる。
春馬くんは、長い俳優人生の中で、こんな風に身も心もゆっくりと休めた事があったのだろうか…。何処にいても春馬くんに想いを馳せてしまう。


7月からはベリーの季節なので、森の中には野生のブルーベリーなども実っている。北極圏辺りでしか採れないクラウドベリーという貴重な黄色いベリーもあるので、サマーハウスに来るとそれもせっせと摘んで、朝食のヨーグルトの中に入れて食べる。

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この国では森の恵みは誰でも受け取れる。ベリーやキノコなどは国立公園内でも誰かの所有する森の中でも、何処でも採っていいと法律でも定められている。

森の中にいると自然の音に敏感になる。
風が吹き枝や木々の葉が揺れる音、誰かがボートのオールを漕ぐ音、湖が波立つ音、どこかで鳥の鳴く声。

この国の民は、大人でも森の妖精や精霊を信じている人が結構いる。
森で迷った時に導かれ助けられたり、猟をする時も最初に森の精霊に祈りを捧げる。

春馬くんは、そんな、精霊に近い存在になったのかもしれない。

これは、私個人の考えだけれど、人間は肉体という入れものを手離し、魂だけになった時、時差も距離も超えて同時に幾つもの空間に存在出来るのではないか。
海を超え空を飛び、山頂から下界に風のように舞い降り、今の春馬くんは自由自在に何処へでも行く事が出来る。

だから、春馬くんを偲び愛する沢山の人々の側に、何人もの春馬くんが同時に存在し、春馬くんをいつでも感じる事が出来るのだと、今はそう思っている。

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