人生、転職、やり直しゲーム 第1章

【工事費捻出】

「課長、
俺は鴨葱さんの引越しの手伝いしてきます」

「無能、会社のダンプ使うか?」

「ダンプは、明日か明後日くらいに使います。
今日は捨てるものと取っておくものの選別を手伝います」

「そうか、
ダンプを使うときは
設計課と建築課と総務に応援を頼むといい」

俺は鴨葱さんの家に引越しの手伝いに行った。
物を捨てられない年寄りの家は物が多すぎる。
代々地主だったせいか、
今では見かけない職人技が光る桐の高級タンスなんかがあったが、
仮住まいのアパートはもちろん、
これから着工する
住宅付きのアパートの大家が住む部屋も
狭いからこんなたくさん物を置けない。


亡くなった奥さんや、
息子さんが小さい頃の思い出の品は処分しないと、
引越しはできないと言ったのに
鴨葱さんは、
取っておきたいという。

俺は汗をかきながら説得したが、
鴨葱さんの機嫌を損ねては困るので、
アパートに持っていけない大きなものは、
うちの会社で預かることにした。
どうせ捨てることになるとは思うが。
俺は、金を引き出す作戦を思いついた。

「あのぅ、鴨葱さん、
荷物を預かるなら、
レンタル倉庫を使うのに
お金がかかるんですよ」

「無能さん、聞いてないぞ。いくらだ?」
「物が多いんで、どうしてもお値段が、かかっちゃいます。
引越し手伝い代金と込みなものでこの値段になります。
支払いは現金です」

本当は、
パワハラパレスの家付きアパート着工契約のお客さんが
引っ越す時は、
会社は無料で引越しの手伝いをする。
他の課の社員が休みの日、
サービス残業で会社のダンプを使い
荷物を運ぶのだが、

鴨葱さんには、
別途、引っ越し代がかかる事にしておいた。

金は俺が頂いて、
優順(ゆうじゅん)さんの土地代と塀の着工代金に回せばいい。
裏金工作も楽ではない。

そもそも、金は、世界のみんなのものだ。
鴨葱さんの金を優順さんのために使っても良いだろう。


俺は、鴨葱さんと流石(さすが)銀行に行き、
50万円おろしてもらい、
引っ越し代金として受け取り、
鴨葱さんと別れた。

俺は自分のサラ金の支払いに20万円使い、
残りは、優順さんの土地購入代の穴埋めにするつもりで、
カバンの奥に30万円隠した。

俺は優順さんのところに行って、
銀行が融資をOKしたと嘘をつき、
工期のスケジュールの説明をした。

「来週、店の解体工事…
そんなに早く取り掛かるんですか?
片付けにもうちょっと時間が欲しいのですが…」

「ウチは早いのをモットーにしています。
雪が降る前にアパートを完成させないといけませんからね。
雪降ると、工事費が膨らみます」

「ええっ、それじゃあ、急がないといけませんね」

突貫工事しないと、
アンタの買う土地代や塀の工事代が出ないんだよ。
優順さん、
あんたが金を出せない分、
俺が金策しているんだから、
グダグダ言わないでほしいものだ。

「お店の中の要らないものの整理は
僕もできるだけお手伝いします、
今から一緒に店にいきましょう」

優順さんは、店の南京錠を開けた。
「わっ、埃っぽい!ゲホゲホ!」
「結構、物が残っているでしょう?
店を閉めた時、下取り業者が引き取ってくれなかった物が
そのまま残っているんです。」


店の中は映画のセットに出てきそうなほど趣があった。
昭和初期くらいの建物かなぁ。

「棚は、大型ゴミですかねぇ…」

俺は、優順夫妻に
店先にものを出してもらい、
いる物と要らないものを分けてもらい、
1度会社に戻った。

会社で役所に出す書類を急いで作成しなければならない。
今日は、帰れそうもない。
俺は会社に泊まって仕事したが、
限界がきた。
来客用のソファに倒れ込んで寝た。
疲れたなぁ。

乱子ちゃんの顔が見たい…
あの、迷惑そうな顔、泣き叫ぶ顔、悔しそうな顔、
次は縄で縛ってみたいんだよなぁ、
嫌がったら、また、殴ればいいだけだし。
ひひひひひひひひひひひ。

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最初からやり直す。

投げ銭大歓迎です。