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xR(VR/AR/MR)を将来の都市にどう活かすか

はじめまして。morioです。
とある会社でxRの研究をしています。
これは私にとって初めてのnote投稿です。

私がxRに興味を持ったのは、レゴのARカタログを見て「これは面白い!自分で作ってみたい!」と思ったことがきっかけです。
それから4年ほど経ち、業務としてAR/VR/MRの未来を考えるようになった今、これからのxRに私が何を期待しているのか、xRで何が提供できると考えているのか、最近考えていることを書いてみようと思います。

■課題

最初に、日本が抱える課題を考えてみます。

1.労働力不足

人口の予測ってそんなにぶれないみたいですね。
子供は少ないし、高齢者の比率は高いです。
これがこのままずっと続いていきます。
なので労働力は確実に減ることを覚悟するべきと考えています。

こちらの調査結果がわかりやすかったです。

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2030年時点で644万人分の労働力が不足する、そのための対策として
対策1:働く女性を増やす
対策2:働くシニアを増やす
対策3:働く外国人を増やす
対策4:生産性を上げる
が提案されています。

私はこの中の対策3については悲観的です。
わざわざ生産性が低く、言語の壁が高く、賃金が安い日本に働きに来てくれる外国人労働者が都合よくみつかるでしょうか。
下記の統計にもある通り、他の先進国も今後高齢化社会を迎えます。

そうなると外国人労働者も取り合いになるのではと考えています。
この場合において、日本の勝ち目ってなんでしょう?
アニメがあるとか四季があるとか治安がいいとか、労働とは直接関係のない魅力で訴求するしかなく、
厳しい戦いになっていくんじゃなかろうかと思います。

対策1,2,4についてはxR技術そのものや後述する「モザイク型就労」が有効となるかもしれません。

2.高齢化

1のところでも書きましたが、高齢化は進んでいきます。
こちらの統計を見てみましょう。

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高齢者数自体は2020年で3,612万人から2060年まで見ても3,463万人と、
若干の減少になりますが、これは日本の人口自体が減っていくからであり、
労働力にカウントされる人数(生産年齢人口と呼ばれている)はそれ以上の減少幅です。
高齢化率は右肩上がりですね。
そのうち「高齢者の定義を75歳以上に変更する」と言って見た目の高齢化率を低くしようとするかもしれませんが、いくら数字をいじっても事実は変わりません。
「65歳以上の人口が増える」。

(余談)
ちなみにですが、世界の人口は増えていく予測です。
そのため、いくら日本(や、他の先進国)で人口が減ったとしても
SDGsでいうところの「2.飢餓をゼロに」が勝手に解消されるわけではないのです。

(余談おわり)

日本では最近年金が破綻して「老後の貯蓄はお前ら自分でやれよ」という指針が出ました。

「そうはいっても、どうやって今のおちんぎんで貯蓄すんのよ?」と多くの方が思ったことでしょう。
実際のところ、老後資金を65歳までに確保できる日本人はごく少数なのでは、と予想します。

先日、VR学会の懇親会で廣瀬通孝先生とお話しさせて頂いた際に仰っていたのは「貯蓄をできずに高齢者となる今の40代くらいの世代をどうにかしなければ」との事でした。
これはちょうど私の世代です(いま39歳)。

私は、年金はまともにもらえないでしょうし、老後に向けた貯蓄も恐らく無理でしょう。
現実的に死ぬまで働くことが確定したので、どうにかして働き続ける仕組みを作らないといけません。
その際に課題となるのは「時間」「距離」「体力」といったことが挙げられそうです。

これらのうち「時間」「距離」は移動を無くすことにより大部分が解決されると考えています。

場合によっては「能力」も課題になるかもしれませんね。
今はなんとか仕事をもらえている私ではありますが、
身体的な能力も、仕事をこなす能力も、未来の社会において十分なのか不足するのかは予想できません。この「能力」についても、今後の研究成果によってはある程度拡張可能ではないでしょうか。
Augmented Human(またはHuman Augmentation)といった考えがあります。
人体はネットワークやシステムや機器の力で拡張しようぜ!ということです。
人馬一体ならぬ、人機一体により、人間の能力を拡張して、課題を解決いけるかもしれません。

「体力」については個人的に非常に不安があります。
「健康なシニアが若者や社会を支える」を前提にして労働力対策を続けていると、いずれ大きな課題となるかもしれません。
なぜなら、我々の世代が高齢者になるころには、今の高齢者よりも体力が落ちているのでは?と考えているためです。

こちらのスポーツ庁の運動能力調査結果を見ると興味深いです。

①青少年(6歳から19歳)
②青年(20歳から64歳)
③高齢者(65歳から79歳)
の3グループについて運動能力を調査しているのですが、高齢者については右肩上がり(運動能力が向上している)とあります。
青年グループについてはほぼ横ばいか若干の上昇傾向、逆に青少年グループは若干の低下傾向にあります。
よって、今は「元気な高齢者が増えた!新しい労働力だ!」と言っていてもいいのですが、
はたして数十年後に同じ体力の高齢者が労働市場に存在するのかというと疑問があります。
可能な限り今の体力を維持しながら、それでも落ちていく体力を補わないといけません。
(とはいえ「移動を無くす」という私の関心事からすると、やはり未来の人間の運動能力は落ちていくと考えることが自然かもしれません。移動による運動効果もそれなりにあると思いますので)

我々世代の体力維持もしくは能力拡張も考えないと前提が崩れてしまいます。
そのため、能力拡張を伴うプラットフォームが必要になるのではと考えていました。
(↓過去LT資料より抜粋)

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3.自動運転車やロボットに優しくない、人間用に最適化された街

今の街や道路の作り、電線の配置などは、当たり前ですが「ヒトや車が通るため」に最適化されています。
ロボットや自動運転車、パーソナルモビリティ、ドローンが普及する前の時代に整備されたインフラですので当然です。

今後、こうした街の作り方自体に再考が必要となると考えています。

例えば、大昔はヒトが通れるだけでよかった道が、馬車が通れるように拡張され、その後車が通れるように舗装され、といった歴史があります。
将来的な労働力減への対策として、どうしてもロボットなどに頼らざるを得ない場面に直面すると考えています。
これからはロボットやドローンなどが「通れる」ように最適化されていくべきではないでしょうか。
既存の都市を作り直すのはなかなか難しいでしょうから、地方の過疎地から実験が始まっていくのかもしれません。

WikiPediaの翻訳となりますが、こちらの記事は参考になります。


4.SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは

社会課題を考えるときには、日本だけでなく、国際社会においてどのような事柄が課題認識されているのかを把握することも大事だと思います。
SDGsは2015年に国連で採択された2030年までに解決すべき国際目標です。
このうち、日本における課題、日本が解決に貢献できる課題、それぞれあるでしょう。

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日本の現状は下記のようです。


日本のスコア(Index Score)は78.5で世界で15位(SDGs Global Rank.156か国中)ということがわかります。個別のゴールで見てみると目標5(ジェンダー)、目標12(責任ある生産と消費)、目標13(気候変動)、目標14(海の豊かさ)、目標17(パートナーシップ)が低いことがわかります。

このSDGsすべてを単一の団体で解決することは不可能です。
ひとつひとつのゴール、ターゲットを認識した上で、自社(自分)が取り組める課題を見極め、他者とも連携した上で解決していく姿勢が大事だと思います。

こちらについてxRがどの部分に貢献できると考えているかも後程記載してみます。

■現時点での対策は

前段で考えた課題を踏まえて、今の時点でどのような取り組みが行われているのかを調べたことがあります。
少しではありますが、興味深かった事例を挙げてみたいと思います。

1.過去研究「展示鑑賞における空間利用を考慮した半自律遠隔ギャラリートークシステム」

ご縁があって東大檜山敦先生に戴いた「超高齢社会2.0」を読み、下記の研究の存在を知りました。

展示鑑賞における空間利用を考慮した半自律遠隔ギャラリートークシステム
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tvrsj/14/3/14_KJ00007578113/_pdf/-char/ja

「ギャラリートーク」というのはガイド役の方が絵画や美術品の見どころを来場者に説明するスタイルの展示で、展示物の理解を促進することが可能なようです。
ですが、このギャラリートークに対する説明者の負担は大きく、ガイドツアーの回数に制限がある、その負担をこのシステムで軽減することができるのでは、というモチベーションの研究でした。

そのために、学会員が遠隔地からロボットを半自動操作することで学会員の作業負担を軽減するシステムの提案と分析を行った研究です。
・プロジェクタ機能で必要な説明を展示物に並べて投影
・定型的な解説はロボットで自動化、インタラクティブな応答が必要な部分は学会員が応答
・ロボットは付近の人の位置を認識しながら半自律的に移動する
といった特徴があり、実験は凸版印刷の印刷博物館で行われていました。

※檜山先生の著書にはこの研究以外にも高齢化社会に向けた取り組みが多く記載されていますので、必読です!!

2.分身ロボットカフェ「DAWN」

2018年12月に、分身ロボットカフェというところに行ってきました。

こちらはオリィ研究所が2018/11/26~12/7まで実施した、遠隔操作ロボットを利用した喫茶店の公開接客実験です。
様々な理由で外出が困難な方が遠隔操作で接客を実施してくれました。
2020年には常設店舗のオープンを検討しているとのことです。

接客してくれた方はマサさん、さえさんという方でした。
マサさんはこのカフェが初めての労働だったとのことです。
今回初めて働き、「平日働いてから迎える土日の休みの有り難さを初めて知った」という言葉が非常に印象的でした。
働くということをただの賃金を得るための作業と考えてしまうと、提供すべき技術を見誤ってしまうかもしれません。
私にとってこのカフェでの体験は以降の考え方に大きな影響を与えることになりました。
「距離」と「身体的な能力」を超える力を与えるOrihime-Dというロボットに大きな可能性を感じました。

3.稲見先生の番組から

「事例」とは少し違うのですが、5/14(火)にNHKで放送された「「人間拡張工学がもたらす未来の身体」(視点・論点)」を見られた方も多いのではないでしょうか。

引用させて頂きます。

ではこのような技術は、私たちの生活をどのように変えるのでしょうか?
現在、様々な場所にエレベーターやスロープなどが設置され、バリアフリー化が進んでいます。これはもちろん望ましい変化ですが、実は我々の行動能力は環境と身体との関係性によって定められる、ということを見落としてはいけません。

「行動能力は環境と身体の関係性によって定められる」という一文が興味深かったです。
人間拡張工学によって移動の制約をある程度取り払うことがすでに可能となっています。
科学によって今までできなかったことができるようになる、これがもう進んできています。

私がどうこう言うより引用部分読んでもらったほうがいいですね。

もし人間拡張工学により、昨日できなかったことが今日できるようになり、今日できないことでも明日できるようになると信じられるようになるなら、私たちは老いと向き合いつつも、より未来に希望を持てるようになるかもしれません。
2019年の現在、残念ながら極めて限られた人しか宇宙に行く機会はありません。一方で人類は宇宙空間と並ぶ新たなフロンティアを開拓し、多くの人が活用しはじめています。それが情報空間です。人間拡張工学は我々が現在生活している世界での活動を支援するだけでなく、情報空間でも自在に活動するために身体を、IT技術によりいわば「ディジタルサイボーグ」とするための手段ともいえるかもしれません。
 誰もがディジタルサイボーグになり、変身、分身、合体まで可能となる、このSFのような世界が現実となりつつあります。人間拡張工学によって、身体とは何か、能力とは何か、そして人間らしさ、自分らしさとは何かと考える機会が、そう遠くない未来に私たちにやってくることでしょう。

すべて下記サイトより引用。

「環境」と「身体」の関係性は可変要素です。技術でこの間のギャップを埋めることができます。
そのために私ができることがまだまだありそうです。

■xRで何ができるのか

課題と現状の打開策を考えてみました。
ここからが本番です。
私が従事しているxR界隈の技術を使って未来をどのように設計していけるのかを考えてみます。

1.移動することが贅沢になる未来

まず好きな小説から一節を引用させて頂きます。

「物理的なアクセスはなくなりますか?」
萌絵は、真賀田女史の話の後半を無視して質問する。
「そうね。おそらく、宝石のように贅沢品になるでしょうね。他人と実際に握手することでさえ、特別なことになるでしょう。
 人と人が触れ合うような機会は、贅沢品です。エネルギー的な問題から、きっと、そうならざるをえないのよ。
 人類の将来に残されているエネルギーは非常に限られていますからね。
 人間も電子の世界に入らざるをえません。
 地球環境を守りたいのなら、人は移動すべきではありません。私のように部屋に閉じ籠るべきですね。」
~すべてがFになる THE PERFECT INSIDER|森 博嗣(1996)~

そして、cluster加藤さんの秀逸なblogをご覧ください。

これまでの社会は「物質を移動する」ということに多大なエネルギーを使ってきました。これからはそうはいかないでしょう。
移動することのコストと、移動することで得られるメリットのバランスが徐々に変わってきていると思います。
移動しないデメリットを移動しないことによるメリットが上回る水準まで達したら、まずは企業が変わっていくでしょう。
うまくすれば、都心にでかいオフィスを構えて従業員を集めてじゃんじゃんエネルギーを使うという従来の方法が非効率になっていくかもしれません。こうなるとリモートワークはますます加速するでしょう。
こうして居住地と就業場所は疎結合となっていきます。仕事上のやり取りも非同期になっていくでしょう。人と人が同期を取って動くのはやはりコストかかりますから。

また、個人の意識も変わっていくでしょう。
「なんで前までわざわざ同じ時間に同じ場所まで満員電車で移動してたんだっけ?」となるかもしれません。
VR会議ソリューションが多くなっていますね。ああいった集まり方さえできれば「物理空間は無駄」という感覚が少しずつ浸透していくかもしれません。
※とはいえVR内での入力方法がもっと洗練されないとなー。

ちなみに「VR界隈の人って勉強会とかで物理的に移動してること多いよねw」と冗談っぽく言われますが、これは私は当然のことと考えています。
「移動を無くす」という大きなテーマに向けて界隈のみなさんは日々学習し、努力し、実現させようとしているのです!
仁徳天皇の「民のかまど」のお話を聞いたことのある方も多いでしょう。
「社会全体から無駄な移動を無くす」という課題をテクノロジーで解決した後、ようやく我々VR界隈の人間は安心して家に引きこもれるのです。

2.都市の計画はどうあるべきか

今私が想像している未来の都市は、初めから「移動を削減」した上で、無駄なものを作らず機能を分散化した状態の都市計画です。
そこにはxRが必ず必要になると考えています。

前述のように会社機能がリモートで動けるようになり、「物理的移動をしないことが前提の会社」が増えてくると、都心一極集中の作りが非効率になってくると思います。
例えば超高層ビルに大人数を集める必要が無くなるでしょうし、電車も超緊密なダイヤでの運行が不要になるかもしれません。
将来的に不要となる駅も出てくるかもしれません。

過剰な競争をやめ、必要な分だけ作る、建てるようにし、代わりに遠隔地で働くためのインフラを整備してあげるべきではないでしょうか。
このときにxRもインフラとして必要になるのではというのが私の考えです。

結局のところ、人と人とのコミュニケーションにおいて、対面を上回る情報量のコミュニケーションは今後も実現不可能なのではないかと考えています(根拠はないし、対面を上回るもしくは同等になってくれればそれは嬉しいことです)。
「対面が一番」を前提に置いて「距離を超える」を考えた時、どのようにして自分自身を効率的に移動させるかが問題となります。
自分自身の存在は「顔」や「声」だけではありません。
「存在感」も一緒に移動させてあげないと、コミュニケーションロスが発生すると考えています。
これがただのTV会議、Web会議ではなく、VR会議やホロポーテーションのようなものが必要となるのではと考えた理由です。
実際にVR会議を使ってみると、「無言」でも伝わるものが多いことに気づきました。

人と話しているとき、目を見たりうなづいたりしているだけでなんとなく「理解してくれているな」とか「肯定的な反応だな」というのが伝わってきます。
この無言の感情表現を効率よく伝達するためには、VRやARによる表現が適切なのではと考えています。

こちらのスタンフォード大学の研究が興味深かったです。

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ARアバターの存在が実際の人間に対して与える影響について分析されています。
私はもともと「人型アバターなんて邪魔では。文字だけでいいじゃん」と考えていたのですが、ここ最近「人型であること」が人同士のコミュニケーション円滑化に必要なのではないかと考えるようになりました。
低レイテンシの人型アバターであれば利用者のストレスなく、存在感を表現できると今は考えています。

3.モザイク型就労とは

さて、ここで「モザイク型就労」について書いてみます。
「モザイク型就労」は東大の廣瀬先生、檜山先生が提唱している就労スタイルで、
時間モザイク、空間モザイク、スキルモザイクを集めることで
一人(あるいはそれ以上)の労働力を作っていこうという考え方です。
私はこれをxRで実現したいのです。

「時間モザイク」は、事情があって短時間しか働けない人や、リタイヤ世代など短時間しか働きたくない人の「働ける時間」を集めて一人分の労働力を作っていくことです。

「空間モザイク」はxRが得意とする距離を越えてコミュニケーションを取るようなものです。
前述の分身ロボット「OriHime」が可能としているのはこの部分と考えています。
「コーヒーを運ぶ」のように物理的作用が必要な作業であれば、遠隔操作ロボットやドローンのような物理的な存在が必要ですが、「会話をする」「案内をする」のように物理的作用が不要な空間モザイクについては、xRの力で価値を提供できるのではないでしょうか。

「スキルモザイク」は、一人一人得意分野が違う人間のスキルを集めて
一人のパーフェクトヒューマンを作るようなことです。
例えば10か国語話せて全科目教えられるようなスーパー教師がxRなら実現できる。見た目は一人で中身が複数人いてもよいのです。

根底にあるのは「必ず来る労働力不足」に対してどう立ち向かうかというテーマだと考えます。
廣瀬先生の著書「いずれ老いていく僕たちを100年活躍させるための先端VRガイド」や

檜山先生の著書「超高齢社会2.0」(前掲)を読むとわかりやすいです。

4.Project Blue Skyとは

「見た目による偏見」を無くすためにxRの力が発揮できるのではないか、と考えて私が勝手に付けた名です。
もちろん、ザ・ブルーハーツの「青空」から命名しています。

生まれた所や皮膚や目の色でいったいこの僕の何がわかるというのだろう
THE BLUE HEARTS - 青空

xRによってガワを一枚被ることで、実際の自分とは別の自分になることが可能です。
「VTuber」「バ美肉」といったポップな(?)取り扱い方がされがちと思いますが、非常に有効な使い道だと考えています。
見た目を変えると、聞き手側の聴講態度にも影響が出るといったような記事をどこかで読んだことがあります(どこで読んだか失念)。
また、理想の自分になって話すことで、いつもの自分よりも自信をもって人と接することができるかもしれません。
現代であれば、「顔を見せることのリスク」から守ってくれる作用もありますね。

必要なのはこの「ガワをかぶせる」ための技術へのアプローチャビリティかなと思っています。
いくら便利な技術とはいえ、使うのに煩わしい手順が必要だったり大げさなHMDが必須だったりするとなかなか浸透しません。
プラットフォーム化によって「xRのガワをかぶって人と会う」ことが簡便になるといいなと思っています(したい)。

5.SDGsの評価、どこに効くか

xRの発達とプラットフォーム化(インフラ化)によって、SDGsに貢献できる点があるのではと考えています。
具体的には下記のターゲットです。

8.5 2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性および女性の、完全かつ生産的な雇用およびディーセント・ワーク、ならびに同一労働同一賃金を達成する。
11.2 2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子供、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
11.3 2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、全ての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。
11.a 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。

これらのターゲットの評価指標を見てみると、

8.5.1女性及び男性労働者の平均時給(職業、年齢、障害者別)
8.5.2失業率(性別、年齢、障害者別)
11.2.1 公共交通機関へ容易にアクセスできる人口の割合(性別、年齢、障害者別)
11.a.1人口予測とリソース需要について取りまとめながら都市及び地域開発計画を実行している都市に住んでいる人口の割合(都市の規模別)
11.3.1人口増加率と土地利用率の比率
11.3.2定期的かつ民主的に行われている都市計画及び管理において、市民社会構造に直接参加できる都市の割合

どうですか?移動を減らし、居住地と勤務地を疎結合にすることで貢献できるxRの価値があると思いませんか?(思ってください)
ここの「公共交通機関」にはVRによる移動も含めたいんですよね。本当に個人的な想いなんですけど。

6.持続可能なxRの価値

こちらについても過去のLT資料から引用します。

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1~5と部分的に重複しているところもありますが、これらはxRによって社会に提供できる可能性のある価値と考えています。

ーーー2020/4/12追記ーーー

新型コロナウイルスの影響により数多くのオフラインイベントが実施困難な状況に置かれています。
そんな状況においても、バーチャル空間でなら握手会もできます。
ウイルス感染防止や物理的暴力から身を守るためにも、VRという技術は非常に有用と考えます。

ーーー追記おわりーーー

■自分は何をするか

色々と書いてきました。
最後に私が何をしたいのかを書いてみます。

1.xRを使ったディーセントワークの提供

「ディーセントワーク」とは、「働きがいのある人間らしい仕事」の意味です。
これをあらゆる人に対して提供したいと考えています。
人間が持つ能力、機械が持つ能力、時空間が持つ能力、これらをxRで拡張したいです。
遠隔就労や遠隔存在、人体拡張といったxRの基盤を活用して能力を拡張することでディーセントワークの実現を目指します。

移動を減らして効率的な就労が可能となるようなシステムを考え、作っていきます。

2.xRを使ったセレンディピティの提供

移動を削減し、効率化された都市において、セレンディピティ(偶然の出会い)ってどう実現すればいいのでしょうか?
不要なのでしょうか。
いくら移動を無くしても、出会いは担保しないといけないと考えています。
このへんはきっとFacebook Spacesが実装してくれるんじゃないかなと思ってます(他力本願寺)。

最後に

なんだかんだ言って、私はふらふらと飲み歩くのが好きなダメ人間です。
そのへんをうろついて、偶然の出会いに任せて過ごすのが好きです。
これはこの先も変わらないでしょう。
私の仕事がうまく行き、社会から無駄な移動が無くなったら、そのあとで私は「物理的な移動をするという贅沢」をひっそりと楽しみたいと思っております。

以上。初めてのnoteでした。

2019/6/5 morio


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