植物との共生世界
私は現在、花屋でパート勤務をしています。週に15時間程の短時間勤務です。
職場ではバラを担当しており、昨年は大量入荷したバラの管理に四苦八苦致しました。担当と言っても売り場での接客が第一に優先されるため、バラ管理は手が空いている時に行うというのが会社からの指示となっています。
その結果、管理時間が足りない。という実感だけが残り、バラの状態は惨憺たるものとなりました。
それを含む諸々を踏まえ、今年は入荷数を制限して欲しい事や、バラを管理する環境改善の要望を出しました。(昨年の失敗が一目瞭然で分かり、その改善策を提案した書類も提出した。)
過去記事に詳細を書いていますので諸々は割愛いたします。
環境改善については考慮して貰える運びとなりましたが、入荷数については受け入れられず更に今春、100株の仕入れがあるとの事。昨年売れ残った60株を含め、合計で160株のバラを抱える事となりました。
私の希望は、健康な状態を保ったバラを売り場に展示しておく事でした。
入手困難な人気バラ、昔からの定番バラ、上級者を唸らせるクセのあるバラ、初心者でも育てられる耐病性の高いバラ、デルバールやコルデス、デビットオースチン、ロサオリエンティス等の、各ブランドを代表するバラ。
これらを各数点ずつ、管理に充分な手間を掛けられる範囲で計20品〜30品迄の仕入れを希望しましたが、却下されてしまいました。
会社側は品質よりも、数で圧倒する事を選んだのだと理解したところです。
バラ購入に関して変化が起こっている事も大きいと思うのですが、
対面販売でバラは売れなくなってきました。(バラ専門店は例外とします)
バラ愛好家の場合、バラの購入先はネットを通してバラ生産者から直接買うというのが主流となりつつあります。
そのメリットは、発送される直前まで生産者による管理が行き届いている点にあり、バラの好む土を使い、バラ専用スリット鉢に丁寧に植え付けて送られてきます。何よりバラを大切に想う気持ちがそこに詰まっているのです。
デメリットは購入予定の株を直に見ていないという事くらいでしょうか。
これは生産者から何度か購入を続け、そこを信頼している場合に限る話ではありますが。
それでも担当している以上は気持ちを切り替えて管理しようと思います。
何といってもバラ担当者は私一人なのだから。
写真でしか見た事のないバラ、個人の好みでは決して購入しないであろうバラの数々を、年間を通して育成出来るのだと思うと、少し気が楽になってきた。(様な気もする。)
植え替えを終え、芽吹き始めた自宅庭のバラを眺めている時、ふいに「共生」という事を思い出しました。
この言葉は元々は、異なるふたつの生物が支え合って生きている様子を表したもので、フランスの植物学者アンドレアス・シーバー氏がそれの提唱者です。
「植物は土壌に住む微生物や菌類と共生し、生きている。」という内容の話です。
弱った植物はホルモン物質(伝達物質でもあると言う)のストリゴラクトンを根から放出すると、土壌中のアーバスキュラー菌がそれに反応し、ファンタジックな表現を使うなら、SOSを受け助け取ったアーバスキュラ―菌が助けに来るのです。そしてアーバスキュラー菌は植物にリン酸等を与え、水分のある場所へ根を導き、それを受け取った植物は光合成で得た栄養分をアーバスキュラー菌へと返します。
「共生」は植物の世界から生まれた言葉なのです。
庭の植物を眺めていると時折、「失敗した・・・」と思う事があります。
そんな時は決まって、繁殖力旺盛な植物が他の植物を駆逐しながら勢力を広げているのを見た時です。でもそれは、それを知らずに植えてしまった私のミスであり、その様な植物にとっては植えられた場所が狭すぎた、または、品種改良が進んだ植物よりも、ただ単に強かっただけなのかもしれない。
要するに環境が適していなかった。
どこの世界にいても、SOSを発した時にその声に耳を傾けてくれる人がいなければ、その人は声を出す事を止めてしまうかもしれない。
幸運にも私にはその声を聞き助けてくれる同僚がいます。
でも私のSOSが一番届いている先は、目の前の植物なのではなかろうか・・
長年世話を続けた庭のバラやハーブや宿根草たちが、「元気をだして。」と言っている様に感じた事は数知れず。
またふいに浮かぶ、「こうすればもっと良くなるのではないか?」等のアイディアも、植物からの伝達を受信していたのではないのか・・・・。
思い込みかもしれません。
けれども何らかの伝達物質を、人と植物が共有し共に生きているとしても何ら不思議ではない気がします。
植物からのSOSに反応するアーバスキュラー菌については殆ど解明されておらず、土壌の世界は人類にとってはまだまだ未知の世界の様です。
生きていく上で、環境はとても大切だと思います。
私自身、この環境に適していないと思う時もあります。
でもそこ(職場)に、植物がいるということは、私にも何か出来る事が残っているとも思えるのです。
虫を嫌い花壇の土に駆除剤を撒き続けるということは、その関係性を断ち切るということ。無農薬でのバラ栽培は根気と呑気が共存し成り立っていて、土壌の多様性が高まるにつれ病気に強いバラに育ってくれました。
私にできることはとても小さい。
けれどもその積み重ねはとても大きい。
庭で学んだことを忘れるところでした。
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