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幸せな日

仕事を早々に終え、少々の信号無視と駆け足で向かったのは、銀座SIXの6階にある蔦屋書店。

SNSで見つけたトークイベント「誰かの幸せは、あなたの幸せで、世界の幸せだ。」に参加してきた。僕の大好きな原田マハさんが、これまた僕の大好きな小説『本日は、お日柄もよく』の制作秘話を語ってくれる。

このトークイベント、数日前にもう寝ようかなと思うくらい眠気が襲ってきた時に見つけ、眠気をとっぱらい即申し込み。次の日からは、もう何度目かわからない『本日は、お日柄もよく』を読み始め、今か今かと待ち侘びた。

そわそわしていた。大好きな小説を書いた作家が、目の前に現れる。しかも制作秘話を語ってくれる。どんな人なんだろう。これだけ綺麗な言葉を紡ぐことができるのだから、作中の俳人・二ノ宮驟雨先生のような人かな?それとも久遠久美のようなビシッと決まっている人なのかな?もうすぐ間近で見れるっていうのに自分の中の原田マハ像を妄想で作り上げてしまっていた。

そして迎えたトークイベント当日の19時。開始とともに、原田マハさんが現れた。

にこやかで落ち着いていて。同じ空間にいるだけで、幸せな気持ちになった。

冒頭は優しく語りかけるように話し始めて、想像通りだった。どっちかというと、二ノ宮驟雨先生。けれどもすぐにノってきたのか、近所のおばちゃんみたいにテンポよく話が進む。イメージがどんどん崩れていった。手の届かない存在だと思っていたけど、昨日まで隣に住んでいたかのような、親しみを勝手に感じた。

何より楽しそう。

『本日は、お日柄もよく』の制作秘話を聞ける!絶対自分が一番楽しみにしている!と思っていたのに、おそらくその場を誰よりも楽しんでいたのは原田マハさんだった。「今日はもう話したくて話したくて。90分で足りるかしら」と、アクセル全開。

印象に残ったのは、他の作家がどうとか全く知らないが、登場人物を「ワダカマ」「こと葉」「あっくん」と呼んでいたこと。編み出した小説はもう何十冊になるというのに、一人一人のキャラクターを愛していることが伝わった。

他にも語られたのは、党首討論や由比ヶ浜のシーンに込めた想い、トウタカのリブランディングプロジェクトでの執筆秘話。自分が思っていた以上にたくさん言葉と向き合って生まれてきた作品だったんだな、と改めて感謝の気持ちが生まれた。

そしてなんといっても忘れられないのは、話がよく脱線すること。

そして脱線した話の一つ一つがどれも印象に残るという、とんでもない偉業を成し遂げた。又八、豆腐屋の営業、汚い中華料理屋。どれもが印象的なエピソードで、今の原田マハさんを作っているんだなーと、秘密を共有できた感覚で、なんだか嬉しい。

90分があっという間に過ぎた。幸せだった。

帰り道は妻と余韻に浸りながら、「結婚式の引き出物はこと葉のフォーチューンクッキーにしたいね」と話したり「子供にこと葉って名付けたら姓名判断的にどうかな?」と妊活を始めてすらいないのに二人して妄想を膨らませたり。

思えば『本日は、お日柄もよく』に出会っていなければ出版業界目指してなかった。

「いい方に変わるなら、変わる方がいい」

スピーチライターに挑戦するか悩むこと葉に親友の千華が投げかけた言葉が、これまでの自分を動かしてきた。今は出版業界から離れているが、何かに挑戦しようと思う時はいつもこの言葉を思い浮かべる。

そして出版業界を目指していなかったら妻と出会っていなかった。原田マハさんは僕ら夫婦の恋のキューピッドかもしれない。


イベント開始前


こと葉のフォーチュンクッキー


直筆サイン入り『本日は、お日柄もよく』


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