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『カケラ』を読んだ

久しぶりに湊かなえ作品を読んだ。『カケラ』。

一人の少女の死んだ。物語の軸となる美容整形の外科医が、その娘と関わりのある人たちから話を聞き死の真相を解明していく、という展開になっている。

イヤミス要素はしっかりと出つつも、個人的には今までで一番メッセージ性の濃い作品だと思った。

湊かなえ作品を読み終わった後は大体、胸元をかきむしりたくなるような、ゾクゾク感が残る。そして癖になって、また読んでしまう。いわゆる中毒性がある、という感覚。その代表格は『告白』。出版から10年以上経つけど、僕はいまだにたまに読む。

『カケラ』は、エピローグでの美容整形の外科医の講演会がものすごく印象的。エピローグまではいつも通り、僕の好きなイヤミスだった。なのに、エピローグでそれまでの物語を活かしつつ、

「自分の理想の形が必ずしも他人にとってもそうではない」
「他者に基準を委ねないで」

湊かなえ『カケラ』 (2023)集英社 P300, P305

そして

「あなたというカケラがぴったりはまる場所は、必ずあるから」

湊かなえ『カケラ』 (2023)集英社 P305

というきっと伝えたいであろうメッセージに繋げていく構成。カケラ、というタイトルまでも繋がった。天才すぎると思った。

きっと湊かなえさんがこの小説を書いていた時期、僕自身直接感じたことはなかったが、どこかで外見主義という風潮によって、生きづらさを感じる人がいたと思う。「僕自身感じたことがない」ということは、加害者になっていた可能性すらある。もし身に覚えがなければ、きっとこれを読んでいるあなたも加害者なのかもしれない。

登場人物たちも、一部は加害者だ。でも本人たちは気づいていない。

だから、湊かなえさんは少しでもみんなが生きやすい世の中になる、「あなたというカケラがぴったりはまる場所」が見つかることを願って、『カケラ』を書いたんだと思う。と勝手に推測する。

『カケラ』を読み終わった今、僕も思う。

「すべての人が、他者を外見で判断するのではなく、内面に目を向けるようになれば、もっと生きやすい世の中になるのではないか」

湊かなえ『カケラ』 (2023)集英社 P299

と。

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