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【落下の解剖学】ネタバレ無しで感想+ネタバレちょっとありで考察

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概要


2024年2月23日よりロードショーされた「落下の解剖学」
監督 ジュスティーヌ・トリエ
脚本 ジュスティーヌ・トリエ、アルチュール・アラリ

あらすじ


雪深いフランスのとある山荘にて、男性が転落死した。第一発見者は、視覚障害のある彼の一人息子だった。
当初事故かと思われたが、人気絶頂の小説家の妻サンドラに殺人の容疑がかかる。
法定で繰り広げられる嘘と真相の暴露の着地点とは。

感想(ネタバレ無し)

どうしても言わないと気がすまないので、まずはひとこと。

これは、サスペンスではありません!濃密なドラマ(会話劇)です!!

たぶん、予告編とかから間違えて「真相解明」を目的にして作品を観る人が少なくないと思うので注意です!

主人公の小説家サンドラ(役ザンドラ・ヒュラー)も、超絶色っぽい弁護士ヴァンサン(スワン・アルロー)も、第一発見者の息子ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)も、名犬スヌープも!

みんなすごい演技してます!
シーンごとのメタファーやそれぞれの「真実」の考察は後回しで良いので、怒涛の152分を楽しんでほしいです!

作品のドラマ性に、わざとチラつかせる演出上の悪者に見える光の当て方と、様々な「不快さの表現」も楽しんでほしいです!

そりゃ、第81回ゴールデングローブ賞【脚本賞、非英語映画賞】も第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門【パルムドール】とるわ…








ーーーここからネタバレあるので気をつけてーーーー








考察(⚠ネタバレちょっとあり)


落下したら「終わり」なのか?
今回のお話の中で色んなシーン、色んな関係性が「終わり」に向かって落下を続けます。
ただし、後半のある人の発言にあるように「終わってもなにかがあるわけではない」ところがとても大事なテーマである気がします。

人は何かしらの流れの「最後」を自分に帰着させようとしがちですが、関わる人が多ければ多いほどそれは本来望んだ「終わりらしい終わり」はなく、結局自分の見たい「終わり」をどれだけ信じるかに過ぎない。
ということをこの作品では突きつけられます。
ある人には残酷なまでに、またある人にはあっけない離別で、そしてある人(?)にはあらたな始まりであり……
また、これがすべての人、つまり結末を描きたくてしょうがない視聴者の私達にも当てはまるのがドキリと気づかせられる作品でもあります。
(他にも色んな問題提起を監督はしてるので、そこら辺はぜひパンフレットを読んでほしいところ!!)

なので、個人的にそれを突きつけられた後半のテレビの解説者のコメントは非常に絶望的で好きでした。

また、個人的にはダニエルがそうあってほしいと願った「真相」に家族が寄り添う着地点をとった様子が最後の眠りにつくシーンに現れてると思ってます。

この作品で求められているのは過去におきた事件の真実ではなく、「愛しい人との未来」だと思いたいので…


回想が無い
この作品には意図的に真実をめくる「回想シーン」が登場しません。

法定内での2つのシーンも、「真相」ではなく誰かの【望む真実】や【心情のイメージの表現】でしか無いので、そこの不快感にもあとで気がついてほしい!


言語のオブラートという不自由さ
この作品では、主人公の小説家はドイツがルーツ、夫の事件の真相が問われる法廷はフランスがルーツ。そして、夫婦で話し合った結果「家」では英語が共通語としての着地点でした。
これらの言語についてのそれぞれの「思い」と「使い分け」も深読みしてほしいポイントです。
狡猾で打算的な一面であったり、メッキの剥がされたむき出しの感情であったりと、さまざまな味方ができます。
ここらへんは、いくらでも斜めに見ていいところだと思うので、ぜひ皆さんもうがって見てほしい!


いかがでしたでしょうか。
まだまだ話し足りないですが、またいつか同時視聴したいかなと思います。

それではみなさん。
さよなら✕3

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