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そのむこうで鳴る

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ハーモニカが響く。呼吸とこすれる金属の小さな板の震えが何重にも重なって音色をつくる

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ギターとハーモニカが呼応する。鍔迫り合いのように激しく絡み合うこともあれば、川を隔てた二人のようにそれぞれの場所の豊穣を育むこともある

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ライブハウスのスタッフが編み上げた金属と配線とガラスの塊がステージの天井を埋めている。それが放つ光は演者の動きと乗算されて幾万にも変化する

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シンバルにスティックが叩きつけられる。打撃にたわみ、擦れ合えば震える。苦悶するように、しかし口元には笑みを浮かべてスティックを振るう奏者は、この振動の強弱でステージ上に音の構造体を組み上げる

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バスドラムは響く。激しく変化するスネア、シンバル、タム、ハイハットの音の明滅の下で、フットペダルで繋がれた肉体の重量を低音に変換、フロアの人々の内臓をえぐる

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奏者の指でベースの弦が弾き出す音が持つ破壊力。一音一音が重く、深い。刻みつけるように、音の楼閣に色と陰影を与えてゆく

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ドラムセットを支えるスタンドの足元を、ベースとマイクにつながるケーブルが這い回っている。モニタースピーカーに隠れた配線は、ステージで発生する音を電気信号に変え、遅延なくフロアへと届けている

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ギタリストは詩人のようだ。指で、ピックで、繊細な囁きから大音声、金切声から心地よい低音までを自在に操り、リズムの中に情景を描いていく。ミットを打つ固い拳も、弱者を労る掌も、等しく張り詰めた弦に詩情を描いてゆく

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時に激しく、時に細やかに打ちつけられるシンバルを、分厚いフェルト越しに硬質の金属部品が挟み込んでいる

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光と音がステージから放たれている。ステージの放射にフロアの観客が照らし出され、長い影ができている。人々が光源に近づくにつれ、濃く明瞭な影が床を埋めてゆく


※リコーフォトアカデミー修了生の作品展で掲載していただいた作品の、抜粋前の文章と写真です。組み写真4枚を提出し、リアルのプリント1枚は新宿会場で、残り3枚を上記リンク先のページに掲載していただいていました。岡嶋和幸先生の講座の、私の本名・竹内聡のところに掲載されています(会期が終わったらリンク先のページはなくなる可能性あり。新宿会場のプリント掲示は2021年4月30日まで)。

ただ、講座の方針で十枚一組の作品として作っていたので、実際に作品として表に出した四枚とステートメントは抜粋版ということになります。そこで(実はまだ完成とはいえない状態なのですが、)本来の形でも表に出しておきたい気持ちがあり、また、モデルになってもらったバンド・NONMALTの魅力をもっと出したい気持ちもあるので、このページに掲載しました。

音が聞こえる作品をテーマに撮影と写真選択を進めました。講師の岡嶋和幸先生と撮影許可をくれたNONMALTに感謝します。

そして、ここまで読んでくださったあなたにも感謝を。ありがとうございます。

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