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1月に読んだ本の感想など

1月に読んだ本の感想などを描きます。

竹本健治著『涙香迷宮』

このミスなので読んでみた。
あらすじは、天才囲碁棋士の牧場智久が、明治時代に活躍した小説家黒岩涙香の残した暗号を解くついでに殺人事件も解決する、というもの。
いろは歌をテーマにしており、言葉遊びの謎解きについては非常にレベルの高い作品。一方で、殺人事件のくだりがついでになりすぎているような印象があった。
読み味としては高田崇史著『QED』シリーズや伊勢谷武著『アマテラスの暗号』に近く、言葉遊びの謎解きが多く殺人事件が軽く扱われているという点は『名探偵コナン』のような雰囲気の作品。
読みやすくページ数もそこまで多くないので普段漫画でミステリを読んでいる人にも勧めやすい一冊。

平野啓一郎著『ある男』

有名なので読んでみた。
あらすじは、弁護士の城戸がかつての依頼者から、事故で死んだ元夫が偽名を使っていたので正体を探って欲しいと相談を受け、調査を始めるというもの。
ミステリのような要素があることやテーマ性から、東野圭吾のミステリではない長編作品のような雰囲気がある。
なぜ依頼者の元夫は偽名を使ったのか。さらに偽名でなく、自分の人生も偽っていたのか。「人生とは何か?」という問いかけから始まり、そこからさらに「幸せとは何か?」というところを読者に考えさせようとしているような印象を受けた。
面白かった。

三島由紀夫著『潮騒』

三島由紀夫だし、そんなに長くないから読んどくかという感じで読んでみた。
あらすじは、ある島で暮らす漁師の若者が、島に帰って来た少女と恋に落ちるというもの。
まず主人公は退屈なような暮らしをしていて、そこに美しい少女が現れて恋に落ちるが、少女には許嫁という恋敵がいて、少女の父親にも引き離されるが、二人は試練を乗り越えて父親に認められてハッピーエンド。というあまりにも王道ラブストーリー。
現代でも定期的に大ヒットする恋愛小説が出てくることがあるが、正直潮騒で上記のような内容のハッピーエンドで終わる恋愛小説は完成されているのでこれだけ読んでおけばいいと思う。あと最近の恋愛小説は男が軟弱だから説得力がないところ、潮騒ではゴリゴリの漢気溢れる若者が主人公だから好感が持てる。
二人が恋に落ちるまでの展開が早すぎるところは少し気になった。でも今の恋愛小説の方がそのきらいがあるので問題はない。
ラストシーンの主人公の心情描写は色々と解釈の余地がある。みんなも主人公がなぜこのように思ったのか考えてみよう。

後藤明生著『挟み撃ち』

マシュマロで勧められていたので読んでみた。
あらすじは、主人公が昔無くした外套のことが気になり、昔住んでいた場所や古い友人を訪ね歩きながら過去を回想するというもの。
この作品はストーリー自体に面白さは特になく、取り止めもないことを取り止めもなく話していくような風合いの作品になっている。しかし取り止めもないように見えて実は作品の中で無駄なエピソードというものは入っていない。というよりもこの作品は無駄だけで構成されているようなものなのだが、無駄の中でさらに無駄な部分が省かれている。ここで語られる無駄に見えるエピソードは、すべて他の無駄なものに結び付けられている。
終盤では昔の外套を探し回っている現在の自分と、昔の自分を知らない現在の知り合いは他者である、というような話が出ており、物語の冒頭に出てきた無駄なように見えた部分とも繋がりが生まれる。これがちょうど作品の冒頭と終盤で主人公を挟み込んでいて、挟み撃ちという一見するとこの作品に付けるには物々しいように見えるタイトルも回収している。エモである。
いとうせいこうに影響を与えたらしいので、ヒップホップが好きなみんなも読んでみてはどうか。

柴田哲孝著『RYU』

以前読んだ『TENGU』『KAPPA』が面白かったので読んでみた。
あらすじは、沖縄で謎の龍のような生物が撮影され、その近辺で家畜が謎の方法で殺されたりや行方不明者が出たりしているため、その関連性や謎を追う、というもの。
緊迫感の出し方やアクションの書き方が巧みで、エンタメ小説としての完成度が非常に高い。一見荒唐無稽なようなストーリーにも見えるが、大きな破綻もなく説得力もある。
このような、著者が膨大な時間をかけて行った取材や一次資料から得た知識によって生み出される作品はやはりレベルが高い。
面白かった。

三津田信三著『首無の如き祟るもの』

有名なので読んでみた。
あらすじは、山奥の媛首村で起きた複数の首無し殺人事件について、媛之森妙元という作家が小説で当時の様子を描き真相を究明しようと試みるというもの。
本格ミステリらしい構成に、本格ミステリらしいストーリー展開、本格ミステリらしいトリックと、かなりミステリ好きには評価が高くなるであろう一冊。物語の雰囲気や時代背景などを考えても、『犬神家の一族』のような趣がある。
ページ数、登場人物が共に多いため混乱することも多いが、登場人物紹介を落ち着いて確認すれば問題ないと思われる。
トリック自体はミステリ好きならばある程度予想のつく展開だと思われるが、それ以上の展開があったのが嬉しいところ。

とつげき東北著『新 科学する麻雀』

最近雀荘で負けが混んできたので買ってみた。
牌効率や何切るといったものではなく、押し引きについてがよく分かる内容になっている。自分がどの状況で、他家がどんな状況の場合、どういった牌をどれくらい押していいかということが膨大なデータをもって解説されている。
また初心者でもわかりやすいよう、「自分が親なら推し気味に」といった点を重要度の高い順にA、B、Cとランク分けした上で強調表記してくれいている。この辺りはありがたい。
この本を読んでから雀荘で10戦中7トップと鬼のトップ取りをできたのでおそらく効果があるのだろう。ただ上振れしただけではないはずだ。上振れではない。上振れではない!

1月はそこそこくらいに本を読めました。2月は短いから本が読めなくても笑って許してね。ずっと大切にしてね。永久保証の私だから。