おとしどころ 5

            mosoyaro

 1ヶ月後
あれから1ヶ月の間私達は優作からの情報をもとに作戦を練った。

営業所のスタッフは4人。
1人目は所長、本田亮介、40歳、妻と小学生の娘がいる。
妻は保険の会社役員で仕事人間。大学の時から付き合って結婚した。
知り合いに夫のショールームを紹介して売り上げに貢献している。
お互いに働いているから生活費は決まった金額だけ家計に入れて残りの使い道には干渉しないのがルール。
ブランド物が大好きで共通の趣味はショッピング。
娘はそんな2人を見て育ったせいか、小学生なのに高いブランドものを学校に持ってきて自慢するから、友達からは嫌われてる。

2人目
近藤賢治。33歳、独身。身長が高くイケメンなので女性受けがとにかく良い。
裏の顔は女癖が悪く、クズ。
プライドが高い。お金が好き。
だけど頭は良くない。

3人目が先輩山本岳、独身、親と同居。金遣いが荒い。
お客様からの評判は抜群に良い。
とにかく営業が上手い。売る為にならお客様から何を言われても笑顔をたやさない。
反面スタッフ同士の時や彼女の前では短気でキレると怖い。
趣味はジョギング。

3人に共通する所はスポーツジムで体を鍛える。同じジムに通っている。
そこで話をして次のターゲットを決めている。
コーヒーが好き。

事務職、倖田まり、25歳独身。性格に難あり。闇を抱えてそう。
ショールームに来店する男性のお客様目当てに就職。彼氏はいない。
給料は営業とは違いあまり良くないはずなのに、生活が派手。お金の出どころが気になる。

この営業所には他の店舗にはない部屋がある。
VIPルームは他の店舗にもあるが、ここはもう一部屋、超VIPルームがある。
二千万以上の車を購入するお客様を接待する部屋で、広いワンルーム。
高級ソファーがあり、果物やお菓子。お酒もある。秘密が守られる場所。
急に外から入って来れない。
暗証番号が必要な場所だ。
超VIPなお客様と営業の3人だけが入る事が出来る。
事務員にも入らせない、徹底管理している。

ここで快適な気持ちになってもらいながら商談を進めていくのだろう。
琴の記憶ではこの部屋で写真を撮られてる。

作戦実行するには人手が足りない。
私とリンダは顔が先輩に知られているから作戦後報復されないように顔は絶対に見られてはいけない。
琴の事を感づかれてもダメだ。

優作に頼んで手配しでもらった。

1人目は元自衛官、リサ。
2人目はスポーツジムインストラクター、キャサリン。
そして3人目は元女子柔道日本代表、ユウキ。 
皆若くて強い、そして女の私から見ても魅力的。
反撃されても負けない3人。
この計画を話したら快く引き受けてくれた。
優作の紹介者だ信頼は裏切らない。

超VIPルームの暗証番号はこっそり小型カメラを取り付けてそこから番号を盗撮した。

全員集まって大方の計画の説明をした

作戦2日前。
着飾ったキャサリンとユウキがショールームに客のフリして来店する。
その日は説明を聞いただけで帰る。
パトロンがいるように演技。
1番高い車の説明をさせる。
次の日、もう一度2人でショールームへ。
他店で見てきた車の話をし迷っている事を話して帰る。

その後、所長から電話がかかってきたら、ここまでは成功。
再来の日時を決める。
その時こちらから閉店ギリギリを指定。

実行の日、美味しいコーヒーを差し入れると言ってデリバリーする。
そこに眠り薬を仕込んでおく。
防犯カメラをオフに。
VIPルームへ誘導される。
3人がコーヒーに口をつけて飲むのを確認する。

3人が眠ったら内側からドアを開ける。
リンダと私と優作。リサが入って3人の洋服を脱がせ裸にする。
手足を縛り動けなくして、口にはテープ、目隠しも。
3人の写真を撮る。リンダは準備していた「装置」を取り付ける。
3人の目を覚まさせる。
「装置」の説明。
全員退出。任務完了。

「こんな流れになるけどどうかな。
質問とかあったら言って」

「もしもの時に備えて痴漢撃退用の電気ショックも準備しておいたほうがいいな。途中で目を覚ました時用に。
この3人かなり用心深いから。
1つ確認しておきたいことがある、聞いていいか」
「何」
「装置て言ったけど、何だっけ。
俺聞いてなかったけど」

「あれ、前に話してなかったかな。話してたと思ってた。ごめん、、じゃああらためて。
この中で男性は1人だけだし、話すの気が引けるけど。

簡単に言えば3人を裸にして縛ったあと、アソコに輪っかを取り付けるの。

名前は「懺悔のリング」

「はぁ輪っか。どんな」

「孫悟空が頭にお釈迦様からはめられた輪っかをイメージしてみて、わかるかな」
手で形を作って説明する。

耳たぶにチップを埋め込んで、そこから信号が出るとアソコに取り付けた輪っかがキュンと締め付けるの。
そうしたら痛くて何も出来なくなる。
特別な樹脂で出来ていて、外そうとしても切れないし、熱でも取れない。
金属じゃないから飛行機にも乗れる、大丈夫。
排尿には支障ないから生活には困らない。ただし10年は取れない。
ただ痛い、締めつけた時は痛くて苦しいらしい、だけど死にはしない。そんな装置。
優しすぎるかな」
私はにっこり微笑んだ。他のメンバーも笑って聞いてる。
優作だけ顔色が悪くなっている。

「そんなの一体どこで手に入れたんた。証拠が残るじゃないか、まずいだろ」

「私NPO法人で女性の人権団体に所属しているの。そこには沢山女性の悩み事の相談が寄せられる。
中でもレイプや痴漢、ストーカー被害の内容が多い、泣き寝入りのパターンも。
未然に犯罪を防ぐのが難しい中、どうしたら被害者の心に寄り添った処罰、二度とそんな事を起こさないように抑制ができないかを話し合っていたら、サポーターメンバーがボソッと呟いたの。
「孫悟空の頭につけられた輪っかが有れば良いのに。悪さをしたら頭を締め付けるやつ」
って

それを聞いた別のメンバーが、大学の研究で人体サポートのAIを作っていて、
「できるかも」
って言って本当に作ってきたの。

すごいのその子は。
子供の頃からのあだ名は天才美少女博士。
ちょっと変わっているけど良い子。
とにかく精密なロボットを作るのが得意。頭が良すぎて教授達も一目おいてるのよ。
若い教授候補。
顔はアイドルみたいに可愛い。
本人は人間の男にはあんまり興味がなくてAIロボットで理想の彼氏を作ってる。
営利目的ではない。完全に弱者に寄り添って作ったから、悪用されないように私達が管理してる。
まだ誰にも試したことが無かったから今回はチャンス。
それに、警察に通報したら自分たちの悪事がバレるから言わないよ。
あいつらもそう思っていたから裸の写真やビデオを撮ってたんだろうし。
被害届を出さないってわかっているから。
それと同じ。そして男のメンツって言うやつもズタズタになるだろうし。

卑怯な手を使って多くの女性を苦しめてきた罰にしては軽いかな。一応日常生活は送れるから。
でも痛みを10年我慢するって相当苦しいよ。誰にも言えないだろうし。
毎日後悔させたい。
人の心を殺しておいて、自分たちだけ快適に生きようなんて虫が良すぎる。
現実問題としてあいつら殺せないから、苦肉の策ってところかな」

「要は、勃起できなくなるんだよな」
「そう、人間の脳は快感を感じると特別なホルモンが出るの、快感ホルモン ドーパミン。
その時発生するわずかな電磁波を耳に埋め込んだマイクロチップがキャッチしてアソコの輪っかが反応し締め付けて痛みが走る。
誰かを陥れようとして脳が興奮状態になってもドーパミンはでる。
快感だけじゃなく、美味しい物を食べたりしても反応するから、何をやっても生きた心地がしない、幸せを感じられない毎日が続く。
10年そんな生活をおくっていたら、もう悪さはしなくなると思う。
再犯させないように痛みを体に覚えさせるから」
優作をのぞくメンバーは拍手した。
優作だけが
「つくづく恐ろしい装置だな」
女は怖いという視線を私達に向けてきたが気を取り直して聞いてきた。
「で、いつやる」
「次の土曜日でどう」
「オッケー、皆んな最善を尽くそう。
だけど良いのか、真空。
琴はお前の恋敵じゃないのか。
大和は琴と結婚するぞ」
「良いの、大和が幸せになってくれたら私も幸せだから。
きれいごとじゃないよ。本当にそう思っているんだからね」

そう私は心から大和の幸せを願っている。

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