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「子供持たない」がスタンダードになる日

「もすこさんは子供欲しいですか」

大学時代の後輩にこう聞かれた。
子供に関しては自分の中で確固たるものができあがっていたので素直に答えた。

「今の時点で絶対子供が欲しい、とかはないかな。でももうアラサーだし、将来子供が欲しいって思ったときに後悔したくないから、妊活とはかしようかなって」

後輩からは「わたしと一緒ですね」と言われた。
続けて後輩はいう。

「あと15年くらいあとに生まれてたら、また違ってたと思いますけど」
「どういうこと?」

「与党と野党がひっくり返ったらっていう意味です」という後輩に、はて政治の話に移ったのかと疑問符を浮かべた。

「つまり、いまは「子供を持つ」が与党で、「子供持たない」が野党なんです」
「ああそういう意味か」

彼女曰く、多様性の時代とはいえ、いわゆるスタンダードな女性の人生=「結婚、妊娠、出産」という世間一般的な考えが変わらない限り、「子供を持つ」という選択肢を完全には捨て切れられないらしい。

「だからもし15年後くらいに、「子供いらない・持たない」が与党になってたら、それでも自分は子供を持つ選択肢を考えるのかなあって思うんですよね」
「正直、自分は独り身でいいかなと思っています。一人でも楽しいし。でも、会社で40歳くらいの未婚の女の人を見ると、「何か問題があるから結婚してないのか」とか「ああいう性格だから結婚できてないんだろうな」とか無意識に考えちゃうんですよね。わたしも将来そう思われるのかなあ」

聞いていて、相変わらず素直な子だなぁと感心した。
でも確かに、もし「子供いらない・持たない」が多数派だとしたら、はたして自分は子供を持つことを望んだだろうか。
「結婚しない」が多数派だとしたら、自分は婚活をしていただろうか。

「そうなると、ゆるやなか破滅に向かっていきますよね」

話を聞いていた後輩の男の子がつぶやいた。
確かに、いまでも十分少子化だと日本では騒いでいるが、もし「結婚しない」「子供いらない・持たない」が多数派になってしまったとき、日本はゆるやかに消えていってしまうのかもしれない。
かといって、日本の存続のために子供を持とうと思わないのが人間というものだが。

「なんだかんだ、子供の養育費のこととか子供が生まれた後の大変なこととかあんまり深刻に考えず、本能のまま生きてる人が人類の繁栄に貢献してるんですかね」
「まぁ、結婚相手の条件とかお金のこととか考えすぎて、子供持ててない人は多いかもね」

自分が子供を持たない選択肢を捨てきれないのは、はたして「本能」のせいなのか。はたまた世間の一般論に引っ張られているだけなのか。

「あ、そういえば会社にめっちゃクズな男の先輩がいるんですよ。結婚して子供もいるのに、若い女の子たちにちょっかいかけてて…!」

そこからは後輩の職場にいる浮気癖のある先輩について、ありったけの愚痴を聞いた。
日本では多方面からバッシングを受けるであろうその先輩も、生まれる時代・地域が違ったら、むしろ勇者のように褒めたたえられていたのかもしれない。

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