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逆噴射小説大賞、私的ピックアップその2

こんばんは。わたしは餅辺です。真の男の真の男による真の男のための書き出し小説大賞、逆噴射小説大賞の終了から結構経ちました。

noteというメキシコの荒野に放たれた真の男たちは、そのままプラクティスを続けたり、レビューや雑記を書き始めたり、あるいは紅茶の海に戦いの場を求めたり(わたしもその一人です)……それぞれの戦いを続けています。

今回の記事では、逆噴射小説大賞という広大なパルプの海から、わたしがスキをつけた作品をご紹介するピックアップをさせていただこうかと思います。ちなみに前回は執筆中の真の男への配慮もあり、涙を呑んで5本に絞ったのですが、今回は24本に大幅増量しました。

ピックアップ基準はわたしの好みに加え、続きの読みたくなりたさに比重を置いています。それでは参りましょう。


電脳医、ドクター秋葉原の電子カルテ

発想が素敵な一作。スマホが体の一部なら、当然コンピューターウィルスにも感染するのだ……人体に感染したウィルスが、どのような異常を引き起こすのか。冒頭ではWannaCryだが、他のパターンも見てみたい。治療風景も興味深い。


化蟹ザムザと忘年の城

化蟹ザムザの記憶語り。ザムザはまだ生きている。ザムザの城も残されている。ザムザがロックスのために行った『あんなこと』とはなんだろう? 野心に燃えつつも情けない、愛嬌あるロックスは騎士になれたのだろうか? どこか柔らかい雰囲気を漂わせつつも、続きを読んでみたくなる作品だ。


裏庭の魔王

魔王と花畑。このミスマッチがまず面白く、描かれた情景の綺麗さが、さらに面白くさせている。古い伝承などと書かれている所からすると、ファンタジー的な世界観なんだろうか? 主人公の受けた『依頼』とは何なのか? 魔王は人間に対してどう思っているのだろう? 多くの謎が続きを期待させる。


ドランクン:ハードデイ

酔った勢いで済むか。しかし済ませなければならないのが、人生というものである。たぶん。どう考えても絶体絶命なシチュエーションだが、彼はどう切り抜けていくのだろうか? 同僚は助けてくれるのだろうか? ハードな一日の結末を見てみたい。


ブレイブ×バイオ×テンタクル

マジで? どうやら上の方はマジのようである。提案と却下が繰り返され、あらゆる条件が不利に傾く中、世界の命運は、ヤケを起こした思いつきとあの生物に託された。突拍子もない発想の行き着く先は? ファンタジーと科学の融合した世界観も面白そうだ。


アカシック・カフェ ―全知と珈琲の番人―

アカっちゃうという軽率なフレーズが、この世界におけるアカシックレコードの地位をこれ以上なく表している。常連客ということは、彼女らはこの店の裏の顔を知っているのだろうか。そしてエージェントはどのようにして接続を為すのか。【続く】の書き方も面白い。


人生の打ち切りまであと10000文字

10000文字というのは思ったより少ない。400文字と格闘してきた真の男なら、当然知っていることだろう。先を考えずにばら撒いた伏線は、果たしてどこまで回収されるのか? 某ソードマスターのように、強引に回収し切ってしまうのか?

2つ程度に絞れば、それなりに深い物語が生まれるだろう。だが4つも5つも混ぜ込むと、それらを描写するだけで文字数が食い潰されてしまう……その辺りのジレンマも含め、続きを読んでみたい作品だ。


巨神戦記

巨大ロボットが好きだ。そしてこの展開は、とてもワクワクさせてくれるやつだ。周囲が避難する中、一人町に残り、巨人と怪物の戦いを眺めていた少年。彼はなぜ町に残っていたのだろう? もしかすると巨人には彼の知り合いが乗っているのだろうか? 伏線が回収されていくうちに、面白さが高まっていきそうな作品だ。


運命査定額

SF的で魅力ある設定と、彼が持ち合わせる運命、そのパンチ力がすごい。売った未来は起こらない。ならば彼の意思が、ケイオスフィアの運命を左右する、ということにもなる。彼の身には何が起こり、そして何を選択するのだろうか? 事態が大きいだけに、色々な組織の思惑が絡み合うのかもしれない。それも楽しみだ。


共鳴機神オルガマキナ

アイドル x ロボット! 400文字という文字数の中に、その一見無茶にも見える掛け算を納得させる合理性が詰まっている。造語の字面がどれもカッコよく、さらに意味も通っており素晴らしい。バトルシーンは是非とも挿入歌付きで読みたい。


ティモシー・ドレイクと15人の証人

あと13人いる。それだけで面白そうだ。殺害状況も謎めいており、さらにはより大きな不穏の影すら漂わせている。ゆっくりと謎が解き明かされていくのを、じっくりと時間を掛けて読み進めたい。わたしの性格的には、おそらく徹夜して読んでしまうのだろうが。


必殺仕事にゃん

固有名詞がどれもこれもカワイイだ。しかし始まるのは人間の沽券を掛けた戦いである。ボンダの口振りからすると、この仕事にゃんは2代目なのだろうか? それとも長い時代を生きる猫なのだろうか。魅力的な設定と、漂う雰囲気のゆるやかさが独特の味を出している。


マーダー・オブ・ミュージック

レモン。分かる。ドーナツ。まあ想像できる。しかし最後に提示されたそれは、殺害状況をまるで想像できない。それゆえに続きが読みたくなる。犯人の人物像が非常に気になる。この不可解犯罪をどうして成し遂げたのか? その理由は……?


人が人であるために。

自分との関係性がなければないほど良い。しかし今回助けた女性は、明らかに関係大アリだ。タイトルからは深い葛藤が連想されるが、彼は人であるためにどのような決断を下すのだろうか。ドキドキしながらページをめくることになりそうだ。


少女宇宙旅行

雰囲気が素晴らしく良く、つまりすごく良い。思わずボキャブラリーが貧困になる程に刺さってしまった。切なくも明るい、少女と従者の宇宙旅行。たどり着く先はどこなのだろう? そして彼女らは何を始めるのだろう? それが楽しみだ。


日記帳

くぇむゐゅ。理解不能な文字列と、これまた理解不能な日記内容。あまり意思を感じない内容の薄い日記と、くぇむゐゅの周りだけはキッチリと法則性があるという事実の対比が非常に不気味だ。ホラーなのかミステリーなのか。それも含めて続きが気になる作品だ。


さよならエニグマまたいつか

最初の『ほうほう、そういうお話か』というワクワク感が、直後の暗号で無情にも打ち砕かれる。この落差が、編集者たちにグッと共感させてくれた。この暗号でまともに勝負できるのは、ナンシー=サンくらいのものだろう。矢郷ブランドの価値を掛け、4人の編集者が戦いに挑む。斬新な切り口が面白い作品だ。


哲学するハート

あのときのときさんの作品は雰囲気が良いものが多く、一作選ぶのが悩ましかった。が、最終的にロボットの愛らしさと、それに呆れつつも律儀に哲学してくれる主人、二人の関係性がとても魅力的だったので、この作品に決めた。人間には試せないような哲学的問題も、ロボットならば実証できる。彼らの不思議な哲学を眺めていたくなる、そんな作品だ。


死ぬなら走れ、最後まで。

とにかくアクションをさせる、そんな設定が魅力的な作品だ。小休止は何度か挟まれると思うが、それでも読んでいる間、ずっとエキサイティングな気分を感じさせてくれそうだ。小説だけでなく、映画でも観てみたいが、ゲームとして遊んでも絶対に面白いと思う。


ストーンスワロー・ザ・モンスターペインター

幽霊や妖怪はダイナマイトで退治する……誰もが知っている常識だ。ところがこの作品の妖怪には、まず鬼神絵師が姿を与えなければならない。そして倒すのは妖怪殺しの仕事……

役割分担がキッチリ為されており、互いが互いの仕事を果たさなければ勝利できない。設定を活かした戦いが楽しみになる作品だ。

なお、特に関係ないが、件の南方妖怪について調べた私はMRS(ミズキ・リアリティ・ショック)に陥ってしまった。おそろしい。


世界No.1シェフ決定戦

ぶっ飛んだ設定やパワーワードで殴りかかってくる作品は多いが、この作品はその中でも極めて異彩を放っている。一行一行がパンチなのだ。そして一行づつ読み返し、名前の意味がわかるとさらに面白くなってくる。この攻勢の前には、わたしのニューロンなど豆腐も同然で、完全にノックアウトされてしまった。恐ろしい発想力だ。


『夢山田財閥一族全滅殺人事件』←【これ以上読むな】

現実世界の『あるある』を拡張したような出だしから、一気に不気味な世界へと引き込んでくる。作品と現実の符号に気付いたとき、彼は何をしでかすのだろうか? 一族全滅殺人というスケールの大きさが、これからの物語の想像を膨らませてくれる。


綺麗な死を探して

綺麗に死にたいから、花火を取り寄せた。とんでもない行動力だが、たぶん違うと内心考えていたり、犯罪者になるかもと不安になったりと、矛盾した行動をとる。それが、かえって『私』に人間らしさを与えていると思う。一つ二つネジは飛んでいるが。

迷いこんだ奇妙な世界で、『私』は綺麗な死を見つけだすのだろうか。それともその考えが変わる出来事が待っているのだろうか。


ボディ・ランナー

400文字を完全に活用しきっている。設定、描写、展開、全てに隙がないその体はまさに、MEXICOの過酷な大地で鍛え上げられた、真の男の肉体そのもの。この推薦(感想?)文すら野暮な気にしてくれる、パワーあふれる一作。


未来へ

未知なるパルプは見つかりましたか? 見つかったなら嬉しく思います。ですが、このピックアップはあくまでピックアップに過ぎません。

#逆噴射プラクティス タグの海には、まだ見ぬパルプがシーライフし続けていますし、400文字の壁を打ち破り、パワフルな続編を公開している作品もあるのです!

もちろん、誰かのピックアップを待つのも手ではあります。ですが誰もがピックアップするとは限りませんし、その誰かと好みがピッタリ合う可能性も考慮すると、まだ見ぬ最高のパルプを見逃してしまうことも十分あり得るのです。

未知なるタグの海にダイブし、あなたの一番のお気に入りを探してみましょう! そして是非、あなたの好きな作品をピックアップしてみましょう! 好きを発信するのに遠慮はいりません! 未来へ……!

(おしまい)

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