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クソアホミソジニー友達、変わるまで。



 あたいの飲み仲間に、クソアホでちんちんでモノを考えるアホ男がいる。

 彼はノンケ(異性愛者)で、強烈な女好きだった。


 そいつとはあたいの行きつけの隠れ家バーで3年ほど前に出会った。

 彼はその隠れ家バーのマスターと元々同じ街でバーテンダーをしていたらしく、店の常連達とも馴染みが深いようで、いつも誰かと楽しそうに会話をしていた。というか内輪による紹介制の店なので客同士の距離も近く、ほぼ全員が互いに面識を持っており、あたいも通ううちにいろんなお客と交友関係を持つようになった。そんな店で彼とは出会った。


 そして、その店では「クズ」と呼べば彼のことを意味するくらい、彼はクズとして周知されている。

 周りの男達からは「あいつはマジでアホ。けど憎めない」「どれだけ痛い目にあっても懲りない愛すべきクソアホ」と評価され。


 周りの女達からは「彼氏にはしたくない」「見てる分にはいいけど、ガチでだらしないので身内には欲しくない」「絶対に二人きりにはなりたくない」「顔がいいのに中身がクソ」「みんなで一緒に飲んでる時は面白い。つまり檻越しだと楽しめるタイプの生き物」「友達としてはいい奴。男としてはクソオブクソ」と親しまれつつも蔑まれている。

 
 たしかに彼は見た目がいいし、態度にも嫌味が無い。趣味はオリジナルカクテル作りや創作料理とやけにオシャレ。ベースもギターも弾けるのでさまざまなイベントの音楽隊として活動もしていて交友関係も広い。エロ系フェティッシュイベントや、ジャズ系音楽イベントにも出演していた。先輩や年上からも好かれ、年下にも慕われている。喋っていても根っからのパリピだとわかる。快活でいつも機嫌がいい。

 出会って最初の頃、あたいが彼に持っていた印象は「地元の人気の先輩」だった。


 だけど、知れば知るほど、というか長く見ていれば嫌でも分かるほど、彼の交際関係のだらしなさが目立った。


 たとえばバーの中でお連れの女性と痴話喧嘩したり、堂々と不倫相手を連れてきたり、たまたま店で居合わせた元カノ(店で出会って付き合った元飲み仲間)に向かって「面倒抜きにしてセックスだけしよ」「毎週金曜にセックスだけしようよ」とか迫ったり、「今日の服おっぱい揉みやすくね?」とか言って同意なく胸を触ったりしていた。書いてても思うけどキモいな。



 同性から見ても、社会性と性的なリテラシー、そして異性に対するデリカシーが欠けていると強く思う。

 なるほど、被害に遭うことのない男性から見る分には「ぶっ飛んでる」だけれど、異性である女性として関わられた場合は「クズでクソ」なんだろうな。

 男女の間で彼に対する評価に温度差があるのも納得ができる。男にとって彼はヤンチャな遊び人、女にとっては常に飢えている危険な肉食獣だ。



 彼の性的に奔放かつ倒錯したエピソードには枚挙にいとまが無く、今回ここで紹介できるのもほんの一部でしかない。そしてそれ以上に本人が話していないことも、話せないことも、周りの人が知らない話もきっとあるだろうけれど、そこには踏み込まないし、邪推もしない。

 また、公開にあたって本人許可済みーーと言っても、本人は「え〜俺も有名になっちゃう〜。若くてメンヘラじゃない子は俺に紹介してな〜?」とか言ってるくらい軽率で軽薄なので、もしかするとこれらをまだ武勇伝だと思っている節もある。

 なのであたいは、書くにあたって非難はしないけれど、彼を「ヤンチャな男なんだから😅やれやれ」みたいな温度感で擁護して書くことはしない。ちゃんと友人として軽蔑しながら批判して書きたい。


【彼と彼の旧知の人から聞いたエピソードごく一部を抜粋】

・既婚者の女性と不倫し、相手方の配偶者から慰謝料請求を受ける
・慰謝料を払ってる最中なのにまたその相手と不倫する
・乱交パーティーを開催してビジネスホテルから警察を呼ばれる
・お金も欲しいしセックスもしたいのでホストになり、客の女性に手を出しまくってクビになる。
・職場のバーのトイレでバイト仲間の女性とセックスしてクビになる
・三股がバレて二人から命を狙われる
・当時結婚直前だった相手がいたのに浮気して婚約破棄の示談金を支払う
・納税の仕方がわからないのでセフレ①に全部払わせる
・所持している服や貴重なお酒の倉庫がわりにしているセフレ②の家がある
・セフレ③の家のベランダでセックスをしてご近所さんに怒られる
・レストラン勤務時代にバイトの高校生(未成年の女性)に手を出そうとして、その子の親御さんに職場まで怒鳴り込まれる

 あたいとほぼ歳も変わらないのに経歴の濃さが終わってる。懲りもせず、学習もせずにずっと放埒としていて、あたいは「人間失格やな(ダブルミーニング)」と思った。

 ちなみに、隠れ家バーのマスターは彼と10年以上の付き合いらしく、厳格であんまり冗談を言わんマスターにすら「こいつが女に殺されても、みんな納得する」とまで言わしめている。




 ただし、彼もさすがに悪名通りとは言わず、ある程度は釈明している。


 彼いわく、


「俺はどれだけ遊んでも、女に中絶はさせない。妊娠させたら絶対に責任を持つ。じゃないと父親に殺される」


 らしい。

 なので今のところ中絶を相手に求めたりしたことや、責任を持てない立場で避妊を怠ってセックスをしたことがないらしく、そういうところは小心者というか、計算高いというか。

 というか、そんな父親を持ってしてもどうしてこうなってしまったんだよと感じるというか。

 そしてその動機も女性の心身への責任じゃなく「父親に怒られるから」でしかないのか、というか。




 話は変わるが、一度、あたいが友人2人とその隠れ家バーで飲んでいたら、たまたま彼が訪れて、どうやらハシゴしてきたようだったけれど、あまり酔った感じしなかったから隣に座るのを許してしまったことがある。

 そこでもまぁなんというか、彼の浅薄さは底抜けだった。


 彼は元々政治に興味がない。メロス以上に世間に関心がなく牧歌的だった。

 それはまぁ個人の自由だからいい。問題なのは、つまり興味がないということは必然的に保守的でもあり、とりわけ性的なことで物事を深く考えたり批判されることに不慣れなようで、それゆえかなりのアンチフェミ(フェミニズム)な奴だったことで、折しもその場に居合わせたあたいの友人が《フェミニストのレズビアン》と《FtMのトランス男性》だったことだ。


 会話の流れで、彼は「もちぎのお友達ってことは、LGBTの街の方ですか?」とあたいの友人たちに質問した。

 彼の初対面での雰囲気の良さから、あたいの友人たちは気を許して、「こっちはビアンで、俺はトランスジェンダーのバイで、で、もちぎがゲイで3人揃ってLGBTフルコンプでーすw」と軽く自己紹介した。


 すると彼は、



LGBTは俺もけっこー認めてますよ❗️もともとLGBTとかややこしい奴ら嫌いだったんだけど、でも最近はTwitter見てるとフェミと潰し合ってくれるからいいかな〜って思えてきて。あっ、LGBTが嫌いと言っても活動家みたいなのが嫌いなだけで、オカマは普通に笑えるし、可愛いレズは好き〜。レズのセックスは一回生で見てみたい❗️オナベもボーイッシュくらいのレベルならセックスできるし好き❗️え、ってか穴はあるんですよね? オナベのお姉さんは」


 ーーみんな、「あ〜……こいつやべぇな」って顔して半笑いで絶句してた。


 マスターも頭抱えて「お前は一旦静かにした方がいい」つって大きなため息を吐いた。

 なんというか、彼は空気を読めない人間じゃないし、むしろ他人の心の機微に敏感で、その上でただただ性的なデリカシーだけが無いだけのクズだったのだけれど、専門外というか意識の外にある分野に関して、こうも無頓着で配慮が無い、というかすべき考慮や深謀遠慮の姿勢が無いのだなと改めて思った。


 「レズは抜ける」のような一方的なただの性欲を褒め言葉だと思っている認知の誤り、トランスジェンダー男性を女性として扱うミスジェンダリングに、重ね重ねのセクハラ。そして《意見を持つ存在》ーーフェミニストと政治的なLGBTが嫌いだという意見が、《普通の当事者》には共感を生むと思っている部分。

 すべてが「それ、なんの躊躇いもなくよく当事者に投げかけられたな」と思えるおバカさだった。

 まぁそれも、彼の環境のせいなのだろう。
 彼をジェンダー関連のことで諌める人がおらず、周りの人も彼を黙認するか、賛同する人間しかいなかったか、あるいはLGBTや女性という弱い立場からの意見に耳を傾けて自省する機会がなかったのだろうな、と感じるワンシーンだった。


 その時、あたいの友人は、

「お兄さんえげつないっすね〜(ドン引き)」


 と嘲笑していたけど、彼はそんなことつゆ知らずに、


「お姉さん、笑った顔かわいい❤️」


 つってご機嫌だった。



 そんな彼から、まさかの発言があってあたいは耳を疑った。

「俺、ミソジニーやばすぎって怒られた」と彼が反省する事態が、この夏の初めに起きたのだ


 あたいは衝撃だった。彼の口から「ミソジニー(女性蔑視)」って言葉が出ることも、そして彼がシュンとしていてなんだか反省してるっぽいのも。


 あたい自身も他人のミソジニーに非難できるほど高邁な人間じゃなく、自分自身もミソジニーに絡め取られた人間だと思っているので、今まで彼にそういった真剣な話をして向き合ってきたことがなかったけれど、これは他人の内省を聞けるいい機会なんじゃないかと思って、話を伺ってみることにした。

 なぜ、あんな奔放な彼が、それについて考えるに至ったのか。

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ここはあなたの宿であり、別荘であり、療養地。 あたいが毎月4本以上の文章を温泉のようにドバドバと湧かせて、かけながす。 内容はさまざまな思…

今ならあたいの投げキッス付きよ👄