見出し画像

ビッグモーター事件

リタイア生活を株式投資で楽しむモト3の妄想エッセイ

ビッグモーターという会社は数年前から私は知っている。たまにドライブすると、「へー、ここにもまたビッグモーター!」と助手席の妻が言うほど、私が住む地方の中古車屋さんは、大きくて、綺麗なビッグモーター一色変わりつつある。

そんな折、ニュースやテレビでビッグの事件が毎日賑わい出した。確かに、客の車を傷付けて鈑金修理の利益を増やそうとするのは悪い。議論の余地はない。

社長が「知らなかった」はずがない。パワハラも悪い。理由の説明もなく降格人事が頻発している。幹部にものが言えない企業風土だ。社長を辞任しても大株主として君臨する。、、、そんな批判はもっともだ。

だが、もっと違う目線も必要だと思う。一つ目は、従業員も加害者だということ。報道では、「悪の権化は副社長で、理不尽なノルマを鈑金工場に課し、生殺与奪権で工場長を脅し、不正に走らせている」というストリーだが、従業員にはもっと選択肢があったはずだ。

極論すれば、上司から人を殺せと言われたら、人を殺すのか? 理不尽な指示や会社の経営であれば、従業員には辞めて転職する選択肢がある。ビッグは成果主義で給料が抜群に良いらしい。仕事の辛さと給料のバランスの中で6000人の従業員がいまだに存在している。

二つ目は、この事件の本質は何かということ。ビッグの経営の悪さだけではない。私の直感では、損害保険ビジネスモデルの脆弱性・欠陥が本質的な問題だと思う。つまり、ビッグから高額請求された損保会社は被害者ではなく、もう一つの加害者であるという目線だ。

鈑金修理は、損保からの紹介案件が多いらしい。つまり、車の破損事故が発生すると車の所有者は、保険会社に連絡をとり、保険会社から修理工場を紹介されるということらしい。

ビッグは、損傷状況を写真に撮り、初期見積書を作成し、損保会社へ連絡する。損保会社が承認すれば、修理が始まる。修理が完了すると、初期と異なった点を変更し、協定見積書を作成、損保会社との間で最終的な修理代を合意する。

鈑金修理工場は修理代をできるだけアップさせようとする。損保側は適正価格に抑えたいので2度の見積りチェックをしている。一見正しい仕組みに見えるが、実際はビッグの力が強いらしい。

ビッグは中古車を販売しているが、同時に自賠責保険も扱っている。車の購入者は、通常自賠責保険の会社を選ばないので、結局ビッグに選択権がある。一部報道では、ビッグの扱う保険は200億円とも言っていた。

つまり、ビッグのような車の販売大手では、鈑金修理代の公平、中立性は担保できないのである。

また、私の理解では、損保会社の生命線は優れた統計解析の技術とネットワークを持っていることだ。つまり、修理代が高いとか、安いとかは統計的に分析され、他の修理業者と比較して、ビッグの修理代のレベルや傾向は当然分かっているはずだ。

6年ほど前に新車を購入した時、私は人生で初めて車両保険に加入した。対人・対物保険に比べると、車両保険は非常に保険料が高い。

交通事故件数は、2004年の95万件をピークに、2020年では31万件に大きく減少している。自賠責保険料は少しずつ下がっているようだが、任意保険や車両保険は全く下がる気配がない。私が毎年受け取る任意保険の更新案内では、毎年保険料がアップしている。

交通事故件数は減少しているのに、鈑金修理工場は売上ノルマを確保しようとする。私の車の任意保険料は上昇するばかり。損保ビジネスに闇があると思うのは私一人だろうか。
<了>


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?