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『街の上で』書店座談会 その①/3

5月末日。『街の上で』アンコール上映を記念して、【#元町の上で】企画に協力していただいた書店のみなさんと『街の上で』を語り合うリモート座談会を行いました。参加していただいたのは1003の奥村千織さん、本の栞の田邉栞さん、荒野の森田敦さん、storage booksの山下和希さん。その模様を3回に分けてお送りします!


ーーーこんばんは。今日はお時間取っていただきありがとうございます!『街の上で』おかげさまで好評で、アンコール上映が始まりました。まずはみなさんの映画の感想を聞かせていただけますか?

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1003 奥村千織さん)

奥村|登場人物の世代が自分より少し下で、こんなふうに街を楽しんでいた時代が私にもあった!ってまず思って。独身時代の、夜な夜な飲み歩くような、街で遊ぶ楽しさを思い出しました。特に今はコロナで夜に街で遊ぶってことができないから、より映画の中の人たちがうらやましいなって。


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本の栞 田邉栞さん)

田邉|たしかに独身と既婚者だったり、年齢だったりの違いで観方も感想も変わってくるのかもですね。私は映画の中の人たちと世代が近いので、わりと同じ目線というか自分のまわりにもこういう人いるな…と思って観ていました。


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storage books 山下和希さん)

山下|森田さんのインタビューで「青くんとは友だちになれない」って書いてたけど僕も同じで、「2人で会おうとはならないな、こいつ」って思ってました。というのも、自分の鏡というか、こんなことで迷ったり悩んだりしてんじゃねーかなと思ったことがそのままブーメランで自分に返ってくる(笑)。映画を観て自分の暮らしを振り返らせてくれるような体験が初めてだったので面白かったです。


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荒野 森田敦さん)

森田|セリフが面白いなとまず思いました。作り物っぽくないセリフが多くて、そのぶん「自分もケンカのときこんな言い方してたかも」とか思って時々いたたまれなくなる(笑)。若い役者さんたちがみんな魅力的で、人物の実在感があるのがいいですね。撮影時期のちょっと前に下北沢に行ったんですけど、駅を降りたら工事中の看板が目立つような時期で、映画を観たあとに下北沢を訪ねたらもう見れない風景もあるんだなぁとちょっと哀愁も感じたりしました。


ーーー青くんはゆとりのある容れ物というか、観る人それぞれの思いや立場を反映しやすい余地のあるキャラクターですよね。特に男性たちは自分に引き寄せて観てくださったようで。


田邉|私は「古本屋の田辺さん」が出てくるのでついつい反応しちゃいました(笑)。言ってることとかがちょっと自分に近いなと思う部分もあって。でもどれかのキャラクターに自分を重ねるというより、友だちの話を聞いている感じでした。


奥村|そうそう、私も横でやってる人たちを見てる感じでしたね。あと、古着屋さんの青くんとか、ビビビ(古書店)の田辺さんとかが店番中にめっちゃ本読んでて、そんなん絶対あり得へん、そんな暇ないわって思って観てました(笑)。店主やったら絶対そんなことできひんからこの子らはバイトなんやろうなって。


森田|あのゆとりはあり得ないですね。


奥村|そういうところもディテールとして描かれているとしたら、すごいリアリティあるなって思ってました。


田邉|田辺さんが店に積んでる本をさわったりパッキングしてるシーンは、自分が古本屋でバイトしてたときの感じめっちゃあるなと思った。手持ち無沙汰でさわっとくみたいな。


ーーー素人には、本屋さん、特に古本屋さんの店主はカウンターで本を読んでるようなイメージがあるんですが…


奥村|読みたいなっていつも思ってるんですけどね…。


ーーーじゃあ、むしろ、みなさん店にいるとき何されてるんですか?


山下|発注したり、届いた商品の品出しをしたり...。うちは同ビルにギャラリーを併設しているのと、最近では書店内の棚もアーティストさんに貸出を行なっているので、その企画の打ち合わせや準備をしていることが多いかも。


森田|入荷した本をきれいにしたり、値付けしたり、在庫をパソコンに入力したり…。あと、突然思い立って棚を入れ替えたりしてますね。


田邉|うちは新刊も古本もあるので、山下さんと森田さんの言ったことを足して2で割った感じ。買取を持ってこられた方がいればその対応をしたり、きれいにして値付けして在庫表作って…。でも私はサボリ屋なんで、ダラダラタイムが長くておやつ食べたりしてます。


山下|おやつは食べますね!


ーーーダラダラタイムには何を?


田邉|そんなときに本は読んだりしてますね。あとは連絡返したりとか…


奥村|そんなのダラダラタイムじゃないじゃないですか!


田邉|や、めっちゃダラダラしてます。マンガとか読んでます(笑)。


奥村|マンガは読むよね(笑)。


田邉|みなさんはダラダラタイムないんですか?


全員|めっちゃあります(即答)!!


森田|店でやる作業をぎゅーっと圧縮したら1時間半くらいになるので(笑)。パソコンさわってるとついついネット記事とか見たり…そういうのばっかりですね。


田邉|1003さんに行くといつも忙しそうだな〜って思ってて。うちは古本のみで始めて、途中から新刊を扱うようになったんですが、新刊入れ始めたときはこんなにやることいっぱいあるんだ!って驚きました。


奥村|新刊ってすごく手かかりますよね…!


田邉|出版社も多いし調べることも作業も多くて、これは時間かかるわって思いました。古本は売り物にするまでにひと手間かかるとはいえ、最低限査定して値段をつけてしまえば売れるんですよ。


奥村|新刊は、タイトルの選定から始まって、いくつかある発注方法のうちどれにするかを考えて、連絡取って、注文して、届いたら開梱して、うちもエクセルに全部入れてるので入力して、最近は値札のスリップがない出版社が多いからオリジナルのスリップを作って、はさんで、やっと並べる。最初の発注から棚に並ぶまでやることが細かくあるんです。それでまた売り切れそうになったら追加を発注して最初から繰り返す。


田邉|連絡を取り合わないといけないのも地味にハードルが高いというか、やらなきゃいけないリストに置いときがちになっちゃう。古本だけだと「待ち」の時間が長いんですが、新刊の場合は自分で動かなきゃいけないし、情報も収集しなきゃいけない。あとは扱いにも気を使うのでよけいに時間がかかってる。


奥村|それが当然と思って始めてないからね。古本からスタートしたから。でも山下さんはそれが当然の毎日なんですよね…。


山下|そうですね。うちは逆に、今後古書をバリエーションとして入れていきたいと思っているんですけどね。


森田|うちものちのち新刊を扱いたいと思っているけど、なかなか着手できてない。以前の仕事では新刊を扱っていたけど、取次があったので。取次はネット通販みたいなものですが、直取引だとそうはいかないんだろうな。交渉ごとなどもあるだろうし。

その②につづく・・・】


映画から脱線し、「本屋バナシ」で思いがけない盛り上がりを見せた座談会その①でした。知らない業界の話を聞くのは楽しいですね〜。映画の話に戻れるんでしょうか?その②をお楽しみに!


映画『街の上で』
元町映画館にて6/11(金)までアンコール上映中!

進行・文責:林 未来(元町映画館支配人)

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