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『街の上で』書店座談会 その③/3

『街の上で』アンコール上映を記念して、【#元町の上で】企画に協力していただいた書店のみなさんと『街の上で』を語り合うリモート座談会を行いました。参加していただいたのは1003の奥村千織さん、本の栞の田邉栞さん、荒野の森田敦さん、storage booksの山下和希さん。いろんな話題で盛り上がった座談会も今回が最終回です。


ーーー4人の女の子たちについては、いかがでしたか?


森田|僕はイハが印象に残りました。すごい距離感がおかしいというか(一同爆笑)。初めて会った男の人を、いきなり自分の家に連れてくかなって。でも4人ともキャラクターが違っててみんな魅力的でした。これって「男が振り回される映画」ですよね?いろんな人が振り回されてますけど、それが女の子たちの魅力ありきなのかなって。


田邉|みんな強いですよね、女の子たちは。したたかな感じが良かったですね。


山下|映画監督の高橋さんは個人的にタイプです(笑)。かわいいっていうだけじゃなく、いちばんしたたかというか頑張ってる感じがするけど内面は女の子らしいんだろうなっていうところが良くて。イハの距離感わからんところも面白いけど、田舎から東京に上京したてで、未熟でどんな色にも染まれるという存在感が4人の中では特別に感じて、これからのストーリーを楽しみにさせてくれるのはイハでしたね。


ーーー私は町子にしたたかっていう印象はあまり持ってなくて、どっちかというと虚勢を張ってる感じがします。

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storage books 山下和希さん)


山下|あ、でも、そういう感じです。その仮面を剥がしてみたくなるっていうか、好奇心をそそられているのかもしれないです。


森田|僕はイハが好きです(笑)。飲み会のシーンは青にとって地獄じゃないですか。あの時助けてくれるイハちゃんはめっちゃいい子やなって。


田邉|まわりの友だちと話してても、男の人はみんなイハちゃんが好きですね。私は映画監督の町子がちょっと苦手…。実際に近くにいたら我が強そうで苦手だなって。パンフを読んでたら衣装を解説したページがあって、町子は動きやすい格好でありながら革のブレスをつけてたり半袖もフレンチスリーブだったりって細部のこだわりがあって、そんな性格を衣装で表現できてるのもすごなって思いました。


奥村|私は映画の終盤で、雪が「好き」って言うのがめちゃくちゃかわいくてたまらん!ってなりました。私も言われたい!って。


森田|雪ちゃんは、その前の朝帰りで全員集合したシーンで、イハの彼氏に「誰だよお前」って言うところがすごく好きです。

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荒野 森田敦さん)


ーーー私もあのシーンいちばん笑いました。余裕を失った時に見せる間抜けさがかわいいですよね。


田邉|最初、青くん目線で見てるとなんだこいつってなるのに、どんどんかわいくなっていきました。怒ってるところとかめっちゃかわいい。面倒くさいタイプだとは思うんですけど。


ーーー面倒くさいといえば田辺さんもけっこう面倒くさいタイプだと思うんですが…。


田邉|私はけっこう好きなんです。最後に町子に文句言うところとかすごく好き。


奥村|田辺さんって絶対に青のこと好きじゃないですか。演技の練習に付き合ってもらうシーン、あそこで恋に落ちたと思うんですけど。


山下|好意は持ってたんだろうなって思ってたんですけど、あの時間をきっかけにというのは気づかなかったです!


ーーーほかにもいろんなキャラクターが登場しますが、気になる人はいますか?


奥村|バーのマスターがすごくきらい!


一同|(笑)


ーーーどんなところがきらいなんですか?


奥村|あのねえ、間(ま)。返事するまでにすごく間をもたせたりとか、あと、ずっとにやけてるじゃないですか。なんの話をしてても。あの感じとか。

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1003 奥村千織さん)


森田|すべての事情をわかってて、この人はこうなるとか全部わかってるみたいな感じを出してて、そこが嫌ですね。


田邉|なんかやだなはありましたね。


奥村|この人のいるバーには行きたくない。


田邉|それはわかる(笑)。


奥村|全員集合のシーンでも、すぐに否定すればいいのに、なんかちょっといちいち間が空くんですよ。あの感じが誰を大事にしてるかわからなくて。


山下|変にもったいぶってて、もったいぶっても大したもん出てこない感じ。なら早よ言えや!って。


田邉|私は別に嫌いじゃないですけどみんなの言ってることはわかります。やな感じちょいちょい出てましたよね。


ーーーマスターがみんなにこんなに嫌われてるとは思ってもいませんでした(笑)。ほかに気になるキャラクターはいましたか?


奥村|別れ話をされたとき、青くんも成田凌も、別れの気配をふたりともまったく感じ取れてなくて、なんでふたりとも反応一緒なんやろうって思った。


ーーー女性はふられるときその予感をずっと持っているのに、男性はいつも考えてもみなかったって反応をする。男性は言われるまで一切気づかない問題です。


田邉|そういうところが嫌なんだよって気になりません?


奥村|なんで気づかへんの?


田邉|何びっくりしてんねんって。

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本の栞 田邉栞さん)


山下|それを言われると、さっきの男性の夢の本気度に女性が気づいてくれない問題も…。いや、でも、僕は過去に振られたときは、「そうだよなぁ」って思いました。男子がみんなそうじゃないってことだけ言っておこうと(笑)。


田邉|青くんタイプがそういうふられ方するんですよ。積もり積もったものに気づいてなくて。


森田|雪ちゃんは成田凌とも付き合ってたから、そこはずっと意識して隠してたんじゃないのかな。って青くんのフォローですけど。ふられる場面では、いつも雪ちゃんは椅子とかベッドとかに座ってるけど相手の男は地べたにうずくまってるっていう構図も面白かった。


田邉|女性が強い感じ、今泉監督そういうところがあるのかな。


奥村|女性はみんな自分の魅力をすごくわかってて、男性への近づき方とか、自分の魅力を最大限に発揮してやっている感じがしました。


山下|青くんもたまったもんじゃないですね。そりゃ振り回されるわ…。


奥村|イハちゃんも、そんな朴訥な感じで部屋に誘ったんじゃないと思うんですよね。誘ったときは下心があったと思います。でも会話してる間にやる気がなくなったというか、もうそれはいいわって恋愛モードじゃなくなったっていうのじゃないかな。


田邉|逆に、もったいないって思ったんじゃないかな。男女として過ごしてしまうより、普通に仲良くした方がこの人は面白そうだなって。青くんのキャラクターって、テキトーなわりには雪ちゃんひと筋で、そこがブレると途端に魅力がなくなっちゃう。


森田|僕はこの映画2回観たんですけど、青くんが見に行ったライブで歌われてた歌詞(GEZAN「END ROLL」)がストーリーと呼応してたりとかに気づいて。青くんの旅は続いていくんでしょうね。


田邉|エンディングの曲(ラッキーオールドサン「街の人」)もすごく良くて、あれを聴きながら帰ってると「元町はいい街だなあ」って気分になりました。


ーーー私は下北沢のことは知らないけど、『街の上で』の映画は元町に合ってる気がします。


田邉|個人のお店が多かったり、昔からのお店が残ってたりとか、そういうところが映画の温度感と似てる気がしました。


奥村|ここでお店をやってることで、元町がホームタウンって言えることが嬉しい。好きなお店がいっぱいあるし、知り合いがどんどん増えていって、街なんだけど“ご近所さん感”がある。住んでいる場所ではあんまりご近所付き合いがないので、店をやってる元町の方が、お客さんであれ、他のお店の人たちであれ、知り合いと本を貸し借りしたりそういう付き合いができる距離感がいいなって。


森田|うちの店だと、自分がいつも座ってるカウンターが窓際で、いろんな人が通ってるのが見える。競馬で負けたカップルがめっちゃ喧嘩してたり、店の前の駐車場の陰でカップルがキスしだしたり、そんな「街の営み」がすぐ感じられるところが良いですね。


山下|元町は、大きくはないけれど、小さくても個性を持った店がたくさん集まってて、それらをまわる人がいる。うちの店でも、うちだけに来て帰る人って少なくて、ほかにもいろいろまわってる。お店にもストーリーがあるし、そこを周遊する人にもストーリーがある。そんな魅力がある街ですよね。


田邉|店と店、人と人の距離が近い。住んでる人と外から遊びに来る人のバランスがちょうどいいんです。下北沢も外からいろんな人が来ている街だと思うんですけど、元町も外からの人も受け入れられるような雰囲気がある。いい街ですよ。


3回にわたり座談会をお届けしてきましたが、いかがでしたでしょうか。映画を肴に、いろんなところに話が及び、とても盛り上がった夜でした。楽しかった…!着地のしかたを一切考えていなかったのですが(汗)、最後は「元町」の魅力に話が及び、きれいに締めることができました。映画だけでなく、それぞれお店の方の魅力も伝わっていると嬉しいです。元町にお越しの際には、ぜひお店に立ち寄ってくださいね。

★座談会その①/3はこちら
★座談会その②/3はこちら


映画『街の上で』
元町映画館にて6/11(金)までアンコール上映中!

進行・文責:林 未来(元町映画館支配人)

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