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【書評】白の聖典 中野たむ著

今回、どういうスタンスで書評を書こうか、物凄く悩みました。私が読んで気に入った本を「お薦めです!」と紹介するのが通常のパターン。

今回、悩んだのは、中野たむ選手、あるいはたむ選手が所属する女子プロレス団体スターダムについて知らない、馴染みがない人が読んで、どの程度面白いと感じるか自信がなかったからです。

裏を返せば、私自身がスターダムの魅力にとりつかれ、もはや部外者の目で見られないということ。

中野たむ選手は、私が好きなレスラーの一人。一番好きなのは、上谷沙弥選手なのですが、今回は、その話はおいて置きます。

ここで、簡単に中野たむ選手について説明します。スターダムファンの方にとっては、「そんなこと知ってるよ」という話なので読み飛ばしてください。

「宇宙一可愛いレスラー」。これが、たむ選手のキャッチフレーズ。下記はTwitterにご本人が掲載された写真ですが、これだけ見たら「プロレスラー」のイメージとは結び付かないですよね?

出典:中野たむ Twitter

私の世代で女子プロレスラーといって想起するのは、ダンプ松本、ブル中野、北斗晶等々。とにかく、強そう!!な格闘家。

恐らく、女子プロレスに馴染みのない方は、こう思うと思います。「可愛いだけで、プロレスごっこしてるんでしょ?それで、お客さん喜ぶんでしょ?」と。

とんでもございません。このたむ選手、とっても強いのです。スターダムにはワールド・オブ・スターダム(通称:赤のベルト)とワンダー・オブ・スターダム(通称:白のベルト)という2つの個人ベルトがあり(他にもハイスピード、フューチャー等あるのですが割愛します)、たむ選手は長きに渡って白のベルトの王者として君臨しました(現在は上谷沙弥選手が王者)。

タイトルの「白の聖典」は、そこから来ています。

出典:スターダム公式サイト

2021年3月3日にジュリア選手を破って、ベルト戴冠とあります。この試合は、2021年ベストバウトにも選ばれた名勝負。そして何を隠そう、私がスターダム沼に嵌るきっかけとなった試合でもあります。

下記、YouTubeでご覧頂けますが、顔がパンパンに腫れるまで張り手の応酬をしたり、場外で机の上に頭から落としたりと死力を尽くした死闘が繰り広げられます。「プロレスごっこ」と思ったそこのあなた、考えを改めてください(笑)。

この死闘を制したのが、中野たむ選手。そして、この試合は敗者が丸刈りになる「髪切りマッチ」でもあったのです。試合後にたむ選手がジュリア選手にバリカンを入れ丸刈りに。ここで、また、新たなドラマが生まれます。


「白の聖典」では、たむ選手の幼少時、地下アイドル時代の話を経て、プロレスに参戦することになった経緯。その後の苦労、葛藤が赤裸々に語られています。

地下アイドル時代のパートでは、アイドル志望の女の子達を食い物にする悪徳プロデューサーの話も暴露され、実にリアル。

たむ選手は、クラシックバレーの基礎があり、その後、ダンスや中国武術も習ったことで、体幹が強く、とにかく身体が柔らかい。そこから繰り出されるバックスピンキックやスープレックスは、本当に美しい。

と純粋にレスラーとしての実力も折り紙つきなのですが、「たむ選手すごい!!」と私が思うもう1つのウリが徹底したファンサービス

「宇宙一可愛いレスラー」という役割を演じ切るプロ意識の高さ。少し、解説しますと、今のスターダムは美人揃いで、決してたむ選手が圧倒的に可愛いという状況ではありません(これは好みの問題なので、色々な意見があるでしょうが)。

また、年齢的にも(たむ選手は年齢非公開とされていますが)、スターダムの中では最高齢に近い。その中で、「宇宙一可愛いレスラー」を演じ続けるのは、心ないバッシングもあり、かなりしんどいと思うのです。

それでも、たむ選手は徹底して演じ切ります。例えば、「白の聖典」からの以下引用をご覧ください。

ぶり っ子 キャラと 言わ れる こと に、 実は 最初 は 戸惑い を 覚え て い た。 た む は 自分 の こと を〝 ぶり っ子〟 だ と 思っ た こと は 一度 も ない からだ。ぶり っ子 では なく、ただ 可愛く 生まれ て き ちゃっ た だけな ん だ。ごめん ね。

出典:白の聖典 中野たむ著

今回、急遽、たむ選手のことを書こうと思ったきっかけは、下記ツイート。

これだけだとわかりにくいので、実際にこのチェキをゲットした方がアップしたツイートも紹介させて頂きます。

通常、この手のメッセージって、「いつも応援頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします」みたいな内容で、そこに「〇〇さんへ」という一言があるだけでファンは大喜び。

たむ選手のチェキは、独占欲を主張する「メンヘラ彼女」になりきって、メッセージがびっしり。これを、ファンひとりひとりに書いているというのを知って、これぞ究極のファンサービスと感動。これは、是非、みなさまにお伝えしたいと、急遽、「白の聖典」を取り上げた次第です。

「白の聖典」、お薦めします。ただし、条件があります。まずは、スターダムワールド(月額動画見放題のサービス)に加入し、たむ選手の試合を観て、しっかりと予習してからお読みください。そうすれば、本書を楽しめることお約束致します。

【追記(3/26)】

両国国技館での2デイズの初日。米WWEでチャンピオンになったこともあるカイリ選手(カイリ・セイン)のスターダム復帰初戦。たむ選手はタッグで対戦。「白の聖典」の中で戦いたい選手としてカイリ選手を挙げており、いきなり念願が叶った形です。

腹ばいになってガールズトークの様に語り合うシーンが、あまりにキュートだったので追記します。自分が後で、何度でも観れるようにという理由。

【追記2(3/27)】

両国国技館2Daysの2日目。前王者のたむ選手が、上谷選手の持つ白のベルト奪還に挑んだのですが、惜しくも敗れてしまいました。私は、上谷選手推しなので、本来、喜ぶべきところですが、この記事を書いている時は、完全にたむ選手に肩入れしています。

こちらの蹴りの攻防。さながら、空手かテコンドーの試合でも観ているかの迫力。両選手の身体能力の高さが如実に現れています。

極めつけは、この場外へのフランケンシュタイナー。相手を両足で挟み、体の反りと反動を利用して相手をぶん投げる技。体が柔らかく、手足が長い上谷選手が得意とする技。これを場外に向けてやるというのは、お互いの信頼関係がないとできません。それにしても、たむ選手。痛そう…

【追記3(3/28)】

たむ選手の無事が確認されました。


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